著者
小原 絵夢 古高 陽一 三宅 高文 三上 敦大 伊東 あかね
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.40-41, 2016-09-30

症例は 65歳の女性。膀胱癌治療中、抑うつ気分、不眠が出現し、他院精神科にてうつ病と診断され、mirtazapineが開始となった。その後、否定妄想、不死の観念、反対症が出現し、コタール症候群と考えた。当科入院後、炭酸リチウム(以下Li)を追加したところ、前述の症状は消失し、抑うつ気分も軽快した。 コタール症候群の治療は原疾患に準じて行われる。原疾患がうつ病の場合、抗うつ薬、抗精神病薬が使用されるが、これらの大部分は、抗癌剤と同様、肝代謝酵素が関与する。一方でLiは、肝代謝を受けない。このため、薬物相互作用から薬剤の選択肢が限られる担癌患者のうつ病治療において、Liの使用は有効な治療戦略と言える。コタール症候群に対するLi使用の報告はまだ少なく、今後エビデンスの集積が望まれる。