著者
吉原 敬嗣 入山 義久
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.614-619, 2018

<p>日本緑化工学会生態・環境緑化研究部会の「阿蘇小規模崩壊地復元プロジェクト」活動として2017年11月,熊本県熊本市波野にてススキの穂(種子)を採取した。本稿は採取作業,精選作業,性状調査の結果を一事例として報告するものである。一部時間の参加者を含む13 名が62 時間の合計作業時間で採取できたススキの穂は,土嚢袋60 袋分で約34 kgであり,採取効率は1人1時間当たり0.553 kgとなった。採取したススキの穂について脱穀機や篩を使い精選方法を検討した結果,篩選を採用し,歩留り67.0%で約23 kgの精選種子を得た。精選完了直後に先行して種子の性状調査を実施し,純度83.4%,1 g当たりの種子粒数1,486という結果が得られ,また,強精選により得られた頴果の発芽率については3つの温度条件で比較し,30℃明条件8 hr-20℃暗条件16 hrの変温区で最も高い87.0%の発芽率が記録された。約1か月後に種子品質証明書発行のための小穂の性状調査を行った。その結果,純度85.9%,1 g当たりの種子粒数1,653,および前述の発芽条件下で53.0%の発芽率が記録されたことから,証明書を発行した。また,小穂の中に穎果が入っていないシイナの割合は42.0%だった。別途行った面積当たりの採取効率の検討については,面積,人数,時間,ススキの穂の本数,各種重量を測定し,1 m2当たり40 本,1人1時間当たり約550 本が採取可能と計算できた。</p>