著者
本田 沙貴 吉岡 和子
出版者
ヨシミ工産株式会社
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.3-13, 2021-03-31

本研究の目的は、まず、自己愛的脆弱性の特徴によって調査対象者が6つのサブタイプに分類されることを確認することである。次に、自己愛的脆弱性サブタイプによって友人関係の在り方にどのような違いがあるのかを検討し、各サブタイプが友人関係にどの程度満足しているのかを明らかにすることである。自己愛的脆弱性の得点によりクラスター分析を行った結果、6つのサブタイプを見出し、想定した2つのうち1つが抽出された。次に、自己愛的脆弱性サブタイプと友人関係の在り方について検討した。友人と自分の役割を対等と考えている一方で、「自分で不安や衝動をコントロールできないので誰かに調整してもらおうとする」特徴を持つサブタイプは、友人の方が自分よりも役割を果たしていると感じており、実際に自分がしていることに自信がないことが推察され、自分が役割を果たせていないと考えていることが示唆された。そのため、友人との関係を深めることに戸惑いを感じている可能性がある。そして、各サブタイプが友人関係にどの程度満足しているのかについては、有意差は見られなかった。友人関係への満足感が60点以上の者が大半であり、思い浮かべた友人は、親密度が高い者であったことが理由の1つであると思われる。
著者
寺嶋 愛 吉岡 和子
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学心理教育相談室紀要 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-48, 2017-03-31

本研究では,娘が母親の情緒的関わりによって母娘の絆を築くことで安心感を得ることができたかどうかによって,娘の本来感や「いい子」を振る舞うかどうかが変化するのではないかと仮定し,娘の「いい子」の関連モデルを検討することを目的とした。女子大学生とその母親に対する質問紙調査を実施した結果,『「母親の情緒的関わり」という「母親から認められる」経験が娘の「安心感」の獲得につながり,その「安心感」を基に「母娘の絆」を築いていき,「お母さんは自分の欲求を満たしてくれる,信頼できる存在なのだ」という母親に対する信頼感を得られる。それによって「本来感」が得られ「本当の自分」を表出することが可能となる。』という一連の過程が経験できれば,『娘は「我慢」して「いい子」を振る舞うことなく「自分らしく」いることができる』ということが示された。娘が「いい子」を振る舞うかどうかには「母親の情緒的関わりによる安心感の獲得」が非常に重要であり,娘が成長し,自立へと向かう過程においても継続して重要な意味を持ち続けると考えられる。