- 著者
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古賀 浩平
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究の目的は大脳皮質における高次脳機能を明らかにすることであった。特に以下の点に焦点を絞って研究を行った。A)無麻酔下サル大脳皮質からのin vivoパッチクランプ法の確立、B)生理的感覚刺激によって誘起される応答をシナプスレベルで解析し、皮質における情報処理機構を明らかにする。以下の実験は、生理学会や疼痛学会など国内外の学会の研究指針および倫理規定に従って行った。1)一年目の研究実施計画(麻酔下サル大脳皮質からのin vivoパッチクランプ記録法の確立)を継続して行った。サルの大脳皮質からパッチクランプ記録を行う際、呼吸由来の脳の揺れが想像以上に大きかった。その為、現状では記録の確立が困難であると考え、記録法の習練が必要と考えた。2)従って、上記の実験を続けながら、小動物からの記録法も同時に目指した。その結果、幼若から成熟までのラット及びマウスの大脳皮質第一次体性感覚野から、麻酔下でin vivoパッチクランプ記録法を適用した。長時間の安定した記録を確立し、受容野へ生理刺激(ブラシ、熱、ピンチ刺激)を行いその応答を解析した。さらに、アジュバンドを用いて後肢に炎症が生じたモデルラットを作製し、正常状態での皮質深層細胞の膜特性及び生理刺激によって誘起される性質を比較した。炎症モデルラットでは、熱及びピンチ刺激で大脳皮質第一次体性感覚野の深層細胞にはより大きな膜の脱分極が観察された。これは第一次体性感覚野V層の錐体細胞は皮質視床路から入力を受け、視床を主に運動野、第二次体性感覚野、脊髄へ軸索を伸ばしている細胞であることから、痛みの高次統合機能を活性化する出力系と考えられる。これらの結果は、国際疼痛学会で発表した。3)1)の実験途中でサルが死亡し、以降供給ができなかった為、研究を継続することができなくなった。