著者
吉武 隆一
出版者
国士舘大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ギリシア古代都市メッセネの古代劇場とアスクレピオス神域のコリント式オーダーを中心に、ヘレニズム建築の設計法と施工法の一端を明らかにしたものである。ギリシア建築のコリント式オーダーは、古典期まで建物内部のオーダーとして使われることが多かったが、ヘレニズム期になって建物外部のオーダーとして用いられるようになった。メッセネのアスクレピオス神域で使われたコリント式オーダーは、サモトラケのプロピロンと並び建物のファサードとして使われた重要な例であり、様式的にはペロポネソス半島の伝統の影響を受けていることが分かった。また、メッセネの古代劇場はヘレニズム期とローマ時代の両方の遺構が確認できる好例の建物である。これまでの調査で、ヘレニズム期には可動式の木製スケーネがあり、ローマ時代になって二層あるいは三層のオーダーからなるスケーネに改築されたことが分かった。