著者
吉田 堯躬
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-15, 2005-03-10

日本の公的年金のうち,厚生年金及び国民年金はそれぞれ厚生年金特別会計及び国民年金特別会計の中にある年金勘定及び関連勘定において管理されているが,その年金資金の管理は単年度予算主義に基づく年度予算(事務費及び事業費)の執行と分離されておらず,年金資金の長期及び中期の資産運用において本来必要な自主性を失っている.そのため生じている問題点として1.年金の積立金と年金の将来債務との対比の無視2.年金資金運用と年度予算の混同 3.年金資金の運用利回り不足の未処理4.年金勘定と業務勘定間の不合理な資金整理 5.年金勘定の出資と特別保健福祉事業資金繰入れ6.厚生年金基金の解散及び共済年金の統合にともなう債務増加の非掲示改訂を指摘した。
著者
吉田 堯躬
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.1, pp.143-152, 2001

2000年の10月に財政当局はかねてからの課題に答えるため『国の貸借対照表(試算)』を発表した。公債残高の累増に対する懸念から日本財政システムが依然として明治期以来の現金主義にとどまっている点が指摘された点へのひとつの解答ではある。しかし,その努力は買えるし, 一定の役割は有するであろうが, 改革ののろし-すなわち, 現行の予算システムが単年度の財政状況によって意思決定され,現在及び将来にわたる国民の負担や, その持つ資産の状況が視野に入らないことへの疑念には答となっていない。本稿は現行の公会計制度の問題点やその改革案の背景にある福祉国家の財政への知的階層のいら立ちを指摘するとともに, 発表された『国の貸借対照表(試算)』について公会計改革への期待との落差を指摘し, 福祉国家における財政民主主義の限界についての考察を行うものである。