著者
吉武 義泰 尾木 秀直
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度および昨年度の実績としましては、治療効果を的確に予測できる可能性のあるバイオマーカーの探索・同定と、それらの簡易的な検出方法の開発を試みるという一つの目的に関しまして、学術論文としてInternational Journal of Oncologyに2本の論文を発表することができたことが一番に挙げられます。今回は発表した分子は口腔癌の進行度を反映することができ進行度マーカーとして利用できることを報告しました。さらに腫瘍免疫療法の標的分子にもなり得ることも見出しました。今後、免疫療法の一助になるよう研究を続けていく所存です。一方で、すでに同定したTh1細胞が認識するHLAクラスII (HLA-II)拘束性抗原ペプチドとこれまでのCTLエピトープペプチドとの併用による進行がん患者における抗腫瘍効果の増強を検討しより効果のある口腔癌ペプチドワクチン療法を確立するという目的に関しても、学術論文としてOncoimmunologyに発表できたことを報告致します。本研究は私どもだけではなく、東京大学医科学研究所および熊本大学大学院生命科学研究部免疫識別学講座との緊密な共同研究の成果です。この業績に引き続き、さらに数本の学術論文がでると考えております。本研究の結果、病期の判断マーカーもなく、また治療の効果を判定するマーカーもなかった口腔癌において客観的に判断することのできる手段を得ることができました。そのことによって、これまでは治療法がないと言われ、だた死を迎えるだけであった頭頸部癌扁平上皮癌難民に対して新たな治療法の第一歩を踏み出すことができました。保険適用になりましたニボルマブにおいても、その効果判定や適用患者を投与前に区分することができるようになるかもしれません。さらに、免疫療法の治療標的分子としても、口腔癌を克服できる一筋の光明になる可能性を秘めていること考えております。