著者
山田 淳 櫻井 高太郎 栗田 紹子 山中 啓義 賀古 勇輝 嶋中 昭二 浅野 裕
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-20, 2003-03

統合失調症は、患者の社会生活にも大きな影響を与えてしまうことの多い疾患であるが、その具体的な状況に関して調査した報告は少ない。今回は、平成14年6月の時点で当科で治療中の統合失調症患者の病状・経過・生活状況などについて調査した。協力が得られたのは474人で、男性242人、女性が232人であった.治療形態としては外来が376人、入院が98人であった.調査結果からは、統合失調症は10歳代半ばから30歳代半ばまでに好発して就学の妨げとなり、その後も再発を繰り返して複数回、長期の入院を必要とし、そして病状が落ち着いたとしても残遺症状を残し、就労、結婚の大きな障壁になっていることが改めて確認された。このような状況を改善する為には、退院や就労を支援する社会的資源の充実など、行政レベルでなければ解決できないと思われる面も多かった。平成14年12月24日に障害者基本計画が閣議決定され、それに沿って障害者施策推進本部が定めた重点施策実施5カ年計画では、精神障害者に対するホームヘルパー、共同住居、授産施設などを充実させていく事がもりこまれている。今回の、当院にて治療中の統合失調症患者の調査結果から導き出された課題に合致する点も多く、これらの計画が実行されることにより、統合失調症患者のハンディキャップが少しでも緩和されることを期待したい。
著者
三上 敦大 大村 いづみ 田中 洋亘 滝口 緑
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.43-47, 2011-10-31

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、東日本は甚大な被害を受けた。地震・津波の恐怖、家族や住居、会社の喪失、長期化する避難所生活など様々な要因が重なり、被災者は皆精神的ストレスを抱えているものと思われる。そのような状況に対し、全国各地の「こころのケアチーム」が被災地で支援活動を展開した。このたび我々は道の要請にて「北海道こころのケアチーム第16班」として宮城県気仙沼市に派遣され支援活動を行った。相談の中で、支持的受容的な心理的サポートを必要とするケース、それに加え薬物療法が重要となるケースをそれぞれ経験した。その中でこころのケア活動による支援の必要性と、周囲の偏見により支援を求めにくい状況が実感された。
著者
小原 絵夢 古高 陽一 三宅 高文 三上 敦大 伊東 あかね
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.40-41, 2016-09-30

症例は 65歳の女性。膀胱癌治療中、抑うつ気分、不眠が出現し、他院精神科にてうつ病と診断され、mirtazapineが開始となった。その後、否定妄想、不死の観念、反対症が出現し、コタール症候群と考えた。当科入院後、炭酸リチウム(以下Li)を追加したところ、前述の症状は消失し、抑うつ気分も軽快した。 コタール症候群の治療は原疾患に準じて行われる。原疾患がうつ病の場合、抗うつ薬、抗精神病薬が使用されるが、これらの大部分は、抗癌剤と同様、肝代謝酵素が関与する。一方でLiは、肝代謝を受けない。このため、薬物相互作用から薬剤の選択肢が限られる担癌患者のうつ病治療において、Liの使用は有効な治療戦略と言える。コタール症候群に対するLi使用の報告はまだ少なく、今後エビデンスの集積が望まれる。
著者
太田 雄子 下谷 保治
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.43-46, 2003-03

妊娠21週および22週で子宮口が開大し胎胞の形成が認められた切迫流早産の2例を経験した。経膣超音波による子宮頚管の観察や早産マーカーである顆粒球エラスターゼ、癌胎児性フィブロネクチンを測定することで早期に切迫流早産と診断することができた。子宮収縮抑制剤、感染の予防および治療などの膣炎の治療法に加えて、ウリナスタチン膣坐薬による局所の抗炎症療法を併用した結果、妊娠期間が延長され生児を得ることができた。
著者
加藤 隆一 上原 央久 宮尾 則臣 萬谷 和香子 加藤 隆一 上原 央久 宮尾 則臣 萬谷 和香子
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.34-39, 2016-09-30

当科では2009年4月から性機能専門外来を開設し、性機能障害の専門的診療を行ってきた。この度、2014年3月までの5年間の当院での性機能専門外来の現況をまとめた。受診者は計133名、年齢中央値は62歳であった。受診の動機は勃起障害(ED)が102名、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群:男性更年期障害)またはその精査が16名、ペロニー病など陰茎の問題が8名、射精障害が3名、男性不妊症またはその精査が3名、女性化乳房の精査が1名であった。EDを主訴に受診した患者102名の年齢中央値は63歳であった。初回治療内容はphosphodiesterase(PDE)5阻害剤が85名(83%)で、薬剤や用量は患者選択とした。初回投与の有効率は全体で49%、初回無効例のうち増量や異なるPDE5阻害剤などへの変更にて最終的に57%で有効だった。LOH症候群を主訴に受診した患者16名の年齢中央値は61歳であった。初回治療内容は男性ホルモン補充療法が6名で、そのうち4名(67%)が有効であった。陰茎の問題ではペロニー病が5名、そのうち2名が手術療法を受けた。射精障害は治療成功例がなかった。地方都市病院にも性機能専門外来には需要があり、意義があると思われた。