- 著者
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吉田 正彦
- 出版者
- 明治大学人文科学研究所
- 雑誌
- 明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
- 巻号頁・発行日
- no.31, pp.87-91, 1990-12-25
グリム兄弟は「子供と家庭のための昔話」の第一巻を1812年に公にした。三年後には第二巻を刊行,合せて二百編の昔話を収録する。1822年に出版された第三巻「注釈」編を含めて全巻が整う。しかし前二巻の第二版(1819年)及び後の版では,前の版に収められた幾編かが他の物語と挿し替えられている。初版第33話「長靴をはいた牡猫」,62話「青ひげ」などがそれであり,20話を超えるはずである。それらが二版以降で省かれた理由として,兄弟の昔話収集の本来の意図からはずれていたためである,という。つまりドイツ本来の伝承ではなく,たとえばフランス,あるいはスコットランド語から兄ヤーコプが翻訳したものなどが多く含まれている。また,その幾つかはフランスの,それも17世紀末のシャルル・ペローによる『過ぎし昔の物語ならびに教訓』に由来する口承であるからだ,ともいわれる。