著者
髙橋 誠 猪俣 雅之 福井 美規子 渡辺 祐子 佐々木 佳子 鈴木 直哉 徳村 麻衣子 川原 昇平 吉嶋 抄苗 地主 隆文 青田 忠博 小林 道也
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.19-26, 2013 (Released:2018-04-02)
参考文献数
9

血清シスタチンC 濃度(CysC)は血清クレアチニン(Cre)と比較して優れた腎機能の指標である。近年、Cre 値から換算される推定クレアチニンクリアランス(CCr)や推定糸球体濾過量(eGFRcreat)に代わってCysC から換算される推定糸球体濾過量(eGFRcys)が用いられることが多くなってきている。しかしながら、多くの患者におけるこれらのパラメータの比較を行った報告は少ない。そこで本研究では、北海道消化器科病院の入院患者1163 名を対象に、eGFRcys に対してeGFRcreat ならびにCCr の比較を行うとともに、それぞれの指標間の差異の原因を明らかにし、腎機能評価に影響を及ぼす要因を特定することを目的とした。 まず、各患者の腎機能評価指標の平均値について比較したところ、CCr とeGFRcreat はほぼ同じ値であったが、eGFRcys はこれらの値よりも大きく、eGFRcys とeGFRcreat ならびにeGFRcys とCCr の差の平均は、それぞれ27.6、21.4 であった。また、eGFRcys とeGFRcreat またはCCr の差が平均値(27.6、21.4)を上回るあるいは下回る患者に分け、患者の腎機能評価に影響を及ぼす因子を多変量ロジスティック回帰分析により解析した。その結果、[eGFRcys ‐ CCr] と血清アルブミン値の間には有意な相関性が認められた。さらに、[eGFRcys ‐ eGFRcreat] では性別、肥満度ならびに血清アルブミン値に有意な関連性が認められた。以上の結果より、eGFRcreat やCCr は eGFRcys に比べて低値を示し、その程度は腎機能の評価に影響を与えるものであった。また、その差に影響を与える因子は、筋肉量ではなく、栄養状態であると考えられる。