著者
吉池 史雄 前野 佑輝 齋藤 佑磨 真水 鉄也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-152_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに,目的】我々は先行研究(2016)において,距骨下関節の回外誘導により,立位姿勢における体幹の同側への回旋運動の増加が生じることを報告した.また,同様に先行研究(2017)では,回内誘導により立位姿勢における体幹の同側回旋運動の抑制が生じることを報告した.この事から距骨下関節の肢位変化は,近位だけではなく,より上位関節へ影響を与える事が可能であると分かった.今回の研究では,筋電計を用いて歩行における距骨下関節の肢位変化が,上位関節である股関節に対し,同関節筋である大殿筋の活動にどのような影響を及ぼすか検証した.【方法】対象は整形外科的疾患の既往が無い健常成人男性11名(年齢27.2±3.4歳,身長173.4±2.6cm,体重68.4±2.1kg)とした.課題は快適速度での歩行を行い,被験者の右踵骨部に対し10mm×30mm×3mmのパッドを内側及び外側に貼付し距骨下関節を回内誘導(以下回内群)及び回外誘導(以下回外群)とした.また,Gait Judge System(パシフィックサプライ社製)を用い,右大殿筋部に表面筋電図を貼付し歩行時の筋活動を計測した.表面筋電波形の計測は,歩行が定常化した後の連続3歩行周期を抽出した.得られたデータは20〜250Hz のバンドパスフィルターで処理した後,RMS波形に変換した.サンプリング周波数は1000Hzとした.また,筋電図と同期して撮影したデジタルビデオを照合し,右Initial Contact~Terminal stanceの立脚期を抽出し,測定筋の筋電図積分値を算出した.得られたデータは3歩行周期の平均値を出し,回内群と回外群にて比較した.統計処理は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】立脚相における大殿筋の活動は回内群で7.42±4.22μV,回外群では6.07±3.19μVとなり,回内群の方が大殿筋の活動が優位に増加した.(p<0.05)【結論】距骨下関節の回内誘導により,立脚期における大殿筋の筋活動が増加した. 先行研究より,上行性運動連鎖の観点から距骨下関節の回内誘導により荷重下では右下腿の内旋が促され,続いて大腿の内旋が生じる.また,骨盤も大腿内旋により左回旋方向へ誘導される.その際に,骨盤-大腿の回旋をコントロールする為に大殿筋の大腿外旋の作用により,遠心性活動が要求された事で筋活動が高まったと考えられた.また,距骨下関節の回内により距舟関節と踵立方関節は平行した位置関係を取り,横足根関節の可動性が増加し足部全体の剛性低下が生じる.足部の剛性低下により立脚期における前方推進力は低下し,立脚相前半相が延長される.大殿筋は立脚相前半にかけて強く働くことから,立脚相前半の延長により大殿筋の活動が要求されたと考えられた.【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の主旨を書面にて説明し,同意書にて参加の同意を得た.また本研究は当院での倫理委員会の承認の下実施した