著者
一二三 亨 小井土 雄一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.355-357, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1
著者
一二三 亨 渡邉 善寛 吉岡 早戸 長谷川 栄寿 原口 義座 加藤 宏 小井土 雄一 本間 正人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.321-325, 2010-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
13

症例は39歳の男性。塗装作業中にタイル洗浄用クリーナー(フッ化水素酸1.3%,フッ化アンモニウム10%を含有)を誤飲し,当院へ救急搬送された。胃管より牛乳を投与した後,ICUに入室した。フッ化水素中毒による低Ca血症に対しては,グルコン酸カルシウムを静脈投与した。また来院4時間後頃より血清K濃度が急激に上昇したため,continuous hemodialysis(CHD)を施行した。来院7時間後にtorsades de pointes(TdP)が生じたが,硫酸マグネシウム2 gを投与したところ,洞調律に回復した。TdPが生じた時の血清Mg濃度は0.8 mg·dl−1と著明な低値であり,これがTdPの原因の1つと考えられた。これは,透析液中のMg濃度が1.2 mg·dl−1と,慢性腎不全患者を対象として低値に設定されているために,フッ化水素中毒による低Mg血症に加えて,CHDによりさらに低Mg血症が悪化した可能性が考えられた。
著者
高橋 礼子 近藤 久禎 中川 隆 小澤 和弘 小井土 雄一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.644-652, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
11

目的:大規模災害時には巨大な医療ニーズが発生するが,被災地内では十分な病床数が確保できず被災地外への搬送にも限界がある。今回,実際の地域での傷病者収容能力の確認を行うべく災害拠点病院の休眠病床・災害時拡張可能病床の実態調査を行った。方法:全災害拠点病院686施設に対し,許可病床・休眠病床・休眠病床の内すぐに使用可能な病床・災害時拡張可能病床についてアンケート調査を実施した。結果:回収率82.1%(許可病床258,975床/563施設),休眠病床7,558床/179施設,すぐに使用可能な休眠病床3,751床/126施設,災害時拡張可能病床22,649床/339施設であった。考察:いずれの病床使用時にもハード面・ソフト面での制約はあるが,被災地外への搬送に限界があるため,地域の収容能力を拡大するためには,休眠病床・災害時拡張可能病床は有用な資源である。今後,休眠病床の活用や災害拠点病院への拡張可能病床の普及を進めると共に,各種制約も踏まえた医療戦略の検討が課題である。
著者
近藤 久禎 島田 二郎 森野 一真 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 明石 真言 谷川 攻一 岩崎 泰昌 市原 正行 小早川 義貴 小井土 雄一
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.502-509, 2011-12
被引用文献数
1

背景:2011年3月11日に発生した東日本大震災による地震と津波は東京電力福島第一原子力発電所を襲い,甚大な被害を引き起こし,多量の放射性物質を環境中に放出した.この事故対応において,多くのDMAT隊員が派遣された.今回,その活動について意義を検証し,今後のDMAT活動,緊急被ばく医療における課題を提示することを目的とした.方法:高線量被ばく・汚染(緊急作業従事者)への緊急被ばく医療対応,住民対応,入院患者の移送対応などDMAT活動実績をまとめ,課題を抽出した.結果:DMATの入院患者移送対応は,福島第一原子力発電所から20〜30km圏内の病院を対象に3月18日〜22日に行われた.入院患者454名を搬送したが,搬送中の死亡は防げた.DMATは緊急被ばく医療体制でも重要な役割を果たした.DMATは原子力発電所からJビレッジを経由し二次被ばく医療機関,三次被ばく医療機関に分散搬送する流れをサポートする体制を確立した.その為の,研修会の実施といわき市内へのDMATの待機のための派遣を行った.いわき市内へのDMAT派遣は,いわき市立総合磐城共立病院を拠点として,4月22日から9月7日まで22次隊,のべ127名が派遣された.DMATによる住民一時立入り対応においては,中継基地における医療対応を行った.具体的には,会場のコーディネーション,Hotエリアの医療対応を行うとともに,救護班としても活動した.活動期日は5月3日から9月2日のうち60日に及び,スクリーニング・健康管理の対象者は14700人以上で,さらに傷病者131名に対応した.これらの活動を通じて,重篤な傷病の発生,スクリーニングレベルを上回る汚染は,DMATが活動したところにおいては,ともになかった.考察:本邦の緊急被ばく医療体制は,原子力施設立地道府県の地方自治体毎に構築されており,いくつかの問題が指摘されていた.問題の一つは放射線緊急事態への対応の教育,研修はこれらの地域のみで行われていたことである.さらに,他の災害との連携,整合性に問題があることはたびたび指摘されていた.DMATが医療搬送を行うことにより,454名の患者を安全に搬送したことと,住民一時立入りでのDMATの活動の意義は深かった.今回の事故対応の経験から,被ばく医療も災害医療の一つであり,災害医療体制との整合性は必須であることが示唆された.今後は,やはり災害医療体制の中で,緊急被ばく医療もしっかりと位置付けられることが必要である.そのような観点からの緊急被ばく医療体制のあり方について研究していくことが今後は必要である.
著者
高橋 礼子 近藤 久禎 中川 隆 小澤 和弘 小井土 雄一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.644-652, 2017

<p><b>目的</b>:大規模災害時には巨大な医療ニーズが発生するが,被災地内では十分な病床数が確保できず被災地外への搬送にも限界がある。今回,実際の地域での傷病者収容能力の確認を行うべく災害拠点病院の休眠病床・災害時拡張可能病床の実態調査を行った。<b>方法</b>:全災害拠点病院686施設に対し,許可病床・休眠病床・休眠病床の内すぐに使用可能な病床・災害時拡張可能病床についてアンケート調査を実施した。<b>結果</b>:回収率82.1%(許可病床258,975床/563施設),休眠病床7,558床/179施設,すぐに使用可能な休眠病床3,751床/126施設,災害時拡張可能病床22,649床/339施設であった。<b>考察</b>:いずれの病床使用時にもハード面・ソフト面での制約はあるが,被災地外への搬送に限界があるため,地域の収容能力を拡大するためには,休眠病床・災害時拡張可能病床は有用な資源である。今後,休眠病床の活用や災害拠点病院への拡張可能病床の普及を進めると共に,各種制約も踏まえた医療戦略の検討が課題である。</p>
著者
須崎 紳一郎 小井土 雄一 冨岡 譲二 大泉 旭 布施 明 黒川 顕 山本 保博
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.42-50, 1994-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

International repatriation(国際患者搬送帰還)を担当実施した自験例19例(邦人帰還12例,外国人送還7例)を報告し,その実態と問題点を検討した。相手地はアジア,南北米,欧州からなど4大陸13ヵ国で,総搬送距離は133,643km,搬送飛行時間は171時間35分に及び,平均搬送距離は7,034km,平均飛行所要時間も9時間2分を要した。最長はLimaからのLos Angels経由15,511kmの搬送で,飛行時間だけでも21時間を超えた。随行医師は当施設から1名ないし2名を派遣した。原疾患は多岐にわたり,19例のうち意識障害例は4例,移送経過中人工呼吸を必要としたものは2例あった。最近の10例は国際アシスタンス会社からの依頼を受けた。航空機は全例民間定期便を利用した。移送経費は平均で300万円程度を要した。搬送途上の医療面では呼吸管理が最も重要であったが,一般の大型定期旅客機を利用する範囲では騒音,離着陸加速度,振動などは患者の循環動態には大きな影響を認めなかった。国際患者搬送帰還は,相手先病院,航空会社,保険会社,空港当局はじめ諸方面の協力と綿密な準備連絡があれば医療上は必ずしも困難ではないが,目下のところ本邦は欧米に比べ,これまでこのような医療需要に対する受け入れや派遣の実績,経験が乏しく,支援体制の整備,組織化が遅れているのが最大の問題点である。
著者
大野 龍男 小井土 雄一 近藤 久禎 市原 正行
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.98-98, 2017-11-30

東日本大震災では 383 隊 (1852 人) の DMAT が被災地で医療支援活動を行なった.活動終了後派遣された DMAT 隊員にアンケートを行なった中で,特にロジスティクスに関する回答で通信手段の不足,脆弱な通信環境,情報の不足,過多,錯綜があげられた.この為,今後起こりうる可能性の高い首都直下地震や南海トラフ地震に対応すべく DMAT では災害時に強い複数の通信インフラの導入整備及び研修を実施している.
著者
小井土 雄一 近藤 久禎 市原 正行 小早川 義貴 辺見 弘
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.495-501, 2011-12
被引用文献数
1

背景:今日の急性期災害医療体制は,阪神淡路大震災の反省に基づき研究が行われ,研究成果が国の施策に活かされることにより構築された.その本幹を成すものは,災害拠点病院,DMAT(災害派遣医療チーム),広域医療搬送計画,EMIS(広域災害救急医療情報システム)の4本柱である.今回の震災においては,くしくもこの新しい急性期災害医療体制が試される結果ともなった.しかしながら,今回の震災における医療ニーズは,阪神淡路大震災とは全く違ったものであった.DMATにおいても,これまで超急性期の外傷を中心とする救命医療に軸足を置いてきたが,今回の震災においては,また新たな対応を要求された.目的:今回の震災においてDMATの医療活動が効果的に行われたか後方視的に検証し,課題を抽出することにより,DMAT事務局として今後のDMATのあり方に関する研究の方向性を示すことを目的とした.方法:2011年3月11日発生した東日本大震災に対して,DMAT380チーム,1,800人の隊員が全都道府県から出動した.全380チームの活動報告書を基に,指揮命令系統,病院支援,域内搬送,広域医療搬送,入院患者避難搬送などそれぞれのDMAT活動実績をまとめ,課題を抽出した.活動報告書は著者らが所属するDMAT事務局が共通フォーマットを作成し,2011年6月にインターネット配信し回収した.結果:今回の震災では,DMAT隊員1.800人を超える人員が迅速に参集し活動した.指揮命令系統においては,国,県庁,現場まで統括DMATが入り指揮を執った.急性期の情報システムも機能し,DMATの初動はほぼ計画通り実施された.津波災害の特徴で救命医療を要する外傷患者の医療ニーズは少なかったが,被災した病院におけるDMATの病院支援は十分に効果的であった.本邦初めての広域医療搬送が行われたことも意義があった.また急性期の医療ニーズが少なかった一方で,発災後3〜 7日に病院入院患者の避難等様々な医療ニーズがあったが,このような医療ニーズに対してもDMATは柔軟に対応し貢献した.考察:本震災において行われた急性期災害医療を,阪神淡路大震災時と比較すると,被災地入りしたDMATの数だけをとっても,隔世の感を持って進歩したと言え,これまでの研究の方向性が間違っていなかったことが証明された.しかしながら,今回の地震津波災害においては,阪神・淡路大震災に認められなかった様々な医療ニーズが出現し,その中には今まで研究されていない領域のものもあった.東海・東南海・南海地震が連動した場合は,今回と同じ医療ニーズが生じると考えられ,DMATに関しては,これまでやってきた阪神淡路大震災タイプ(直下地震)の対応に加え,更なる対応が必要と考える.研究の方向性に関しても,今まで課題に挙がっていなかった部分を,今回の教訓をもとに進めて行く必要がある.