著者
鈴木 るり子 名原 壽子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.105, 2010 (Released:2010-12-01)

目的】岩手県沢内村(現西和賀町)の保健・医療体制は沢内方式とよばれ、地域包括医療の先進事例として評価されている。この沢内村で展開された地域包括医療が与えた影響について検証する。 【方法】聞き取り並びに文献 【結果及び考察】沢内村は1950年代後半まで豪雪、貧困、多病・多死の村と言われていた。1957年の乳児死亡率は、全国平均の2倍と高率であった。1957年無競で村長に当選した深沢晟雄は、「自分たちで自分たちの生命を守る」ことを、住民と行政の共通課題として掲げ社会教育を基盤にした村づくりを展開した。1960年12月からの老人医療費無料化、翌年4月からは60歳、乳児の医療費無料化を実施した。その結果当時では予想できなかった全国初の乳児死亡ゼロを1962年に達成したのである。 1962年に「沢内村における地域包括医療の実施計画」が策定され、健やかに生まれる、健やかに育つ、健やかに老いる、を目標に掲げた。この目標実現に向けて保健と医療の一体化を図った包括医療の体系化は、沢内方式として、地域包括医療のモデルとなり、国内外に大きな影響を与えた。 沢内で展開された地域包括医療は行政の責任で実施されたことに特徴はあるが、その根底にあった豪雪、貧困、多病・多死の悪条件を住民とともに克服し、沢内村に住むための環境を整えていく実践は、住民の意識を変えた。まさにプライマリーヘルスケア、ヘルスプロモーションの実践であった。
著者
高山 義浩 西島 健 小林 智子 小澤 幸子 岡田 邦彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.66, 2007

【緒言】佐久総合病院は長野県東部の農村地域に位置するエイズ治療拠点病院である。1986年から2006年までに85人の新規HIV感染者の受診があったが、とくに最近5年間では39人と急速に増大傾向となっている。そもそも長野県は新規HIV感染が人口10万人あたり1.26人/年(2002-2006年)であり、これは東京都の3.02人/年に次いで第2位と重点的に対策すべき地域に国により指定されている。ところが、佐久総合病院の診療圏については人口10万人あたり3.90人/年となることから、実は長野県のなかでも都市部ではなく、とりわけ農村部においてHIV感染が拡大している実態が浮き彫りとなる。こうした状況を受けて、長野県では『信州ストップエイズ作戦』が2006年より展開しており、県民へのエイズ危機への周知とHIV検査への誘導が一定の成果を収めつつある。しかし、全県的なHIV予防と診療の取り組みにもかかわらず、そのフレームによって救われない人々がいる。それは、外国人、とくに無資格滞在外国人である。農村地域におけるHIV感染の拡大を止めるためには、日本人のみならず外国人へも公平に保健医療サービスを提供してゆくことが重要であると我々は考えている。第1報では、まず具体的症例からその実態を紹介する。<BR>【症例】42歳、タイ人男性。約10年前に来日し、肉体労働に従事している無資格滞在外国人。2005年10月より倦怠感と咳を自覚。11月中旬、近医受診したところ、肺に結節影を指摘され、結核を疑われると同時にHIV抗体検査を施行された。同陽性のため、翌22日、当院紹介受診となる。精査により、脳結核腫を含む播種性結核により発症したエイズ(CD4 43/μL)と診断し、4剤による抗結核療法を開始した。約3ヶ月の治療経過で結核は軽快したが、抗HIV療法を含むこれ以上の治療継続は医療費の面からも困難と判断し、2006年4月に現地医療機関への紹介状を持たせてタイへ帰国させた。しかし、現地では医療機関を受診しないまま経過しており、東北部出身の村において2007年1月に永眠されたことを確認した。<BR>【考察】佐久総合病院の診療圏には、長野オリンピックをきっかけとした出稼ぎ目的の流入により無資格滞在の無保険外国人が多く、最近は親族不明の経済困窮者が目立つようになってきた。こうした人々のなかには、HIV感染者もいるが、エイズ発症ぎりぎりまで受診行動につながらない者が多い。本症例もまた、医学的・社会的に困難なエイズ発症例であったが、佐久総合病院で結核を含む日和見感染症の急性期治療をおこなった。その後は帰国支援により治療継続を期待したが、現地の医療につなげることができなかった。本症例のように、エイズ発症で医療機関を受診しても結局は死亡させてしまう経験を繰り返していると、「病院へ行ってもエイズは死ぬ病気」というイメージを外国人らに定着させてしまい、さらに受診行動を鈍くしてしまう結果となる。これは、本人の救命のみならず、感染拡大防止のための介入チャンスをも失わせるものである。よって、さらに現地の医療事情を把握し、現地の適切な医療機関、また経験豊富なNGOと密に連携してゆくことが求められている。しかし同時に、増加している無資格滞在外国人の健康問題について、国もしくは自治体行政による包括的対応も期待したい。
著者
雨宮 美和子 安達 亙 唐澤 忠宏 柳澤 明美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.93, 2009 (Released:2010-03-19)

〈はじめに〉疥癬患者と接触した医療スタッフに対する予 防的治療の是非およびその方法はいまだ確立されていな い。今回,角化型疥癬で入院中の患者に接触した看護ス タッフに,予防的治療の目的でイベルメクチンを投与した ためその結果を報告する。 〈疥癬症例〉87歳,男性。心不全の診断で老人保健施設よ り当院に緊急入院。入院1ヶ月前より上半身に皮疹があ り,皮脂欠乏性皮膚炎と診断され,軟膏を塗布されてい た。入院8日目に当院皮膚科で角化型疥癬と診断された。 体幹に浸出液を伴う痂皮化した発疹を多数認め,イベルメ クチンの投与と安息香酸ベンジルローションの塗布がなさ れ,7週間後に治癒した。 〈看護スタッフへの予防的治療〉角化型疥癬と診断された 直後より,疥癬患者に対する感染予防策を行うとともに, 本例の看護に携わった看護師9名中8名にクロタミトンの 全身塗布を,皮膚炎を有する2名の希望者にイベルメクチ ンの内服を行った。クロタミトン全身塗布の煩雑性とその 効果の不確実性,イベルメクチンの効果の確実性とその安 全性より,最終的に看護師9名全員にイベルメクチンの予 防的内服を行った。イベルメクチン内服の4か月後までに 疥癬の感染は確認されなかった。また,本治療に関連する 副作用は見られなかった。 〈結論〉入院8日目に角化型疥癬と診断された患者を看護 したスタッフ全員に,疥癬感染の予防的治療としてイベル メクチンを投与した。本治療後,看護スタッフへの感染は 確認されず,特別な副作用も認められなかった。以上よ り,イベルメクチン投与は疥癬患者接触者への予防的治療 として有用である可能性が高い。
著者
竹中 理恵 伊東 尚美 安 邦子 加藤 久美子 峯田 祐次 阿部 菜穂子 岩谷 さゆり 秋野 良子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.71, 2006

<b><緒言></b>当病棟では、せん妄症状の患者に対し、チューブ類の自己抜去や転倒を防ぐために、やむを得ず睡眠剤の投与や抑制を行い危険行動を抑えているのが現状であった。そこで、アロマテラピーの導入で、せん妄症状の患者に対しても少ない症例ではあるが改善が見られたためここに報告する。<BR><b><方法></b><BR>1.対象 夜間せん妄症状が見られた当病棟入院患者で、今回の研究を行うことに家族の了承を得た患者3名<BR>2.方法<BR>1)開始時期<BR> 三瓶氏らのアセスメント表を参考に、せん妄スケール表(以下スケール表とする)を作成し2段階に該当した時点でアロマテラピーを開始する。<BR>2)アロマテラピーの施行方法<BR> 精油をコットンに垂らし枕元に置く。<BR> (1)開始時:リラックス効果のあるラベンダーを使用<BR> (2)開始4時間後から起床時:鎮静効果と催眠作用のあるカモミールを使用<BR> (3)開始が0時以降の場合は2種類を混合し使用<BR>3.データ収集方法<BR> スケールの点数からアロマテラピー使用後のせん妄症状の変化を比較する。<BR>4.倫理的配慮<BR> 同意書に、知る権利・医療における自己決定権・害を与えないこと・プライバシーの保護について記載し、家族に対して説明する。<BR><b><結果></b>スケール点数を比較したところ、全ての症例において開始4時間後に点数の下降が見られた。(資料1参照)また、開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒した。<BR><b><考察></b>環境の変化に不安、チューブ類や安静などによる拘束感、苦痛からくる不眠や疲労に関連し、せん妄症状が出現した患者3名に施行した。アロマテラピー使用後、3名とも「いい臭いがする」「落ち着く」と言い入眠につながった。吉田は「香りの刺激は嗅覚によって感覚されるが、その神経ルートは他の感覚以上に情動脳系に直結している。」<sup>1)</SUP>と述べている。このことから、ラベンダー・カモミールの香りはリラックス効果が高く、ストレスに由来する各種障害に有効と言われているように、鎮痛・安眠効果が得られ入眠を促すことができたと考えられる。<BR> また、使用開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒し「すっきり眠れた」と話された。深夜問わず睡眠剤を使用した場合その効果が日中まで遷延するが、アロマテラピーのもたらす効果で自然な入眠が得られ、崩れた入眠パターンを取り戻す機会になったと考える。<BR><結論>せん妄患者にもアロマテラピーは、自然な入眠を促すことができ、睡眠パターンを取り戻す介入方法として効果が期待できる。<BR><b><引用文献></b><BR>1)吉田倫幸:香りとリラクセーション,現代のエスプリ,P58,1993<BR><b><参考文献></b><BR>1)三瓶智美:クリティカルケアで不穏せん妄をどうアセスメントするか,看護技術,vol 51 No1,2005<BR>
著者
福村 浩一 中原 毅 小串 美由紀 倉持 龍彦 関 貴弘 堀井 京子 寺田 紀子 上野 信一 松井 則明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.137, 2008

【はじめに】近年、携帯電話や電磁調理器具などの急速な普及により、それらから発せられる電磁波による健康への影響を不安視する声が聞かれる。透析装置においても電磁波を発する装置であり、透析患者は4~5時間装置の側での治療を余儀なくされる事から、透析中における装置からの電磁波の発生強度を測定し、その安全性を検討した。<BR>【目的】透析装置から出る電磁波を測定し、その数値からICNIRPの電波防護指針をもとに透析中の安全性を検討する。<BR>【方法】当院で用いられている透析装置(DCS-72、DCS-26、DCS-27、DBB-26、DBG-02、TR-3000M)の待機時(プライミング終了後)と作動時(透析中)に放出される電磁波の強度を、アルファラボ社製トリフィールドメーター100XEを用いて測定し、また患者の透析時における電磁波の暴露量(頭部、腹部、下肢)からその安全性を比較検討した。電磁波の測定方法は透析装置のディスプレイ画面より0cmから10cm間隔で電磁波の強度を測定し、最終的に測定表示が0になるまでの距離を測定した。<BR>【結果】DCS-72では待機時が、0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.3mで0mGとなった。透析時では0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.5mで0mGとなった。DCS-26では待機時が0cmで50mG、10cmで6mG、50cmで0mGとなった。透析時では0cmで100mG以上、10cmで50mG、90cmで0mGとなった。DBB-26、DBG-02ともに透析時では0cmで60mGと高い値を示したが、10cmでの測定値は一桁を示し、他の装置では0cmでも待機、透析時ともに低値を示し、待機時で30cm、透析時で40~60cmで0mGとなった。又、患者の頭部、腹部、下肢で透析時に受ける電磁波の強度を測定した結果、頭部で0~2mG、腹部、下肢では0~0.5mGであった。<BR>【考察】測定の結果からICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた国際ガイドライン値(安全値4mG未満、許容値16mG未満)に当て嵌めると医療従事者が通常の操作をするパネルからの位置では、測定結果から特に問題はないと思われ、透析中における患者についても安全性をクリアしていると思われた。<BR>【まとめ】電磁波については、生体に影響が有る、無いの二極論があるが、実際に「電磁波過敏症」と呼ばれる諸症状がある事も事実であり、長時間装置の側で治療を受ける透析患者の電磁波の暴露量は重要であり、科学的根拠がなくても事前回避の措置を定めるという原則の考えが重要であると考えられた。
著者
増子 寛子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.215, 2007 (Released:2007-12-01)

<はじめに>マゴットセラピーは治癒しにくい四肢潰瘍に対し無菌マゴット(ハエ幼虫・ウジ)を用い治癒を促す治療方法であり今回、当整形外科においてはじめてマゴットセラピーを受けた患者の心理面の変化を振り返り精神的援助のあり方を考える機会を得たので報告する。 <事例> 73歳 男性 職業:無職 一人暮らし。平成18年12月8日駅で転倒し左脛骨腓骨骨折で入院。平成9年より糖尿病の既往あり。12月14日非観血的骨接合術施行されるも、術後創感染見られ、下肢切断が必要な状態となった。 本人より「足は切りたくない」と要望あり、本人と息子の同意のもと、平成19年1月26日より1クール3週間のマゴットセラピーを2クール施行された。 <心理面での変化の過程>一1クール目、いざ治療が開始されると創部からの悪臭もあり、食欲低下・嘔吐・仮面様顔貌と無口・下肢に対する否定的な言葉・治療の部分を見ようとしない等の心身両面の変化を来たした。治療が終了してから一旦症状が消失したが、7週間後、再度治療を行うと告げられた時点で再び嘔吐、食欲低下等が現れた。 看護介入としては、患者と頻繁に接触して肯定的な態度で対応し、その治療の経過及び予後に対する感情を分かち合い、話し合うようにした。又、創状態が徐々に良くなっていることを細かく伝えるとともに励ますことに努めた。プライバシー保護の為、マゴット使用中は個室対応とした。臭気対策には、部屋の換気回数を多くし、芳香剤を使用した。2クール目にはリハビリ・車椅子散歩・入浴等の介助等積極的に行った。これらにより、2クール目の途中より、徐々に食事量が増加し否定的な言葉が聞かれなくなり表情も和らぎ、処置に対しても協力的になり治療部分に目を向けたり、脱走したマゴットを直視し、つまむ場面も見られるようになった。 <考察>今回の事例は、マゴットセラピーによりボディイメージの混乱を来たし一時的にショックを受け、否定、無関心、抑うつ状態を経て治療終了までに自己のボディイメージの修正が出来たと考える。その経過において看護師自身初めての経験であり、計画的に十分なケアが出来なかった部分もあったが、患者の感情や思いを受容し、認め、励まし、暖かく寄り添う看護の基本的な態度が適応過程での助けになったのではないかと考える。 マゴットセラピー施行患者の看護においては、このよう心理的な反応があることも予測し、感情の変化の過程を注意深く観察し、その過程に応じた有効な援助を行なう必要があることを学んだ。今後も安心して治療を行ってもらえるための有効な援助を追及していきたい。
著者
遠藤 信英 度会 正人 堀部 秀樹
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.311, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例>18歳女性。<既往歴>15歳の頃より近医心療内科に自ら通院。2回の自殺企図の既往があった。<現病歴>2006年4月9日、インターネットにてジギタリスの毒性を知り、花屋でジギタリスの鉢植えを購入し、その葉20枚を煮て、煮汁を服用した。服用直後から嘔気があり嘔吐を続け、症状が持続するため翌日当院救急外来を受診した。受診時身体所見は、意識清明・血圧99/59mmHg・脈拍数55回/分・経皮的酸素飽和度97%であった。心電図では_II_・_III_・aVfとV4-6に盆状ST低下を認め、2:1房室ブロックを中心に、WenckebachやMobitz2型2度ブロックといった多彩な不整脈を呈していたため入院管理とした。<入院後経過>ジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ128ng/ml,5.33ng/mlと正常値上限の5倍程度まで著明に上昇していたが、心エコー検査にて心機能は正常で心不全兆候はなく、肝腎機能は良好であり、モニター心電図にてlong pauseなどの危険な兆候が見られなかったことから保存的治療で経過を見ることとした。入院中は心電図モニターによる監視下のもと、補液治療を行った。入院時から2:1房室ブロックは持続していたが、特に危険な不整脈を誘発することなく経過し、第4病日頃から、それまで2:1房室ブロックで50台ほどの脈拍数であったものが1:1でつながり始めるようになった。第7病日頃には伝導が2:1となることはなくなり、1:1伝導で脈拍数が100ほどの洞性頻脈になった。その後は脈拍数も70ほどへ低下し、嘔気もとれ経口摂取も十分可能になったため第10病日退院した。第7病日の時点でジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ38.4ng/ml,1.75ng/mlであった。<まとめ>自殺企図にてジギタリスの葉を大量摂取した一例を経験した。本症例では不整脈の増悪・急変に備えペースメーカーなどの緊急処置も考慮していたが、健康若年者であったことから良好な転帰をとったと考えられる。
著者
若松 祐三 中村 雄一 重信 隆彰 石山 重行 草野 健 前之原 茂穂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.314, 2008 (Released:2009-02-04)

〈緒言〉昨今の食事の欧米化、運動不足に伴い肥満人口が増加している。体脂肪率、BMIは肥満の判定に有効な手段だが、メタボリックシンドロームの病態基盤である内臓脂肪量評価との関係性を調べることにより、当センター検診CTにおける内臓脂肪量評価の基準(内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量100cm2未満 正常、100cm2以上150cm2未満 多い、150cm2以上 非常に多い)の妥当性を確認する。なお当センターでは平成19年1月よりMS診断の補助としてCTによる内臓脂肪測定を開始している。今回平成19年4月より1年間おける受診者の測定結果と体脂肪率、BMI、との関係について検討した。対象及び方法)平成19度人間ドック受診者11712名中 CTによる内臓脂肪測定を行った1631名(男性:1042名 女性:589名)を対象とした。使用機器は東芝製Asteion4、内蔵脂肪解析ソフトはN2システム Fat Scan、TANITA 身長体重計を使用した。臍の高さ、呼気時のCT撮影、Fat Scanで処理したCT断面図により腹壁の筋肉を境にして外側を皮下脂肪、内側を内臓脂肪とした。内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量が100cm2未満を_I_群、100cm2以上150cm2未満を_II_群、150cm2以上を_III_群とし、その3つの群と、体脂肪率、BMIとの関係を調べ、内臓脂肪量の至適基準を検討する。結果)内臓脂肪量をGold standardとしてBMI、体脂肪率を検討した。BMI正常者の内臓脂肪量の平均は82.148cm2標準偏差43.007、またBMI異常者では平均136.168cm2標準偏差55.560となった。体脂肪率正常者の内臓脂肪量の平均は男性102.871cm2標準偏差47.771、女性は54.377cm2 標準偏差29.894となった。体脂肪率異常者の男性の平均は144.199cm2 標準偏差57.423、女性は平均97.978cm2 標準偏差43.576となった。さらに男性の体脂肪率25%未満、女性の体脂肪率30%未満を体脂肪率正常者、それ以上を体脂肪率異常者とした場合、男性の体脂肪率正常者は_I_、_II_、_III_群それぞれ82.7%、61.4%、43.7%となり、女性の体脂肪率正常者はそれぞれ63.4%、16.3%、13.5%となっている。_I_群の場合でも体脂肪率異常者が存在し、また男性の内臓脂肪量100cm2以上の_II_,_III_群にも体脂肪率正常者が存在している。次に内臓脂肪量各群とBMIとの関係について検討した。BMI25未満を正常者、25以上を異常者とした場合、正常者は_I_群では79.7%で_II_群、_III_群になるとそれぞれ48.7%、26.3%と減少傾向にある。これは皮下脂肪などの全構成要素か含まれた為だと考えられる。 BMI、体脂肪率は、肥満の度合いを知る為の簡便な方法ではあるが、必ずしも内臓脂肪量を正確に反映してるとは言えない。内臓脂肪量の正確な測定法としては、CTがもっとも適していると思われる。さらにメタボリックシンドロームとの関連も検討して報告する。
著者
小森 佑美 笹井 由利子 須原 伸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.178, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。【研究方法】1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。【研究結果および考察】眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。【結論】高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
著者
岡本 歩 武山 直治 大沼 俊和 小林 加代子 上木 美智子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.255, 2006

<b>〈緒言〉</B>検診効果を高めるためには、検診及び精検受診率の向上を図り、検診及び精検機関の精度を一定以上に維持する必要がある。そのためには地域の関係機関が連携し取り組む必要がある。旧高山市住民の胃がん検診は、H11より当検診センターで実施しているが、胃がん発見率が徐々に低下傾向にあった。そこで関係機関に胃がん検診検討会への参加を呼びかけ、共にこの地域における胃がん検診の現状を分析したので報告する。<BR><b>〈検討会開催方法〉</B>内容:(1)飛騨地域胃がん登録状況(2)検診と精度管理方法、(3)検診実績、(4)検診・精検受診勧奨の方法、(5)X線写真による症例説明を、各機関が発表し意見交換した。参加機関:飛騨地域保健所、高山市保健センター。精検医療機関(市内のT病院、開業医、当院)。<BR><b>〈結果〉</B>1.胃がん登録状況の分析:表1、2より飛騨地域の胃がん罹患率は全国とほぼ同じであるが、死亡率はやや高く近年上昇している。有効な検診に向けて取り組む必要がある。<BR>2.検診結果の分析:要精検率は年々低下し、消化器集検全国集計(H15)の10.8%と比較しても低い。また胃がん発見率はH14より低下傾向で全国集計の0.15%を下回っていた(表3)。この要因の一つに、初回受診率が低いことが考えられた。検診対象者の拡大に向けて申し込み方法の検討や啓蒙活動が必要である。<BR>3.精検精度の分析:(1)精検方法はほとんどが胃カメラであったがUGIの実施もあった(図1)。精検としてUGIを実施してよいか討論した。その結果、精検の場合は検診よりきれいな写真を撮る必要があるとの意見が出された。この意見を反映し、市で配布する「胃精密検査実施医療機関一覧」は、きちんと精検を行える機関であるか検討する方向性が出された。(2)精検機関の割合は開業医が半数、残り半数が当院とT病院であった(図2)。また胃がん発見割合は、当院が半数以上、開業医3割、T病院1割以下であった(図3)。精検実施数に比例した胃がん発見数が求められ、役割を果たすために、精度を高める努力が必要である。数値より分析することで問題が明確化し方向性を見出すことができた。今回の検討会により、関係機関が胃がん検診の現状を認識し問題点を共有することができた。この会を継続し、有効な胃がん検診の実施に向けて取り組みたい。
著者
四戸 隆基 佐藤 正夫 馬場 岳士 角田 恒
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1, 2007

【目的】高齢者大腿骨近位部骨折において医療費高騰の要因とされる「社会的入院」の実態を知る.【対象】2003~2005年に加療した60歳以上の大腿骨近位部骨折症例のうち解析可能であった75例(男24,女51例)を対象とした.年齢は平均81.2歳(60~97歳).骨折型の内訳は頚部骨折39例,転子部骨折36例.治療法は保存治療1例,人工骨頭置換29例,骨接合(頚部骨折)11例,骨接合(compression hip screw,以下CHS)21例,骨接合(ネイルタイプ)13例.在院日数は平均57.3日(15~163日).【方法】主治医より本人,家族に退院勧告した日以降の入院日数を「社会的入院日数」と定義し,社会的入院日数が2週間を越える「長期群」(46例),2週間以内の「標準群」(29例)に群別し各項目を比較した.【結果】1)年齢:長期群81.7歳(60~97歳),標準群83.4歳(64~94歳).有意な差は認めず.2)歩行能力:当施設のGrade分類を用い歩行能力をGrade1からGrade4までの4段階に分けた.退院時の歩行能力は,長期群でGrade1が21例(45.7%),Grade2が11例(23.9%),Grade3が14例(30.4%).標準群でGrade1が11例(37.9%)Grade2が4例(13.8%)Grade3が13例(44.9%),Grade4が1例(3.4%).長期群で退院時歩行能力が高い傾向にあった.3)治療:長期群は人工骨頭15例(32.6%),CHS15例(32.6%),ネイル9例(19.6%),骨接合(内側)7例(15.2%),標準群は人工骨頭14例(48.3%),CHS7例(24.1%),ネイル4例(13.8%),骨接合(内側)3例(10.3%),保存治療1例(3.4%)で治療されていた.治療による差は明らかでなかった.3)退院後の生活環境:長期群で,退院後自宅生活者35例(76.1%),施設入所11例(23.9%).標準群で自宅16例(55.2%),施設13例(44.8%).長期群で自宅退院が多かった.4)社会的入院日数と在院日数:社会的入院日数と在院日数は有意な強い正の相関を示した.5)社会的入院の理由:長期群46例の退院できない主因は, 疼痛の残存と日常生活動作の不安が入院継続希望の理由である「本人の希望」が15例(32.6%), 経済的な理由や家族関係の問題を理由とした「家族の希望」が9例(19.6%), 手すり増設や段差解消等の「自宅整備のため」12例(26.1%),「施設の空き待ち」10例(21.7%).であった.中には,永久的な入院を家族が希望する例や,本人と家族の施設入所に対する意志の相違が著しく紛糾した症例もあった.【考察】当院においては,高齢者の大腿骨近位部骨折症例の在院日数は社会的入院により長期化していた.社会的入院の長期化の要因としては,実際の歩行能力や治療法,骨折型等の純粋な医学的問題よりも本人や家族の意識の問題や経済的事情,後方施設との連携の方がより重要であった.入院が長期化することは国民医療費の増大に繋がり,病床稼働率の低下に伴う病院経営の悪化や空床不足による地域医療への悪影響といった弊害をも生み出す.社会的入院長期化の改善のため医療スタッフが適切な治療や効果的なリハビリ等の「狭義の医療」に力を注ぐのは当然だが,ソーシャルワーカーと本人および家族との相互理解を深め後方施設との風通しを良くするなど「広義の医療」を実践するべく大きな視野を持つ事が望ましい.また経済的な問題も決して少なくない.介護保険の適用や診療報酬の問題など行政の対応に依存する部分については,現場の状況を最もよく知る我々が声を発信し理解を求めていくことが必要であると改めて認識した.
著者
長 純一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.75, 2008

〈緒言〉<BR> 長野県は男性1位、女性3位と長寿ながら、老人医療費が全国平均の約8割と最低であり、見習うべきモデルとされてきた。97年には厚生省が国保中央会に委託し、全国の統計調査と長野の調査がおこなわれ「市町村における医療費の背景要因に関する報告書」にまとめられた。報告書を一般書にした「PPKのすすめ」(水野肇・青山英康編・紀伊国屋書店)でも分析されているが、病床数など医療供給体制以上に医療費が抑制されているのが最大の特徴である。その要因分析では、ベッド数が少ない・平均在院日数が短い・在宅死が多い・保健師の数が多い・などから、地域医療が充実している・医療従事者の専門職としての自立性が高いなどがあげられている。しかしこの報告書は統計上の数値のみに注目し、いわば現象論のみの分析で、長野に特徴的な活動の歴史的社会的分析が科欠けている。またここ数年長野においても、『医療崩壊』とも表現される状況は深刻になっており、上記の報告書で分析された時点から大きく状況が変化している。これらの点をふまえ、新しい『健康長寿・低医療費の長野』の解釈を提示する。<BR>〈方法〉<BR> 97年の報告書と書籍を再検証すると共に、そこで取り上げられなかった長野県の医療特性を確認する。現状と医療史をたどると『厚生連農村医療』と『国保地域医療』が長野県医療の特徴と考えられるため、この活動を文献等から検証する。特に報告書等で低医療費の要因とされ『長野県は在宅医療・地域医療が充実しており、在宅死が多く、そのために医療費が低い』との在宅医療・死の神話ついて再検証する。<BR>〈結果〉<BR> 医療供給体制では民間医療機関が全国45位と少なく、県立や国立も少なく、一方公的医療機関(厚生連が病床数で18%強)が多い。これは厚生連が故若月俊一氏の下、戦後まもなくの時期に殆ど県立などに移管しなかったためと考えられる。また国保医療機関も多く、全国の国保地域医療を牽引してきた。厚生連と国保の活動は、保健活動や生活環境や食生活の改善等、病院の中での治療医学だけではなく、地域活動・予防医学を重視するなどの点で共通点を持つ。このような地域・患者にとって必要な活動は不採算でも積極的に取り組んできた事が、低医療費で健康長寿に貢献した可能性が高い。この姿勢と、それを公的及び公立医療機関が提供してきた事から、長野では高邁な理念のもと医療を『社会的共通資本』として捉え、実践してきた医療者の姿が読み取れる。この結果の一つが、高い在宅死率であったと考えられるが、近年極端に減少している。92年には32.4%と全国平均19.9%を大きく上回って全国一であったが、06年には13.7%と全国の12.2%と大差がないところまで低下した。特に94年以降極端に低下している。これは医療の機能分けが進められ、診療所が在宅医療を担い、一方で特に地方病院を窮地に追いやった医療政策が展開された時期に一致する。長野の在宅医療は実は国の描くような診療所ではなく、地域医療を実践する病院が不採算でも支えていたことが推定される。病院に厳しい医療情勢の上、在宅は診療所という方針により、長野の在宅死は激減した可能性が高い。このように長野を見習えと言ってきた国により、長野の医療神話は崩壊の危機に瀕している可能性が高く、再度長野の医療特性を検証し、歴史を踏まえた上で実情にあった医療政策を提言する必要がある。
著者
矢野 裕基 鈴木 悠子 安本 和正 原田 和彦 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.68, 2008

<B>〈緒言〉</B>近年地方の医療を取り巻く問題に患者の医療費負担増・地域間格差の拡大などがある。今回,医療福祉制度面での地域間格差を検証することと医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)や病院が用いる制度改善の最も有効な手段を検討することを目的に,全国の市町村が実施する重度心身障害者医療費助成制度(以下,助成制度)の現状とその改善手段についてのアンケート調査を2007年11月に実施した。その結果,今後検討するべき課題が明確となったので報告する。<BR><B>〈調査方法〉</B>1,対象 全国120の厚生連病院MSW 2,調査方法 郵送によるアンケート調査 設問(1)から(7)助成制度の内容,設問(8)から(13)制度改善の手段<BR><B>〈結果〉</B>76病院(病院所在地14町56市)より回答(回収率63%)<BR>(1)対象障害の範囲<BR> 1)身体障害 「2級まで対象」 23(33%),「3級まで対象」 38(54%),「心臓や肺,腎臓などの内部障害について対象拡大あり」 20(29%) 2)知的障害 「A判定(IQ35以下)」 38(54%) 3)複合障害その他の対象 「対象範囲あり」 23(32%)<BR>(2)助成方法 「現物給付」 45(64%)<BR>(3)所得制限 「あり」 53(76%)<BR>(4)年齢制限 「あり」 6(9%)<BR>(5)自己負担 「あり」 36(52%)<BR>(6)助成の時効 「あり」 40(63%)〈BR> 時効期限 最短6ヶ月 1 最長5年 4 最多2年 9<BR>(7)助成制度の問題 「あり」 40(68%)<BR> 助成制度のどこが問題か(複数回答)<BR> 「対象障害の範囲」 28(34%)<BR> 「所得制限」 18(22%)<BR> 「助成方法」 17(21%)<BR>(8)MSWの問題解決の実践 「実践あり」 26(63%)<BR> 実際にMSWが多く用いた手段(複数回答)<BR> 「行政担当との直接交渉」 18(32%)<BR> 「個別ケース援助」 17(30%)<BR>(9)MSWの採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の患者団体との連携」 9(17%)<BR> 「行政担当との直接交渉」 8(15%)<BR> 「地域の福祉関係者との連携」 7(13%)<BR>(10)病院の問題解決の実践 「実践あり」 8(11%)<BR> 実際に病院が行った手段(複数回答)<BR> 「行政機関への直接交渉」 5(41%)<BR>(11)病院の採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の医療関係団体との連携」 21(39%)<BR> 「行政機関への直接交渉」 11(20%)<BR>(12)各県MSW協会の実践 「実践あり」 4(6%)<BR>(13)各県MSW協会の採る最も有効と思う手段<BR> 「制度改正の提言」 19(37%)<BR><B>〈考察〉</B>今回の結果から,全国の助成制度に地域間格差が存在することは明らかである。制度に問題があると感じているMSWも多く,何らかの制度改善に向けたアクションが必要である。しかし,実際にはMSWや病院は制度を改善するために最も有効と思う手段を実践できていない。何故なのか,その理由を探る必要がある。実践を難しくしている要素を明らかにし,今後は地域の患者団体や医療・福祉の関係団体と連携を強化し,共に制度改善を図ることが必要である。各県MSW協会には制度改正の提言など目に見える活動が求められている。各地域の制度はそれぞれの地域の病院や団体が行動を起こさなければ改善は実現しないものと考える。<BR>
著者
堀木 裕司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.132, 2005 (Released:2005-11-22)

JA三重厚生連では、従来紙によりヒヤリ・ハット情報を収集してきた。その後、表計算ソフトを利用して集計を行ってきたが、病院全体で情報を収集し、データを利用するにはかなりな手間を要し、分析も出来ていなかった。厚生労働省より特定医療機関に対し、リスク情報の提出が義務付けられ、提出様式やコードについての定義付けがなされた。当会においても、将来この報告書様式に対応するためと、病院内で収集されたデータを分析するため、Webシステムを用いてリスク管理システムを作成することになった。 Webシステムを用いることにより、入力が容易になり、データを収集しやすくなった。またこれらのデータがデータベース化されるため、後利用が可能になったので、その事例を紹介する。平成16夏、病院見学にてリスクレポートシステムが有効に運用されているのを知り、当会にても構築をしていく必要にせまられた。メーカからもリスク管理システムは販売されているが、当会7病院に導入するにはかなり高額になること、当会の求めるものとは方向を異にすることより、自前での開発を行なうことになった。構築には、当会にて構想を練り、プロトタイプを作成し、各病院に試験的に配布し、その後3か月程度の試用期間を経て、平成17年4月より本格運用を開始している。導入当初は、サーバの設定より入力途中のデータが消えてしまう等のトラブルもあったが、一つ一つ問題を解決し、看護師からのクレームも殆ど出なくなった。運用としては、看護師長が入力するようになっているが、いずれ発見者が自由に入力する形となっている。緊急性を要する情報に関しては、メールシステムを利用して、安全管理室や院長等に情報が飛ぶようになっている。内容の評価については、入力された情報を、上長や部長が閲覧し、評価や対策のコメントを記入出来るようになっている。分析に関しては、各項目にて分析したり、Excelに出力することが可能となっている。その他、セキュリティに関しては、IDとパスワードにて他部門の閲覧を出来ないようにしている。またIPアドレスにてアクセス制限を行っている。このように、安全管理システムにSEが積極的に関わることにより、使いやすいシステムを構築できるとともに、比較的安価にシステムを導入できた。今後は、このシステムの不備な点を随時改良し、リスクの要因を排除していくことに努めていきたい。
著者
黒崎 瞳 小島 慶子 山本 貴子 山口 佳奈江 関田 洋子 田内川 明美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.301, 2011

<はじめに><BR>脳疾患患者は呼吸筋の麻痺や委縮・咳嗽反射の低下、長期臥床により肺合併症発生リスクが高くなる。<BR>A病棟は2010年1年間で脳疾患患者のうち意識レベルJCS_III_桁・挿管患者の40%が肺合併症を発症していた。そこで、スタッフの呼吸ケアに対する意識の向上が必要だと感じ勉強会・チェックリスト表を用いた結果、呼吸ケアに対する意識向上につながったので報告する。<BR><研究方法><BR>1 期間:2011年1月~4月<BR>2 対象者:病棟看護師23名<BR>3 方法:<BR>(1)呼吸理学療法の勉強会<BR>(2)呼吸ケアチェックリストの作成・活用<BR>(3)勉強会・チェックリスト使用前後でのアンケート調査<BR><倫理的配慮><BR>アンケートは個人が特定できないように無記名とし、知りえた情報は研究以外に使用しないことを説明した。<BR><結果><BR>勉強会への出席率は52%。欠席したスタッフにも勉強会のプリントを配布した。<BR>呼吸ケアはチェックリストを用い清潔ケア時・検温時に観察した。<BR>アンケート回収率は勉強会前後ともに95%であり、チェックリスト使用率は78%だった。<BR>アンケート結果では背部の聴診・正しい部位を聴取しているスタッフは勉強会前0%、勉強会後95%であった。<BR>またチェックリスト活用後はステートを持ち歩くようになったと100%回答し、チェックリスト以外でも肺音を聞くようになったスタッフ90%であった。<BR><考察><BR>勉強会後に背部の聴診・正しい部位を聴取しているスタッフが増加した事から、実施不十分だった背景には知識不足や意識が低かった事、が考えられる。また、一人では体動不能な患者の背部聴取が困難であったが2人で実施することで統一が図れた。このことから多忙な業務の中でも日常業務の1つとして根拠をもって呼吸ケア実施することで、意識付けにつながったと考えられる。<BR><まとめ><BR>肺ケアに対する看護師の意識向上には、観察やケアの根拠や必要性を理解し、日常業務の中にとりこみ継続していく事が有効である。
著者
張 自寛
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.3, 2010

はじめに中国は総人口のうち8億人が農民で占め、改革開放以来30年間、一貫して「三農(農民、農村、農業)」問題を最も重視し、農村の改革と発展を推進し、農村地域に大きな変化をもたらしてきた。1)人民公社を廃止し、農家が農業経営を請負う体制を確立した。2)二千年以上存続してきた農業税を廃止し、農家に食糧生産補助金を支給し、農民の負担を大きく軽減した。3)食糧生産は順調に伸び、農産物の供給が豊かになり、13億人口の食糧問題を中国独自の力で解決した。4)農村地域(郷鎮)に企業が続出し、農村の労働力は都市へ大規模に移動・就業し、億単位の農民が産業労働力の重要な構成部分となった。5)農民の生活は改善し、貧困から抜け出して小康状態までに転換しつつある。<BR><BR>中国農村経済社会の発展改革開放以来30年間、中国農村経済の発展は速かったが、2003年におけるSARSとの闘いの過程で多くの啓発を得た。その中で最も重要なことは、経済社会の発展が一方に偏ることなく全般にわたって計画し、経済社会の発展に見られるアンバランスの問題解決を早めなければならない。ここ数年、中国は農村経済を発展させると同時に、社会事業の発展および国民の生活改善をより一層重視し、以下のような民意が得られた幾つかの重要な事業を実施してきた。<BR> 1)2005年から9年制義務教育は全て無料とし、9年制義務教育に対する経費保障システムを国の財政によって賄い、授業料や雑費の免除と教科書の無料提供、同時に貧困家庭の寄宿生に対する生活補助政策を実施した。また経済社会発展に伴う技術者の需要に適応するため、中・高度の技術教育を大いに発展し、農村の貧困家庭出身者および農業を専門とする学生については無料化を図る。これらの事業は中国の教育体制において歴史的変革である。<BR>2)2003年から新型農村合作医療制度が創設された。先ず一人当たりの保険料が年間30元からスタートし、現在は120元になった。保険料の内訳は、国と地方政府の財政補助が2/3を占め、個人は1/3を納める。2009年末現在、加入者総数は8.15億人で、基本的には農村人口の全てをカバーすることができた。この制度は重病への保障を主とし、特に非感染性疾患、例えば、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患等に対して重点的に保障する。農業税の廃止と9年制義務教育の無料、また新型農村合作医療の実施等により、「農業税を納めなくてよいこと、無料で学校へ行けること、受診料が高くないこと」といった8億の農民が待ち望んでいた夢を、いまや実現することができた。<BR>3)2007年から全国の農村において最低生活保障制度が創立された。現在、約5千万の農村人口がこの制度に組み入れられ、一人当たり月80元の政府補助金が交付されている。衣食不足の農民にとっては、まさに「雪中に炭を送る」こととなった。<BR>4)経済が発展した沿海部の幾つかの省・市において、農民基本養老保険制度を先ず試行し、その上で2009年から新型農村養老保険制度の試行を全国的に展開した。昔から中国農民の間では、「子を養って老を防ぐ」という考えを持っていた。現在、養老保険制度の試行県では60歳以上の農民全員が、国の財政による最低標準の基礎養老年金を全額享受し、農民も社会保障を受けられて老後への不安が取り除かれた。従って、前述した「農業税を納めなくてよいこと、無料で学校へ行けること、受診料が高くないこと」に、「老後への不安がないこと」を加えるべきであろう。<BR>これらの制度は、いずれも農民に大きな利益を与え、現実的、歴史的意義が深い。しかし、現段階では国の財政に限りがあり、中国における社会保障水準は比較的低いが、今後、経済の発展に伴い、社会保障水準も更なる向上が期待されよう。<BR><BR>農村医療の新しい進展最近の中国における農村衛生事業は著しい進展をみせた。2003年のSARS発生後、政府は農村事業を重要な議事に位置づけ、国務院は常務会議を毎年開き、農村衛生事業について討議を重ねてきた。中央政府および地方政府は、ともに農村衛生への財政投入を年々増大することによって、農村医療ネットワークの建設、医療衛生サービスに、以下のような新たな進展がみられた。
著者
古本 恭子 高原 真理子 荒木 耕生 植田 恵介 井手 義顕 山本 敬一 米丸 亮 高畑 武司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.40, 2011 (Released:2012-02-13)

マイコプラズマ肺炎は学童期に多い肺炎の一つで, マクロライド系抗生物質が第一選択とされてきた. しかし, 近年, マクロライド耐性肺炎の報告が増加している. その一方で, マクロライド感受性肺炎の流行期であるにも拘わらず, 治療に難渋する症例を経験することがある. 今回, 我々は, 臨床的に判断したクラリスロマイシン(CAM), ミノサイクリン(MINO)感受性マイコプラズマ肺炎患者において, CAM, MINO投与にも関わらず, 発熱が遷延した4例を報告する. 症例は, 平成22年12月から1月において当院に入院した6歳から11歳の肺炎4例である. 聴診所見, 胸部単純X線, 入院時のイムノカードおよび, ペア血清でのMp抗体価の上昇からMp肺炎と診断した. 4例中3例は入院前からCAM, MINO, アジスロマイシン(AZM)を内服していた. 発熱期間は, 入院前の内服期間を含めて, 7~8日間と遷延していた. これらの症例では, AST・LDH・フェリチンの高値から, 遷延する発熱の要因の一つに高サイトカイン血症の関与を考えて, メチルプレドニゾロン(mPSL)投与を3日間行なった. 全例でmPSL投与の12~24時間後より解熱傾向を認めた. 1例ではmPSL中止後に再発熱を認めたため, 再投与を行なったところ, 12時間後に解熱した. 発熱の遷延は, IL-2, 4, 12, 13, 18, IFN-γなどの炎症性サイトカインの臨床上の指標となる. マイコプラズマ肺炎において, 抗菌薬投与後も3~4日間解熱しない場合, 耐性マイコプラズマだけでなく, 高サイトカイン血症の関与を疑い早期のステロイド投与が望ましい.
著者
小松崎 哲也 青木 正彦 市村 正明 平井 正幸
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.326, 2009

〈目的〉当院は第三次救急病院であり,緊急を要すること<BR>が多いので放射線情報システム(以下RIS)の使用上,不<BR>適切な処理をしてしまうことがみうけられた。今後フィル<BR>ムレスを迎えるにあたり,医療ミスを未然に防ぐために各<BR>技師がRIS を適切に使用・修正できることが必須とな<BR>る。よって,2009年2月より新たにRIS データ修正作業<BR>を業務として開始した。開始後から現在までの間で,RIS<BR>データ修正業務担当技師8名のRIS の使用・修正方法に<BR>対する理解度を調査し,今後の教育体制を図る。<BR>〈方法〉<BR>1.RIS データ修正業務担当技師8名が,2008年7月から<BR>12月にかけての不適切な処理をしたデータを収集・分類<BR>し作成したマニュアルをもとにRIS データ修正作業業<BR>務を行った。<BR>2.画像情報管理担当技師2名が過去の事例をもとにRIS<BR>の使用方法に対する問題10問,RIS データ修正方法に関<BR>する問題10問の記述式テストを作成した。<BR>3.RIS の使用が可能またはRIS データ修正が可能な回<BR>答を○,誤った回答を×とし,○を1点,×を0点とし<BR>た。<BR>4.作成した記述式テストをRIS データ修正業務担当技<BR>師8名に行ってもらった。<BR>5.画像情報管理担当技師2名が回答した技師の理解度を<BR>調査し,教育体制を図った。<BR>〈結果〉現在におけるRIS データ修正業務担当者8名中<BR>6名は17点以上だった。残りの2名は12点を以下だった。<BR>全問正解者はいなかった。<BR>〈考察〉全問正解者はいなかったが大半の技師は十分な知<BR>識を有していると判断できた。しかし,残りの技師は理解<BR>不足によるものや知識として蓄えられていないものであっ<BR>たため,従来のマニュアルの簡易化に加え,RIS のテキス<BR>ト作成による習熟を図るべきである。また,定期的なテス<BR>トによる個人の理解度を管理していくことも必要である。<BR>〈結語〉新たに始める教育体制の結果については学会当日<BR>に報告する。<BR>
著者
山本 祐美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.299, 2008

【はじめに】<BR>当病棟は、循環器・血液内科の急性期病棟であり、緊急の処置を要する患者が多い。特に循環器内科においては、昼夜を問わず緊急入院が多く多忙を極める。また入院患者も高齢化している。このような状況の中で、頻回なナースコールも多く看護師はどのような思いでいるのかを知る目的で調査を行った。その結果、頻回なナースコールに対し看護師は感情をコントロールし対応している事が分かったので報告する。<BR>【研究】<BR>期間:平成20年3月1日~21日<BR>対象:病棟看護師23名(卒1~2年5名、3~5年5名、6~9年8名、10年以上6名)<BR>看護体制:チームナーシング、受け持ち看護師制<BR>【方法】<BR>頻回なナースコールへの対応に対する思いをアンケート調査により明らかにする。<BR>【結果】<BR>アンケート回収率は100%であった。<BR>(1)「1時間にナースコールが何回なると頻回だと感じますか?」3~4回12名(52.1%)5回以上10名(30.4%)2回1名(8.7%)<BR>(2)「頻回と感じる時間帯は?」深夜帯16名(69.5%)準夜帯7名(30.4%)<BR>(3)「頻回だと感じた時、仕事は忙しいですか?」忙しい12名(52.2%)とても忙しい6名(26.1%)少し忙しい4名(17.4%)忙しくない1名(8.7%)<BR>(4)「ナースコールを頻回に押してくる患者の気持ちが理解できましたか?」よくできた1名 (8.7%)できた9名(39.1%)少しできた12名(52.1%)できない1名(8.7%)<BR>(5)「頻回にナースコールが鳴ってもにこやかに対応できましたか?」よくできた3名(13.0%)できた12名(52.1%)少しできた7名(30.4%)できない1名(8.7%)<BR>(6)「イライラする感情がどのくらい持続しますか?」5分~10分16名(69.5%)1時間以上5名(21.7%)15分~30分2名(8.6%)<BR>(7)「イライラしている時の気持ちの切り替え方法は?」(自由記載)深呼吸をする3名、患者の立場に立って考える6名、その他、仕事と割り切る、楽しい事を考える、気持ちの切り替えができないなどであった。<BR>(8)「患者に対する感情は?」(自由記載)何かあったのか?8名、イライラ4名、不安なのかな?、また?、ため息、一度に用件を言ってほしいなどであった。<BR>(9)「患者の話をきちんと聞けましたか?」については、聞けた23名(100%)<BR>【考察】<BR>アンケート結果から、ナースコールが頻回と感じる時間帯が深夜帯という回答が最も多く、頻回と感じるナースコールの回数は1時間に3~4回であったが、深夜帯はCCU への緊急入院や重症患者の頻回な観察にもかかわらず、頻回のナースコールにも自分なりの工夫で感情をコントロールして看護を行っていると考えられる。さらに、夜勤での身体的疲労に加え精神的緊張も重なるため少数意見ではあるが、イライラする感情が1時間以上持続する看護師や、気持ちの切り替えができない看護師もいた。忙しい中では当然の事だと考えるが、患者の立場を考えると、今後もいかに忙しい状況の中でも思いやりを持ってよりよい看護を実践してくかが今後の課題であると考える。また、頻回なコールの内容を検討し、対策をしていくことも重要である。<BR>【まとめ】<BR>(1)頻回なナースコールに対し看護師は、感情をコントロールし対応している事が明確になった。<BR>(2)ナースコールが頻回と感じる時間帯は深夜帯であった。
著者
浅沼 信治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.10, 2010 (Released:2010-12-01)

1.農薬の使用と中毒発症の現状 1)農薬使用状況の推移 わが国で農薬が本格的に使用されるようになったのは、第二次世界大戦後である。戦後、農薬は農作物の生産性向上、労力の軽減など農業には重要な資材としての役割を果たしてきた。生産量の推移をみると、戦後30年の間に急増し、1974年に過去最高の75万トンに達し、その後は暫時減少し、90年代後半からは60年代の水準(30万トン台)になっている。殺虫剤の使用が最も多いが、兼業化など人手不足による省力化のため、除草剤の使用も多くなっている。 2)急性中毒および障害 かつてはホリドールやテップなどの毒性の強い農薬による中毒が多かったが、1971年に強毒性農薬が禁止になり、中毒事故は減少した。しかし、その後パラコート系除草剤による死亡事故(主として自殺)が相次いだ。1976年にパラコート系除草剤のうちグラモキソンが製造中止になり、代わってプリグリックスLが使われるようになり、死亡事故はやや減少した。 農村病院を受診した者の統計からみると、急性中毒と皮膚障害が多い。「健康カレンダーによる調査」によると、4人に1人が中毒症状の経験がある。 2.農薬使用の問題点 1)2006年5月の「ポジティブリスト制度」の施行による問題点 「ポジティブリスト制」は、基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度である。以前の「ネガティブリスト制」は、農薬の残留基準値がない場合、規制の対象にならなかったが、新制度により一律基準0.01ppmが適用、規制される。消費者にとっては残留農薬の減少など好ましいことではあるが、生産者にとってはドリフトなど問題が多い。これは農薬の登録制度にも問題がある。 2)ネオニコチノイド系農薬の使用 最近、有機リン農薬に代わって新農薬「ネオニコチノイド」(新しいニコチン様物質)が大量に、しかも広範囲に使用されている。今、ミツバチが忽然と姿を消す怪奇現象が多発し、その原因の究明が急がれているが、ネオニコチノイド系の農薬もその一つに挙げられている。 3)農薬の表示についての問題点 日本では、「農薬」と表現されているように危険なイメージは少ない。 農薬には、その中毒を防止する観点から「毒物・危険」の表示が必要である。アメリカはドラム缶に「ドクロマークとPOIZON」表示がされている。フィリピンでは、その毒性により分類し、農薬のビンの下に幅広のテープを貼ったように色を付けている。色分けされ、一見してこれがどのランクの毒性を持つ農薬なのかが分かる。しかも毒性の強い農薬は、一般の店では販売されていない。日本は赤地に白文字で「毒物」、白地に赤文字で「劇物」と小さく書かれているだけである。 4)農薬による皮膚炎 農薬による中毒・皮膚炎などにはその種類により特徴があり、注意する点も多い。とくに石灰硫黄合剤による皮膚傷害は深刻である。中毒を防ぐためにマスクの使用や、通気性がよく防水性のある防除衣の使用などについても考えてみたい。