著者
一二三 亨 渡邉 善寛 吉岡 早戸 長谷川 栄寿 原口 義座 加藤 宏 小井土 雄一 本間 正人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.321-325, 2010-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
13

症例は39歳の男性。塗装作業中にタイル洗浄用クリーナー(フッ化水素酸1.3%,フッ化アンモニウム10%を含有)を誤飲し,当院へ救急搬送された。胃管より牛乳を投与した後,ICUに入室した。フッ化水素中毒による低Ca血症に対しては,グルコン酸カルシウムを静脈投与した。また来院4時間後頃より血清K濃度が急激に上昇したため,continuous hemodialysis(CHD)を施行した。来院7時間後にtorsades de pointes(TdP)が生じたが,硫酸マグネシウム2 gを投与したところ,洞調律に回復した。TdPが生じた時の血清Mg濃度は0.8 mg·dl−1と著明な低値であり,これがTdPの原因の1つと考えられた。これは,透析液中のMg濃度が1.2 mg·dl−1と,慢性腎不全患者を対象として低値に設定されているために,フッ化水素中毒による低Mg血症に加えて,CHDによりさらに低Mg血症が悪化した可能性が考えられた。