著者
吉川 光夫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1283-1292, 1966-11-01

排卵は性ステロイドホルモンによつて抑制をうけるが, その本体については異論があり見解の一致がえられない. 筆者はそれらのもつEstrogenecityを重視し, これをその本質的な作用の一つとみなす立場を主張し Estrogenを用いてその実験的な裏付を行なつた. Estrogenの発情作用についてはDD系去勢成熟マウスを用いEstradioldipropionate, Estriol, Estriol tripropionateの比は40:2:1の割合であることを認めた. Estrogenの性腺抑制作用を検討しEstriolは従来Estrogen of vaginaといわれ, その性腺抑制作用についてはうたがわしいとみなされたが投与量の如何によつて性腺抑制作用を有することを認め, これをもとに排卵性周期を確認した婦人5名にEstriol tripropionate 5mgを月経周期の第3〜15日に投与し全例に排卵抑制を認めた. Ethinylestradiol-3 methyletherを用い, ラットにこれを連続して服用させた実験群と周期的に服用させた実験群とに分け, 卵巣の組織学的所見及び下垂体PAS陽性細胞出現率より周期的投与群が連続投与群に比べ著明な性腺抑制作用のみられぬことを認めた. 以上の結果よりEthinylestradiol-3 methyletherを人の排卵抑制には20日間服用法で, 月経周期5日目より1日当り60〜80γ服用させ, そのいずれにおいても排卵抑制が認められる結果をえた. 同時に尿中Total Gonadotropinを測定し軽度の減少を認め, 長期に亘る服用例でも重篤な性器出血その他の副作用を認めなかつた.