著者
渡辺 響子
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.50-50, 2001-07-13

本研究は,小説の中に芸術家が描かれ,芸術作品の内部において芸術の逆照射が行われるという,十九世紀に入ってフランスの文学界で顕著に見られるようになった現象を考察するものである。これは,十七世紀に宮廷を舞台にした物語が生まれたのとは,全く異なるレベルの事件である。1830年の七月革命は,1789年のフランス大革命と比べると,世界史的には影響が少なかったかもしれないが,フランスにおける真の市民社会の誕生・発展にとっては大転換期となった。小説・芸術が場パトロンの手から離れて,ひとりだちし始める時期であるとも言えよう。十九世紀が小説の世紀と呼ばれるまでになった背景には,この革命とその戦利品,そしてこれによって失ったものを考えないわけにはいかない。
著者
吉田 正彦
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
巻号頁・発行日
no.31, pp.87-91, 1990-12-25

グリム兄弟は「子供と家庭のための昔話」の第一巻を1812年に公にした。三年後には第二巻を刊行,合せて二百編の昔話を収録する。1822年に出版された第三巻「注釈」編を含めて全巻が整う。しかし前二巻の第二版(1819年)及び後の版では,前の版に収められた幾編かが他の物語と挿し替えられている。初版第33話「長靴をはいた牡猫」,62話「青ひげ」などがそれであり,20話を超えるはずである。それらが二版以降で省かれた理由として,兄弟の昔話収集の本来の意図からはずれていたためである,という。つまりドイツ本来の伝承ではなく,たとえばフランス,あるいはスコットランド語から兄ヤーコプが翻訳したものなどが多く含まれている。また,その幾つかはフランスの,それも17世紀末のシャルル・ペローによる『過ぎし昔の物語ならびに教訓』に由来する口承であるからだ,ともいわれる。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.46-47, 1998-07-25

筆者は,これまで近世前期イギリスの居酒屋を中心に研究をすすめてきたが,そこでの検討課題はほぼ次の三点であった。その一つは,当時の支配的な居酒屋像(「サタンの巣窟」)とは異なる居酒屋の「実態」(「飢餓に対する主要な砦」)研究,二つ目は,当時の居酒屋の世界を「変容」させる要因ともなった居酒屋政策の研究,そして三つ目は,そうした居酒屋政策にも影響を与えたと考えられるピューリタンらによる「モラル・リフォーム」の運動である。本研究では,これまでの,こうした近世イギリスの居酒屋に関する研究をより発展・深化させるべく,近世ロンドン(特に16~17世紀前半)を「実証」のフィールドに定め,「モラル・リフォーム」や居酒屋政策との関連で,当時における居酒屋の世界を明らかにしていきたいと考えている。
著者
牧野 有通
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.37-38, 1994-03-31

1992年4月から1993年3月までの本研究における具体的成果は下記の通りである。 a. アメリカ文学会全国大会発表「メルヴィルと新歴史主義」(1992年10月) b. 共著『文学アメリカ資本主義』(南雲堂,1993年1月) c. 「アメリカ作家と南北戦争――メルヴィルの場合」Sky-Hawk,8.(1993年3月) a. 1992年10月18日,成践大学で行われた第31回アメリカ文学会全国大会シンポジウム「アメリカン・ルネッサンス再検討」のスピーカーとして,新歴史主義的批評方法論に基づき,メルヴィルのアメリカ・イデオロギー批判を,ブルック・トーマス,ドナルド・ピーズ,およびエリック・サンドクイスト等の業績を具体例として議論した。