著者
森田 慎一 迫田 正和 吉原 勝利
出版者
鹿児島県森林技術総合センター
雑誌
鹿児島県森林技術総合センター研究報告 (ISSN:1883017X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.11-14, 2013-03

奄美は,イエシロアリなど,家屋に甚大な被害を及ぼす恐れがあるシロアリの活動が盛んな地域である。筆者らは鹿児島県日置市吹上と奄美市笠利町との2か所において野外杭打ち試験を実施し,同じ処理でも奄美市の試験地での被害が大きいことを確認している(図師ほか 2010)。一方,奄美地域は世界自然遺産の登録候補地として,貴重な動植物や自然環境の保護・保全が重要な課題となっている地域でもあることから,木材の保存処理にあたっては環境への負荷ができるだけ少ない方法が望まれる。そこで,銅などの金属塩を含まず,急性,慢性の毒性も低いとされている(角田 1999a)ホウ素系薬剤を用いた処理を検討した。ホウ素系薬剤としては,ホウ酸,ホウ砂,八ホウ酸二ナトリウム四水塩(以下 DOT)があり,製材の日本農林規格(農林水産省 2007)等では「ほう素化合物系」として,「ほう砂・ほう酸混合物又は八ほう酸ナトリウム製剤」として掲載されている。「ほう素化合物系Iの薬剤は性能区分K1にのみ記載されており,室内での防虫効果のみを期待される位置づけに過ぎない。これらとは別に,木材の難燃化剤のひとつとしてホウ素系の薬剤が用いられており(日本木材保存協会 2012),シロアリの防除効果を同時に調っているものもある。リュウキュウマツの建材利用の一環としてシロアリ防除処理は不可欠と考えられることから,今回,県内企業で注入処理ができるDOTとホウ素系難燃化剤(以下FR)による注入処理を行った試験体を用いて,シロアリ食害に対する抵抗性を試験した。