著者
吉良 健司 伊東 隆夫 近澤 美紀
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.225-228, 2001-07-31
被引用文献数
6

本研究の目的は, 理学療法士による訪問リハビリテーション活動の業務分析を行いつつ, 高齢障害者の日常生活活動(ADL, Activities of Daily Living)自立度に及ぼす影響を調査分析し, その専門性を明らかにすることである。対象は, 当診療所及び併設の訪問看護ステーションより, 理学療法士2名体制で継続して訪問リハビリテーションを受けていた51名(男性23名, 女性28名, 平均年齢79±9.5歳)とした。結果, 訪問業務は, 平均滞在時間が43.8分±16.7分であり, このうち運動療法が全体の61.3%, さらに移動動作練習が26.0%を占めていた。次に訪問リハビリテーション開始初期時と最終時における個々のBarthel Index(BI)の変化をみると, 改善67%, 維持25%, 低下8%であった。また, BIの平均値を統計的に見ると, 初期時45.8±31.3点に対し, 最終時が54.0±34.3点で有意差が認められた。さらに, BIを項目別にみると, 移乗・歩行・階段昇降・トイレ動作・入浴など, 立位歩行に影響されるものに有意差が見られた。このような結果から, 在宅の高齢障害者に理学療法士が定期的に移動面に関するアプローチを中心に関わることで, ADL能力の改善や維持に影響を及ぼしていることが推測された。