著者
吉名 重美
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-95, 1976-12-25

音楽史上(西洋),特にバロック時代の器楽における最大の表現形式としては,フーガと組曲をあげることができる。そのうちの組曲は,古典派時代においてソナタ形式の発達と共に衰退したかのようにみえたが,近代になりまた新しい衣をきて発展してきた。13; このめまぐるしい変遷を遂げてきた組曲を,今回の演秦会にとりあげることにした。曲目には,古典組曲であるバッハ Bach,J.S.(1685−1750)の「フランス組曲 Franzosische Suiten」と,近代組曲であるムソルグスキー Mussorgsky, M.R.(1839−1881)の「展覧会の絵 Bilder einer Ausstellung」とを選んだ。いうまでもなく両者は,古典,近代の組曲において共に代表的な作品であり,両時代の各々の特徴をよくとらえている作品であると認められているという根拠にもとづく。13; 技術的要素と精神的要素(内面的要素)との双方が結合して,1つの演秦が出来上っていく。その内面的要素を知るうえにおいて必要なことは,すなわち組曲の源流,変遷を探ることではないかと思う(もちろん,Bach,J.S. や Mussorgsky,M.P. らの作品のスタイルを知ったうえで)。13; 組曲の源流を探り,変遷を辿ることにより,なぜ近代において一時期の衰退から組曲が復活してきたのかを究明し,そのことによって,自己の演奏や音楽教育にどのような効果をもたらすかを,研究してみたいと思う。