著者
吉井 祥
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.1-11, 2018-09-10 (Released:2023-09-28)

本稿は、伊勢が中宮温子の死に関して詠歌した長歌(温子哀傷長歌)について、なぜ長歌体なのかという問題提起のもと、どのような場で詠歌され、どのような働きをしていたのかについて考察する。 まず歌の表現から、集団の代弁という機能と、追善法会を場として導き出す。また上代に見られる、人の死の際の儀礼に関わる長歌の系譜上に温子哀傷長歌も位置付けられるが、以後哀傷歌は個々の心情を詠うのが主流となることを述べる。