著者
高橋 信弘 吉川 治孝 泉川 桂一 石川 英明
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-15, 2017 (Released:2018-05-21)
参考文献数
65

光学顕微鏡で認識可能なほど巨大なリボソームは全ての細胞におけるタンパク質合成すなわち生存に必須である.細胞は,その増殖に必要とする総物質量・総エネルギー量の70~80%をこのリボソーム生合成のためだけに消費する.したがって,リボソーム生合成は,細胞増殖だけでなく,細胞の成長・細胞周期の制御,老化・ストレス応答,癌遺伝子や成長因子の作用にも大きく関わっている.しかし,ヒト細胞のリボソーム生合成過程が数百種類のタンパク質とRNAが関わるあまりにも複雑な過程であり,それを解析する手段が近年まで無かった.プロテオミクスの進展に伴い,タンパク質複合体の単離技術,タンパク質の大規模な同定及び定量化の技術が飛躍的に向上した.そして,ヒト細胞におけるリボソーム合成中間体の構成成分の同定とその機能解析が急速に進み,ヒト細胞リボソーム生合成経路とその制御機構が明らかになりつつ有る.本総説では,解明されつつあるヒトのリボソーム生合成過程とその制御機構について我々の知見を含めて概説したい.