著者
須釜 聡 立野 勝彦 灰田 信英
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.72-79, 1996-03-31
参考文献数
14
被引用文献数
13

金沢大学大学院医学系研究科機能障害学関節拘縮発生にはコラーゲン中の架橋結合が関与し,この架橋結合はコラーゲンの可溶性に影響を及ぼす。今回我々は,ラットの足関節を7週間固定し筋および腱組織の可溶性の変化を検索しコラーゲン線維内の架橋結合の変化を推察した。その結果,ヒラメ筋については塩可溶コラーゲンとペプシン可溶化率に有意な減少を認めたが,アキレス腱については塩可溶コラーゲンに有意な減少を認めたのみであった。以上の結果から,7週間の固定により,コラーゲン線維内の架橋結合について,筋組織では架橋結合の数や強度の増加が推察されるが,腱組織では架橋結合の変化も少ないものと推察される。このことから,固定による影響は筋組織コラーゲンの方が大きいことが示唆され,組織の柔軟性の低下へつながる方向へ移行しているものと考えられる。 The purpose of this study was to investigate the change in solubility of 7 weeks immobilized Soleus muscle and Achilles tendon collagen. Left hind limb of six rats were immobilized for 7 weeks. Hydroxyproline was determined for the estimation of the collagen content in neutral salt soluble, acid soluble and insoluble collagen. In addition, insoluble collagen was digested with pepsin to determine solubility of insoluble collagen. In the case of Soleus muscle, collagen content to represent as a percent of wet weight was increased significantly during 7-week immobilization. In the case of Achilles tendon, collagen content to represent as a percent of wet weight did not change during the immobilization. In the case of Soleus muscle, the percentage of the salt solbule collagen to the total collagen was decreased significantly during 7-week immobilization. The percentage of the acid soluble and insoluble collagen to the total collagen did not change significantly during the immobilization. In the insoluble collagen, a rate of solubility with pepsin was decreased significantly. In the case of Achilles tendon, the percentage of the salt soluble collagen to the total collagen was decreased significantly during 7-weerk immobilization. The percentage of the acid soluble and insoluble collagen to the total collagen did not change significantly during the immobilization. In the insoluble collagen, a rate of solubility with pepsin did not change significantly. These results suggest that: 1) Solubility of Soleus muscle collagen, affected by intra and intermolecular crosslinks, changes during 7-week immobilization. 2) Solubility of Achilles tendon collagen, affected by intra and intermolecular cross-links, does not change remarkably during 7-week immobilization.
著者
牧迫 飛雄馬 古名 丈人 島田 裕之 赤沼 智美 吉田 裕人 井平 光 横山 香理 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-33, 2011-02-20
被引用文献数
4

【目的】75歳以上の高齢者における新規要介護認定の発生に対する歩行能力の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】要介護認定を受けていない75歳以上の地域在住高齢者190名を対象とした。ベースライン調査として5m歩行時間(通常速度)を測定し,以降39ヵ月間の要介護認定発生状況との関連を調べた。【結果】39ヵ月間で34名(17.9%)が新規に要介護認定を受けた。5m歩行時間を男女別に4分位で速い群から遅い群のI〜IV群に分類し,要介護発生率曲線の差をLog-rank検定にて検討した結果,5m歩行時間が遅いIV群(男性5.2秒以上,女性5.8秒以上)では,それ以上に速い歩行速度を有する群(I〜III群)と比べて有意に高い要介護認定発生率を認めた(p<0.01)。Cox回帰分析の結果,新規要介護の発生と有意な関連を認めた変数は,BMIと5m歩行時間(秒)であり,5m歩行時間のハザード比は1.65(p<0.01)であった。【考察と結論】地域在住後期高齢者の歩行速度は,将来の要介護認定発生に影響を与える要因のひとつであることが確認された。
著者
鷲田 清一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, 2004-12-20

古代以来,西洋各地域の言語が複雑に交叉し分岐してきた歴史のなかで,「癒す,治す」(heal/heilen)や「健康」(health)という語が,「全体」(whole)や「聖なる」(holy/heilig)という語と同族語として生成してきたという事実は,われわれをさまざまな想いへといざなう。傷が癒える過程,病を治す過程に,テクノロジーというものがこのうえなく深く介入するようになった現代社会では,<健康>でないもの,つまり病や傷は,局所(=部分)に原因をもつそれとしてとらえられる。また,それは生体の機能不全という視点からみられ,病に侵され傷を負っているという状態が,そのひとにおけるなにか別の意味の現われ(たとえば「罪業」や「試練」)としてとらえられることもない。これは治す側の問題である。他方,患者の付添人からすれば,患部の状態以上に(どんな苦しみなのかといった)患者自身がどういう状態にいるかが気がかりなところであり,また苦しみからの解放を祈ったり,「苦しみとともにする」(sympathyの語源である)ために何かを絶ったりする。そこにはhealとwholeとholyのからみあいがはっきりある。Healがwholeと切り結ぶところまでは分かるとして,なぜholyとまでつながるかというと,そこでは付添人は想いをそのひとの生のなかだけでなく生の彼方にまでもはせるからである。そのひとがいなくなるという事態,さらには身体の生を超えたそのひとの存在の意味にまで,である。つまり,治す側は身体の生の内部をみている。付き添う側は身体の生をあふれ出ているものをみている。そして,付き添う側の想いは「治療過程」の外側に置かれる。付き添うひとの気持ちはわかるが,病気を治すということはそういうことではない,と。その裏返しとして,<健康>もまた,器官や四肢の集合体としてとらえられた身体が総じて故障がないこととしてイメージされ,ふだんから血液検査やレントゲン撮影によって生体の機能不全のチェックをするという対処を求められる。健康が,身体の生の,治療するところのない「正常」な状態とされるのである。健康か不健康かの区別が医療機関での「健康診断」に託されるのだ。こうしてひとの身体は,医療テクノロジーの高度な装置のなかにますます深く挿入されていった。医療の行為や制度を断罪しようというのではない。<健康>が身体の「正常」に還元されている事態が,<健康>のイメージをどれほど損なっているかを,あらためて考えたいのである。たとえば医療テクノロジーの「暴走」を口にするひとがいる。「暴走」は,医療のあるべき様態を超えてしまっているということの表現であろう。が,しかし,われわれが自身の「よりよき」生を求めてそれに依存することにしてきた医療テクノロジーがもはや「人間的」でないかどうかは,われわれが「人間的」ということで何を考えてきたかという,歴史的な文化の問題である。<健康>の問題を身体の「正常」に還元する見方のひとつの問題は,それが個人の生を,生なきもの,つまり器官のモザイクー「死のモザイク」として表象させるというところにあるが,その見方のもうひとつの問題は,<健康>への視点をもっぱらひとの身体の内部に向け,そのことで他者との交通という場面を見えなくさせてしまうという点にある。こういうときはこういう草を煎じて飲むとか,こういうときはここのつぼを押すとか,かつて日常世界のなかにあった「相互治療」の文化は,民間医療,素人医療として,公的な医療機関のなかに呑み込まれ,消えた。身体と身体とのあいだの交通を超個人的なシステムが代行するようになることで,ひとは自分の身体のあり方への判断力のみならず,他の身体への通路をも見失いかけている。おおよそこのような視点から,今回,<健康>というテーマをめぐって,次のような問題を考えてみたい。「正常」でなくとも<健康>であるような生のあり方とはどういうものか。ひとは中年にさしかかると,ちょうど若いひとたちが自分の体格や身なりや身体感覚に強い関心をもつのとおなじくらいに熱っぽく,自分の「体調」や「健康体操」について語りはじめるそういえば,老人の「健康談議」を「老人の猥談」と揶揄するひとたちがいるが,ひとはなぜ,これほど<健康>に,あるいは自分の身体の状態に,熱い関心をもつようになったのか。身体に熱中するというよりも,「健康な身体」という観念,「正常値」という観念に,と言ったほうが正確ではあろうが。(当日の講演内容は次号に掲載予定です)
著者
吉良 健司 伊東 隆夫 近澤 美紀
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.225-228, 2001-07-31
被引用文献数
6

本研究の目的は, 理学療法士による訪問リハビリテーション活動の業務分析を行いつつ, 高齢障害者の日常生活活動(ADL, Activities of Daily Living)自立度に及ぼす影響を調査分析し, その専門性を明らかにすることである。対象は, 当診療所及び併設の訪問看護ステーションより, 理学療法士2名体制で継続して訪問リハビリテーションを受けていた51名(男性23名, 女性28名, 平均年齢79±9.5歳)とした。結果, 訪問業務は, 平均滞在時間が43.8分±16.7分であり, このうち運動療法が全体の61.3%, さらに移動動作練習が26.0%を占めていた。次に訪問リハビリテーション開始初期時と最終時における個々のBarthel Index(BI)の変化をみると, 改善67%, 維持25%, 低下8%であった。また, BIの平均値を統計的に見ると, 初期時45.8±31.3点に対し, 最終時が54.0±34.3点で有意差が認められた。さらに, BIを項目別にみると, 移乗・歩行・階段昇降・トイレ動作・入浴など, 立位歩行に影響されるものに有意差が見られた。このような結果から, 在宅の高齢障害者に理学療法士が定期的に移動面に関するアプローチを中心に関わることで, ADL能力の改善や維持に影響を及ぼしていることが推測された。
著者
上出 直人 山崎 岳之 宮城 しほ 前田 真治 中澤 俊之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-13, 2006-02-20
被引用文献数
2

非外傷性不全脊髄損傷患者に対する体重免荷トレッドミルトレーニングの,歩行能力に対する影響を検討した。症例は,観血的治療を施行された不全四肢麻痺患者1例,不全対麻痺患者2例の計3症例で,いずれも術後7日目より通常の理学療法介入を実施した。その後,下肢筋力や歩行能力の変化が,通常理学療法介入開始時と比べて小さくなってきた時点で,体重免荷トレッドミルトレーニングによる介入へと変更した。下肢筋力や歩行能力の変化を検討するため,American Spinal Injury Association Impairment Scale (ASIA), Lower Limb Motor Score (LLMS), Functional Independence Measure (FIM)(移動項目のみ),歩行速度,平均歩幅,歩行率を評価した。その結果,体重免荷トレッドミルトレーニング介入期間内では,ASIAおよびLLMSは変化量が小さかったが,FIMは1(全介助)から5(監視)または6(修正自立)まで改善,さらに歩行速度,平均歩幅,歩行率も向上した。故に,非外傷性の症例に対する体重免荷トレッドミルトレーニングは,麻痺や下肢筋力への影響は小さいが,歩行能力への影響が大きいトレーニングであることが示唆された。
著者
小宅 一彰 三和 真人
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.70-77, 2010-04-20
参考文献数
18

【目的】歩行中の重心運動を力学的エネルギーで捉え,位置エネルギーと運動エネルギーの交換率(%Recovery:%R)として歩行における重力の利用率を評価できる。本研究の目的は,%Rを用いて若年者と高齢者の歩行特性を検討し,両者の%Rに相違をもたらす原因を解明することである。【方法】対象者は,歩行が自立している高齢者(高齢群)と健常若年者(若年群)各20名であり,三次元動作解析装置で快適歩行の立脚相を測定した。測定項目は時間距離因子(歩行速度,重心移動幅,両脚支持期,歩行率,ステップ長,歩隔),関節運動および筋力がなす仕事量(股関節,膝関節,足関節),%Rである。%Rは力学的エネルギーの増加量より算出した。【結果】高齢群の%Rは若年群より有意に低値であった。高齢群において,立脚相初期における膝関節屈曲角度と遠心性膝関節伸展仕事量が%Rの増加に寄与し,いずれの変数も高齢群は若年群より低値であった。【結論】高齢者の歩行は若年者に比べ重力の利用が乏しく,その主要な原因は立脚相初期における膝関節屈曲運動の減少であることが示された。
著者
剱物 充 永山 善久
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.85-90, 2010-04-20

【目的】新生児医療センター(Neonatal Intensive Care Unit,以下NICU)入院時より理学療法(Physical Therapy,以下PT)を介入した超低出生体重児の運動発達の経緯とPTの効果について検討した。【方法】当院NICUに入院し,脳性麻痺がなく独歩獲得までフォローできた19例を対象とし,NICU入院時からPTを開始した群の特性を調査するために周産期因子8項目について対照群と比較した。次に,PT施行状況別に運動発達の経緯を明らかにする目的で,対象群をNICU入院時PT開始群,退院後の新生児科外来通院時PT開始群,そしてPT未施行群の3群に分類し,頸定から独歩までの各発達指標に到達した際の修正年齢を比較した。【結果】周産期因子の比較では,NICU入院時PT開始群において出生体重が有意に小さく,入院期間は長く,人工換気施行日数は多かった(p<0.05)。各発達指標に到達した際の修正年齢の比較では,有意差は認められなかった。【結論】超低出生体重児へのPT介入は,運動発達の遅れを取り戻すことに関与する可能性が考えれた。その機序の1つとして,抗重力パターンの体験や感覚機構への介入などを通し,筋緊張や姿勢動作パターンの修正を促す点が示唆された。
著者
西田 裕介 久保 晃 田中 淑子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-31, 2002-02-20
被引用文献数
3

日本人の20歳代健常成人105名を対象に, 前腕長および下腿長と身長との関係を検討し, 各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は, 身長は, 背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は, 端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(1)), 肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(2))を計測した。下腿長は, 背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長(1)), 腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長(2))を計測した。統計学的手法には, 各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い, また, 目的変数を身長, 説明変数を前腕長(2)・下腿長(2)とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より, 全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r=0.65〜0.85,全体 : r=0.76〜0.86)。一方, 女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r=0.57〜0.70)。重回帰分析では, 女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r=0.89,女性 : r=0.81,全体 : r=0.92), 重回帰分析より求めた回帰式を用いることで, 身長の推定が可能であると考えられる。このことは, 身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して, 栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。