著者
吉井 秀樹 吉松 靖文
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.217-226, 2003-07-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
5 1

この10年間、数多くの研究が自閉性障害児者における心の理論の障害を指摘してきた。一方で、自閉性障害児者が感情理解や自己理解に困難をもつことを示す研究もある。しかし、自己理解と他者理解(心の理論)、感情理解の関係性を明らかにした研究はない。本研究では、年長の自閉性障害児と精神遅滞児に対し、自己理解課題、他者理解課題、感情理解課題を実施した。その結果、自閉性障害児は精神遅滞児に比べいずれの課題においても有意に成績が劣るものの、自己理解の成績が高い自閉性障害児は成績が低い自閉性障害児に比べて他者理解課題の得点が有意に高いことを見いだした。これらの結果は、年長自閉性障害児が他者の心の理解だけでなく自己の理解や感情の理解にも困難をもつこと、また、自己の理解の能力が他者の心の理解の能力と関係があることを示唆している。