著者
合掌 顕 牧田 真奈 吉田 恵史郎
出版者
人間・環境学会
雑誌
人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.13-17, 2012-12-30 (Released:2019-03-19)
被引用文献数
1

Kaplan(1995)による注意回復理論では、植物を中心とした自然環境には無意識に注意が向き、精神的な疲労が軽減する回復環境としての機能があるとしている。本研究は眺めて楽しむ側面と、生物とのふれあいを楽しむ側面を持つアクアリウムに着目し、その回復環境としての特性、及びストレス緩和効果について検討した。30人の被験者をアクアリウムのある条件と統制条件に振り分け、各条件で15分間の作業(英文タイピング)を行ってもらい、その後10分間休憩してもらった。作業の前後と休憩後に気分評価と唾液アミラーゼの測定を、また休憩後にアクアリウム、実験室の回復特性と空間の総合的な印象を評価してもらった。さらに実験中の被験者の心拍変動と視線の動きを測定した。分析の結果、アクアリウムは「魅了」「視野」「好み」といった回復特性を持っており、アクアリウムの置かれた空間も「魅了」の側面で高く評価されることが明らかになった。また、アクアリウムは統制条件と比較して休憩時に長く注視され、また注視時間が長いほどLF/HFが低かったことから、アクアリウムの持つ注意回復特性が被験者の注意を引きつけ、その結果ストレス緩和につながったと考えられる。