著者
吉橋 亮太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

まず前年度の成果である動画中の鳥検出システムを拡張し,検出と追跡の2タスクを同時学習可能なニューラルネットワークを開発した.昨年度は物体検出で利用可能なフレームワークとして,1. 背景差分法による鳥候補領域の抽出,2. 候補領域の追跡による,鳥候補軌跡の生成,3. 鳥候補軌跡の深層学習による識別の3ステージからなるパイプラインを実装していた.しかしながらこの方法には鳥候補軌跡の生成には個別の既存の追跡機を利用しており,このステージでは学習の恩恵を受けられないという問題があった.今年度は追跡による候補軌跡の生成とその識別を深層学習によって同時に行う新たなフレームワークを開発した.この手法では検出と追跡が同時に単一のネットワークで行われることによる性能向上が得られ,実験により昨年度のシステムから8%程の鳥検出率の向上が可能となることが分かった.この成果はオーストラリア国立大学およびオーストラリアの国立研究機関であるData61-CSIROの尤 少迪 講師との共同研究として得られた.そのほか昨年度の成果であるTwo-stream CNNによる動画特徴量を利用した検出に関して,評価実験の拡張と論文誌への投稿を行った,こちらの論文でのアルゴリズムの評価は,より広いコミュニティに成果をアピールするために,歩行者検出に関する外部の動画データセットであるCaltech Pedestrian Detection Benchmarkを利用した.結果として開発にあたってベースとした既存の静止画による検出器からの性能向上を確認した.また当初の計画より進んだ成果として,風力発電所画像での野鳥検出と領域分割の同時学習による高精度化,UAVからの畜牛検出への新たな応用の2つに関しての研究成果が,受け入れ研究室での学生とのコラボレーションの結果として得られた.