- 著者
-
吉川 靖子
斎藤 澄子
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- pp.125, 2007 (Released:2007-12-01)
〈緒言〉 向精神薬は自律神経の副交感神経を抑制(抗コリン作用)することにより腸蠕動を抑制させ便秘となりやすい。特に精神科の患者は、多量の向精神薬を長期に内服しているためそのほとんどが便秘の悩みを抱えている。また向精神薬内服患者は活動量の低下や食事や水分の不足などにより便秘を助長させている。そして便秘により、イライラして精神状態が悪化したり、逆に排便コントロールがつくことで病気の回復を感じられることもある。便秘の改善は、患者の精神的安定にもつながる。便秘予防には緩下剤の使用以外に、散歩や運動などレクリエーションへの参加、適当な水分摂取、規則的な食事摂取、トイレ誘導(排便習慣をつける)などの指導が重要である。抑鬱状態の患者には、無理強いせず、気分を見ながら離床を促し軽く運動(歩行)をしたり、腹部マッサーシ゛、ツホ゛刺激等を試みることがのぞましいと考えられている。本病棟では、便秘予防に1時間程のストレッチ体操、排便習慣をつけるため午前と午後にトイレ誘導を実施してきたが、便秘に対して充分な効果がなかった。
冷たい水の刺激は、消化管の蠕動を促進させ、便容積の増加、腸内容物の通過時間短縮により、腸内圧の正常化が保たれ便秘が改善されると考えられている。本病棟で定期的に緩下剤を内服している患者は85%、時々内服している患者を含めると91%にもなる。
本研究では、向精神薬内服患者が冷水の飲水により毎日もしくは定期的に排便がある便の性状も普通便、排便後すっきり感があるかを明らかにすることを目的とする。
〈方法〉対象患者
対象患者は、尾西病院精神科に入院し、向精神薬内服患者の9名(女性8名・男性1名)とした。
1)便秘への援助方法
対象患者は1週間普段どおり生活し、その後1週間は朝起床直後に冷水(4~5ml/体重1kg)を飲水した。
2)測定方法
腹部症状と便の状態は最初の1週間は検温時に、後の1週間は冷水飲水前(6時頃)と飲水後(7時頃)に調査した。
3)便秘評価
便秘評価尺度を一部改定した日本語版CASの使用と便の回数・性状を観察して評価した。
〈結果〉1.飲水前後のCAS値の比較
症例1~9はそれぞれ飲水前8,4,4,2,3,5,5,2,1から飲水後7,5,2,4,6,4,6,2,1となり、飲水前後間に有意差は認めなかった。
2. 排便回数
症例1~9はそれぞれ飲水前1,1,1,
2,2,0,1,1,1から飲水後2,2,2,2,1,1,1,2,1となり、飲水前に比べ飲水後に排便回数が有意に増加した。
3. 便の性状
症例1~9はそれぞれ飲水前2,3,4,2,4,6,4,4,2から飲水後1,2,2,1,4,5,2,3,3となり、飲水前に比べ飲水後に硬かった便が有意に軟らかくなった。
今回便の回数・性状の変化、排便コントロールを図るため、冷水を用いて行ってみたところ排便回数は9名中5名が増え、便の性状は9名中7名が軟らかくなった。しかしCAS値はあまり変化がなかった、これは冷水飲水は便の回数・性状には効果があるがその他には効果がないことと、下痢や便秘を自覚していないことが考えられる。
向精神薬内服患者は朝起床直後に冷水を飲水することで排便回数が増え、便の性状が軟らかくなることが認められた。