著者
甲斐 祥吾 青山 昌憲 吉川 公正 中島 恵子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.413-420, 2017-12-31 (Released:2019-01-02)
参考文献数
17

今回, 重度の記憶障害, 社会的行動障害を呈した若年高次脳機能障害者が, 主介護者であった母親の急逝により突如独居となったため, 多機関多職種による生活自立への支援をした。症例の障害特性, 対応方法などについては言語聴覚士である筆者が各支援者へ実際場面で説明した。独居開始直後はインフォーマルな支援を行い, 社会資源が整った後は住居の変更や問題事案発生ごとにケア会議を開催した。作話や問題行動に対して不満を助長しない対応を図り, 現実検討能力の向上に対して家計簿作成を支援した。 その結果, 地域での独居生活を4 年間継続している。高次脳機能障害者の地域支援では問題が生じた場合に迅速に支援を受けられる体制を整える必要があり, 病態認識の低い症例でも統一した声かけや対応方法をとる人的環境の構造化により独居継続が可能と示唆された。さらに, 高次脳機能障害の専門職種がヘルパーなどの直接援助者と協働することが必須と考えられた。
著者
野村 心 甲斐 祥吾 吉川 公正 中島 恵子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.347-352, 2017-09-30 (Released:2018-10-01)
参考文献数
10

高次脳機能障害における社会的行動障害に対しての治療的介入は確立していない現状であるが, 脳損傷後の行動障害に対して, 患者の気づきのレベルや抑制コントロールに合わせて行動的アプローチと認知的アプローチなどの治療の形を変えていく必要がある (三村 2009, Sohlberg ら 2001) 。しかし, 気づきの定量化は難しく治療を選択・変化させる指標は明確ではない。今回, anger burst を呈した若年症例について, コーピング活用の観点から後方視的に検討し, アプローチの比重を変化させるタイミングを考察した。その結果, 行動的アプローチ期で学習したコーピングを活用して, 怒りに直面した際の適応行動が出現し, Social Skills Training (SST) などの場面で自発的にコーピングの活用がみられた時期, つまり, 自己の不適切行動を修正しようとする意欲が生じた時期が認知的アプローチへ変化させるタイミングと考えられた。