著者
吉原 正人 鈴木 馨 梶 光一
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.134-144, 2016-09-25 (Released:2017-02-02)
参考文献数
48

都心(上野動物園)と郊外(雪印こどもの国牧場)のハシブトガラス(Corvus macrorhynchos japonensis)の捕獲調査個体を材料として、体格と栄養状態の地域間比較を試みた。上野・こどもの国いずれでもカラスの性的二型は明瞭で、オスはメスに比べて体重・嘴峰長・嘴高が有意に大きかったことから(P <0.01)、体格の地域間比較は成鳥・幼鳥とも雌雄別に実施した。体重は成幼・雌雄とも上野がこどもの国より小さかったが(P <0.01)、餌の確保・運搬や他個体への威嚇・攻撃など生存競争に有利に働く嘴(嘴峰長・嘴高)は逆に成幼・雌雄とも上野がこどもの国より大きかった(P <0.01)。栄養状態(栄養不良率)については、上野がこどもの国よりも悪く(P <0.01)、成鳥と幼鳥で比較すると、上野・こどもの国とも幼鳥の方が悪かった(P <0.01)。雌雄の栄養状態は、上野ではメスがオスに比べて悪かったが(P <0.05)、こどもの国では雌雄差がみられなかった(P >0.05)。捕獲季節を繁殖期(3〜7月)と非繁殖期(8〜2月)に分けても栄養状態を比較したが、繁殖期・非繁殖期とも上野がこどもの国より悪く(P <0.01)、上記の地域差に及ぼす捕獲季節の影響は認められなかった。以上から、生ゴミを餌資源として高密度分布する都心では体格が小型化して栄養状態が悪くなること、特に成長過程の幼鳥や体格でオスより劣るメスでは、栄養不良が顕著になることが示唆された。