- 著者
-
吉良 佳子
- 出版者
- 熊本大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は自己集合性脂質のキラル会合構造をもとに,その超分子特性やナノ繊維構造を生かした機能性材料の開発を目的としており,本年度はω-アミノアルキル化およびω-ピリジニルアルキル化L-グルタミン酸誘導体の優れた両親媒性や分子会合特性を評価し,これらのカチオン性自己組織化分子のキラルなホストとしての機能性およびテンプレートとしてのホスト機能性の評価を実施した。従来のL-グルタミン酸誘導体にはない優れた両親媒性はω-アミノアルキル化によって促進され,これはナノチューブやヘリックスなどの繊維状会合体を形成することで分散していると考えられる。一方で,ω-ピリジニルアルキル化では水やアセトニトリルなどの極性溶媒にのみ溶解するが,有機溶媒でもナノチューブを形成する珍しい例である。また,高次キラル会合体であることから溶媒環境によって特有のキラリティーを示すだけでなく,アキラル分子にも二次的にキラリティーを誘起でき,その機能性はアルキルスペーサー長によって異なる挙動を示した。さらに,ω-ピリジニルアルキル化L-グルタミン酸誘導体は水中で二分子膜構造からなるナノチューブを形成するため,膜内部の疎水性場にモノマーを取り込ませ,これを光照射で重合することでテンプレート剤としての機能性を評価している。このように,本研究で用いた両親媒性L-グルタミン酸誘導は不斉材料だけでなくナノ構造材料として十分に期待される。