著者
吉松 靖文 村田 健史 井上 雅彦 木村 映善 中川 祐治
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、自閉症児を主とした発達障害児の日常生活を支援するための携帯型生活支援ツールを設計・実装し、その評価を行う。ツールは携帯電話で動作し、自宅、学校、外出先などどの場所にいても利用できる日常生活に根付いたツールとして設計した。さらに、パーソナルコンピュータでも同じユーザインターフェースと同じ機能で動作するアプリケーションを提供した。本研究では、このツールを実装し、これを用いて次の2点について研究を行った。平成16年度〜平成17年度は、発達障害児の生活支援ツールの設計・実装を行った。まず発達障害児に有効なインターフェースを提案し、XMLをベースにシステム設計した。ツールとしては、タイマー機能、スケジュール機能、カレンダー機能、絵カード機能の4つの機能を実装した。平成17年度〜平成18年度は、ツールによる自閉症児を中心とした発達障害児への実験を行った。臨床応用では、様々なタイプや程度の発達障害および生活シーンにおいて適用を行った。知的障害の特別支援学校では、PCでタイマーやスケジューラを表示し、学級での活用を行った。その結果、指示待ち状態にあった自閉症児が自発的に活動に着手したり、一つ一つの活動遂行に時間がかかっていた知的障害児や自閉症児が所定の時間内に活動を終えることが可能になったりするなどの成果が得られた。また、他児の遂行と自分のそれを比較するようになったり、タイマーを使っていない場面での活動への着手・遂行も能動的になったりするなどの効果も見られた。家庭での応用では、朝の支度や下校後の活動支援を行った。その結果、朝がなかなか起きられなかった高機能自閉症児が短時間で自ら起床するようになったり、宿題が通常の何倍もかかっていた高機能自閉症児が平均的な時間で宿題を終えるようになったりするなどの効果が見られた。
著者
吉井 秀樹 吉松 靖文
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.217-226, 2003-07-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
5 1

この10年間、数多くの研究が自閉性障害児者における心の理論の障害を指摘してきた。一方で、自閉性障害児者が感情理解や自己理解に困難をもつことを示す研究もある。しかし、自己理解と他者理解(心の理論)、感情理解の関係性を明らかにした研究はない。本研究では、年長の自閉性障害児と精神遅滞児に対し、自己理解課題、他者理解課題、感情理解課題を実施した。その結果、自閉性障害児は精神遅滞児に比べいずれの課題においても有意に成績が劣るものの、自己理解の成績が高い自閉性障害児は成績が低い自閉性障害児に比べて他者理解課題の得点が有意に高いことを見いだした。これらの結果は、年長自閉性障害児が他者の心の理解だけでなく自己の理解や感情の理解にも困難をもつこと、また、自己の理解の能力が他者の心の理解の能力と関係があることを示唆している。
著者
海野 歩未 吉松 靖文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.507, pp.11-14, 2006-01-05

高機能自閉症児は対人関係だけではなく時間を意識した行動や時間管理など社会適応上に様々な困難をもつことが多い。本研究では高機能自閉症児の時間感覚の特性を明らかにするとともに, 時間感覚への効果的な支援についても検討した。その結果, 高機能自閉症児の時間感覚は一様ではなく, 各ケースにおいてもその特性は異なっていることが示唆された。一方, 時間感覚に大きな困難があるケースにおいてはRAINMAN Toolkitを使用した支援が時間感覚の改善に有効であることが示唆された。
著者
吉松 靖文 藤吉 賢 村田 健史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.638, pp.31-36, 2005-01-20

アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障害児4名に対して携帯型タイムエイド(RAIMAN Toolkit)を適用した。家庭で保護者と一緒にタイムエイドを使うことで, 活動への取り組みや次の活動への移行を促した。いずれの対象児も活動への取り組みや次の活動への移行ができるようになったが, その効果は一様ではなかった。タイムエイドがストレスの原因になる場合も見られた。一方で, 対象児自身が時間を設定することで本人による時間管理が可能になったり, 保護者と相談して時間を決めることでコミュニケーションすることが可能になったりした。