著者
吉川 慎平
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.69-80, 2017

立野川橋梁(西武鉄道呼称:大沢開渠)は,西武池袋線ひばりヶ丘~東久留米駅間(所在地:東京都東久留米市)に位置する,径間数メートル程の複線の小橋梁(溝橋)である.この立野川橋梁の下部工は上下線で異なり,上り線はコンクリート橋台であるのに対し,下り線はレンガ積み橋台となっていることが大きな特徴である.同路線におけるレンガ積み橋台は,旧・入間川橋梁(現存)や旧・山手跨線橋(撤去)にも見られ,これらは共に,西武鉄道池袋線の前身である武蔵野鉄道武蔵野線が開業した1915(大正4)年当時に建設されたとする文献の存在から,立野川橋梁も同時期のものと推定される.また,上り線コンクリート橋台は,当該区間が複線化された1953(昭和28)年当時に建設されたものと考えられる.即ち立野川橋梁の橋台は,大正期の武蔵野鉄道による単線での開業と,昭和期の西武鉄道による複線化という2つの歴史的要素を伺い知ることができる現役の遺構と言える.しかしながら,立野川橋梁下部工の存在実態については,現場の立地的制約からほとんど知られておらず,文化財指定等もされていないのが現状である.本稿では,立野川橋梁の現状を紹介するとともに,100年前の遺構と考えられるレンガ積み橋台に注目し,同路線の全橋梁を対象とした遺構の残存状況調査の結果から,所在地である東久留米市をはじめ,沿線地域における同橋台の歴史的価値と保存の意義について考察した.