著者
梶 光一 吉田 剛司 久保 麦野 伊吾田 宏正 永田 純子 上野 真由美 山村 光司 竹下 和貴
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ニホンジカの島嶼化プロセスとメカニズムを解明するために、島に導入されたニホンジカの生態・形態・遺伝の年代的変化を調べた。餌資源化で体の小型化が生じ初産齢が上昇したが、間引きによって体重の増加と初産年齢の低下が生じた。餌の変化に対応して第一大臼歯の摩耗速度は初回の崩壊後に早まった。一方、臼歯列サイズは、減少から増加に転じた。有効個体群サイズおよび遺伝的多様性も一度減少したが、その後それぞれ安定および増加に転じた。以上は、餌資源制限下で形態・遺伝に対して正の自然選択が働いた可能性を示唆している。
著者
井手 香織
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヒトの過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(IBD)の病態には腸管クロム親和性細胞(EC細胞)が産生するセロトニン(5-HT)が深く関与している。本研究ではこれに着目した犬IBDの病態解析を行った。まず免疫組織化学染色によって犬十二指腸粘膜組織中に特徴的な5-HT陽性細胞を確認し,犬のEC細胞であると考えた。そしてこの細胞は健常犬群と犬IBD群で数に差が認められた。さらに5-HT産生に関わる酵素TPH1,組織中の5-HT除去機構であるSERTの遺伝子mRNA量を両群で解析し明らかにした。
著者
五味 高志 戸田 浩人 木村 園子ドロテア 渡邊 裕純 浅野 友子 水垣 滋 布川 雅典 根岸 淳二郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

森林-渓流生態系の構成物質では、林床落葉の放射性セシウム濃度が最も高く、福島原発事故によって放出された放射性物質の多くは、陸域に現存していた。流域のCs-137空間分布は、林相、微地形、立地などに影響されていた。森林土壌では、農地土壌と比べて有機物に吸着したCs-137が多かった。森林から渓流に供給されたリターは、溶脱によって放射性セシウムが流出し、CS-137濃度は林床の25%程度であった。これに応じて、同じ栄養段階の生物では、林床に生息するものより渓流に生息する動物でCs-137濃度が高くなっていた。本研究結果から、有機物に付着したCs-137の長期的な観測の重要性を示唆できた。
著者
豊田 剛己
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

もやし残渣の土壌施用がダイズシストセンチュウ(SCN, Heterodera glycines)に及ぼす影響をポット試験で評価した。もやし残渣を土壌に対して重量で1%施用すると、土壌中のSCNの二期幼虫の密度が2週間後には顕著に増加し、35日後には急激に減少していた。この結果から、SCN卵の孵化がもやし残渣中に含まれる孵化促進物質により促進され、孵化した二期幼虫が宿主植物不在下で餓死したと考えられた。もやし残渣を4回施用し、7週間後にSCN密度をリアルタイムPCR法で評価したところ、対照区ではSCNの密度が変化しなかったのに対し、もやし残渣施用区では施用前と比べて70%以上減少した。SCNの孵化促進効果はもやしの水抽出液でも見られ、部位別では根の部分に高い孵化促進効果が認められた。これらの結果から、もやし残渣の土壌施用は環境負荷の少ないSCN防除法であることが明らかにされた。もやし残渣をエダマメ移植の3週間前に土壌施用すると、効果的にSCN被害を軽減できることを圃場試験で確認した。問題点として、孵化促進は土壌温度25℃前後の時に限り見られるため、もやし残渣施用のタイミングが限定されることが挙げられた。
著者
松田 浩珍 田中 あかね 下田 実 新井 克彦 辻本 元 西村 亮平
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

イヌ肥満細胞腫臨床サンプルに関し、c-kit遺伝子の全領域について遺伝子変異の検索を行い、細胞膜直下領域の遺伝子変異が12%程度の症例に認められたものの、その他88%の症例におけるc-kit遺伝子は、野生型であることを示した。また、変異型c-kit遺伝子を用いて遺伝子導入実験を実施したが、腫瘍性増殖が誘導されなかった。このことから、c-kit遺伝子の変異が腫瘍性増殖の根幹ではなく、それ以外の細胞内分子にも何らかの異常が併発することで腫瘍性増殖が誘導されていることが示唆された。肥満細胞腫細胞ではD型サイクリンの過乗発現、Bcl-2ファミリー分子Mcl-1の過剰発現、Bcl-2抑制性BH3ファミリータンパクの低発現、p21・p27・p53などのガン抑制遺伝子の低発現が認められた。また、転写因子NF-κBやAP-1が活性化しており、これらの分子標的阻害剤によって細胞周期の進行が阻止され、細胞の増殖が抑制されることが明らかとなった。その活性化を誘導する上流の細胞内シグナル分子として、PI3キナーゼ系の下流でS6キナーゼが強く活性化しており、転写を制御するS6リボソーマルプロテインの発現が亢進していることが明らかとなった。さらに、c-kit遺伝子に変異を有さず、高親和性IgEレセプターを発現する新しいイヌ肥満細胞腫株を樹立し、その成果を論文発表した。c-kit遺伝子変異以外の腫瘍化あるいは腫瘍性増殖促進メカニズムを検索する目的で、症例サンプルや数種のイヌ肥満細胞株を用いて、各種サイトカインおよびそのレセプターの発現とグレード(悪性度)との関連を検討した。肥満細胞種の多くが、IL-3や-6、GM-CSF、SCFなどの増殖因子を自ら産生し、それらのレセプターも発現していること、それらを中和することで細胞増殖が抑制されることを明らかにした。
著者
清水 本裕
出版者
東京農工大学
雑誌
東京農工大学人間と社会 (ISSN:13410946)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.87-103, 1995-04-01
著者
百鬼 史訓
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、平成17年度から平成19年度にわたって、剣道難聴予防のための基礎的研究として『剣道難聴を予防するための剣道具(面)の開発研究』を行なった。研究の概要は、平成17年度には、剣道を専門的に実践している学生や警察官を対象として「剣道難聴」の実態調査を行い、高い出現率と2kHz,3kHzそして8kHzが存在することを明らかにした。その原因と考えられる「剣道騒音」について分析(音圧・周波数)を行ったところ、掛け声、踏み込み音、竹刀音、打撃音などに固有の周波数あることや、かなり高い音圧の騒音が発生していることが明らかになった。平成18年度には、剣道騒音と剣道難聴の関連性について検討したが、測定器具の精度や生理的な個人内変動などの問題が生じたため、その因果関係については明らかにならなかった。平成19年度には、現実的な対応として難聴予防のために遮音性の高い「面」布団の芯材やその構造などの改良を行うために、各種面の遮音性についての検討を行なったところ、各種面布団の遮音性は1kHzでは低いと考えられるが2kHz,4kHzと周波数が高くなるにしたがって高くなり、ミシン刺しより手刺し材料の方が遮音効果は高く、化学素材(ソルボセイン)を1枚加えると、あらゆる布団材料よりも遮音効果は高くなるなど、剣道具開発のための有益な礎的資料を得ることができた。
著者
佐藤 俊幸
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

チクシトゲアリ(Polyrhachis moesta)は樹上性のアリで、秋に結婚飛行を行い、交尾して翅を落とした女王が枯れ枝中の空洞で越冬し、翌春産卵を開始する。その際、50%近くの巣が複数の女王で構成され、女王どうし口移しの栄養交換さえ行うが、それらに血縁はないことがDNA指紋法により確かめられている(Sakaki,Satoh and Obara,1996)。女王間には餌交換行動や共同育児といった協力行動がみられる。しかし、成熟した巣は多くの場合単女王であることから、多雌創設巣の女王は巣の成熟過程で一個体をのぞき除去されるか、あるいは別の場所へ分かれていくものと推定される。では、なぜ多雌創設が進化したのだろうか?女王の体サイズ、生体重には単雌、多雌創設に関わらず有意差はないことが分かった。創設女王数の頻度分布がポアソン分布の期待値と一致していたことと考え合わせると、創設女王は個体の体サイズやボディコンディションに関係なくランダムに出会ったものどうしで多雌巣を形成していることが示唆された。また、多雌創設巣の女王は、より早く産卵を開始し、より多くのワーカーを育て上げられることが分かった。コロニーの初期の成長速度を速めることは、種内・種間の資源を巡る競争や補食圧の回避を考えると大変重要である。おそらく、野外においても単雌創設より多雌創設の方が、女王あたり期待される繁殖成功率は高いか、悪くても下回らないのではないかと考えられる。ただし、複数いる女王の全てがそのコロニーの女王としては残れず、次第に数が減少していくので、全ての女王が積極的に多雌創設を行うわけではないと考えられる。この種の多雌創設は、出会ったらする、出会わなかったらしない、という日和見的なものではないか。
著者
横山 正 鈴木 創三 渡邉 泉 木村 園子ドロテア 大津 直子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島県二本松市の放射性Csによる農耕地汚染実態の解明と植物-微生物相互作用によるその除去の加速化を検証した。二本松の優占粘土の雲母は、有機酸で固定したそれを放出した。阿武隈川流域の河川堆積物のその濃度は、秋季に減少し春季に増加した。水田ではオタマジャクシでその濃度が高く、イノシシ筋肉中のそれは自然減衰以上の減少を示した。また、鳥類の精巣や卵巣にその蓄積が見られた。畑の可給態のそれは2013年には1~5%に減少したが、森林土壌では3~13%を示した。植物はPGPR接種で、その吸収量を増大させたが、雲母が固定した分を吸収できず有機酸を生成するカリウム溶解菌の併用で、植物の吸収量を増加させられた。
著者
小原 嘉明 佐藤 俊幸
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

標記の研究課題を追求するために、下記の(1)から(3)の研究を行い、それぞれ下記の成果を得た。(1)ユーラシア大陸内とその近辺の島嶼における「まぼろし色」(紫外色)の翅の雌の分布についてこれについての概要を知るために、「自然史博物館」(ロンドン、イギリス)と「Zoologisches Forshungsmuseum Alexander Koenig博物館」(ボン、ドイツ)に所蔵されている関係地域のモンシロチョウ標本の紫外線写真を撮って紫外線の反射の有無および反射の強さを調査した。その結果、紫外線を反射する翅を有する雌はユーラシア大陸の東の沿海部のみにおいて観察されたこと、その他の、ヨーロッパ、中央アジア、地中海に面したアフリカ北部、およびカナリア諸島とキプロス島には観察されないこと分かった。(2)「まぼろし色」の翅を有する雌の進化について上記の結果と、紫外色の発現条件(幼虫時の長日条件)に基づいて、紫外色翅を有する雌のユーラシア大陸内での進化を追求するために、同大陸とその周辺の地域においてモンシロチョウを採集し、それから得た幼虫を長日条件下で飼育し、得られた雌成虫の翅の紫外色の有無およびその強度を調査した。その結果上記(1)の推測が支持された。すなわち、イギリスからキエフ(ウクライナ)間のヨーロッパでは紫外色を有する雌が見られないこと、北京(中国)およびソウル(韓国)から広州(中国)に及ぶ沿海部と台北(台湾)においてのみ紫外色を有する雌が棲息していることが分かった。またこれらの地域では紫外色を有する雌と有しない雌が混在していることも分かった。これらの結果から、紫外色を有する雌はユーラシア大陸の東方の沿海部近辺において進化したことが示唆された。(3)紫外色の遺伝機構について紫外色翅を有しないオランダのモンシロチョウと、それを有する日本のモンシロチョウを交雑して得られた結果を分析した結果、紫外色は複数の遺伝子座の遺伝子によって支配されていることが示唆された。
著者
高田 秀重 綿貫 豊
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

海洋漂流プラスチックおよび海岸漂着プラスチック中に添加剤由来および周辺の海水中から吸着してきた有機汚染物質が1ng/g~10000ng/g程度の濃度で含まれることを明らかにした。これらの有機汚染物質はプラスチックが生物に摂食された場合に、生物の組織中に移行することを、海鳥を対象にして、明らかにした。添加剤由来の化学物質の海鳥への移行において、海鳥の胃内のストマックオイルという油に富む消化液による溶出が鍵となっていることを室内溶出実験により明らかにした。今後、摂食プラスチックを介した化学物質の生物への曝露について、その規模と広がりを明らかにしていく必要がある。
著者
石田 寛 遠山 茂樹 佐藤 令一 遠山 茂樹 佐藤 令一
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嗅覚センサを搭載し、匂い・ガスを辿って危険物の所在を突き止める犬型ロボットの開発を目指した。ナノスケールの周期構造を持つ金属薄膜に光を照射すると、化学物質の吸着に敏感に応答し、反射光強度が変化する。これを利用して小型嗅覚センサを実現した。また、くんくんと匂いを嗅ぐ犬の鼻の構造を模倣した測定装置を開発した。能動的に気流を操作し、左右の嗅覚センサの応答差を拡大することにより、匂い・ガスの発生源を容易に見つけ出すことができる。
著者
早川 東作 守 一雄
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

笑顔装着具で「笑顔」を作らせた時の効果を実験的に検証した。効果の潜在指標として感情誤帰属手続き(Affect Misattribution Procedure, Payne et al., 2005)を用いた。市販の救急絆創膏2つを輪ゴムでつなぎ、輪ゴムを頭の上を通して絆創膏で両頬をつり上げる条件と、逆に顎の下を通して両頬を引き下げる装着具を作成した。大学生80名(男52名女28名)をランダムに頬引き上げ(=笑顔)条件と、引き下げ条件に割り当てた。実験の結果、笑顔条件では、AMPでの評価がより好ましい方向に変化することが確認された。
著者
谷口 隆秀
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

宿主の免疫反応により病態が悪化する様々なウイルス感染症が報告されている。それらのウイルスの中には、マクロファージを標的とする様々なウイルスが存在する。ウイルスに感染したマクロファージは宿主体内を遊走してウイルスを全身に拡散するとともに、大量のサイトカイン・ケモカイン等の産生を引き起こし病態を悪化させる。ウイルス性脳炎発症におけるTNFαの役割を明らかにするために、マウスに致死的な急性脳炎をおこすMHV-JHM株を用いて、TNFα遺伝子欠損マウスに対して脳内接種経路での感染実験を行った。その結果、マウスの生存率、CNSにおけるウイルス力価、脳の病理組織学的変化にはマウスの系統による違いは見られず、TNF-αはJHM感染による急性脳脊髄炎の病態発生に重要な役割を果たしていないことが示唆された。また、JHM感染TNF-α遺伝子欠損マウスにおけるサイトカイン発現について検討したところ、各種サイトカインおよびこれらケモカインの発現には系統による差が見られず、TNF-αはJHMによる急性脳脊髄炎におけるサイトカイン動態に関与しないということが示唆された。また、劇症肝炎型株(MHV-3)、脳炎型株(JHM)および弱毒株(S)の3株のマクロファージでの増殖能およびサイトカイン等の遺伝子発現について検討した。MHV増殖能では、3株で有意な差は認められなかった。MHV-3感染マクロファージは、他の株と比べTNFα、MIP1-α等のmRNAが他の2株と比べ多く発現していることが明らかとなった。