著者
伊東 隆夫
出版者
東南アジア学会
雑誌
南方史研究 (ISSN:2185050X)
巻号頁・発行日
vol.1960, no.2, pp.179-193, 1959-06-30 (Released:2010-10-22)

ビルマの漢譯名たる「緬甸」の稱が, 明代に緬甸宣慰司が置かれて以後, 廣く用いられるにいたったことは,『明史』雲南土司傳などより知られているが, それが用いられ始めた年代を考察し, 併せてその稱呼の起原を探ることが, この小稿の目的である。まずその年代については,『明史』は宋の寧宗の時に緬甸が始めて中國に通じたと述べているが, 寧宗本紀では蒲甘國の入貢を記すのみで, 緬甸としてではなく, さらに蒲甘國傳によれば蒲甘の入貢は崇寧5年であるという。崇寧は北宋の徽宗の年號で, 寧宗のそれではない。しかも徽宗本紀は, たしかに崇寧5年の蒲甘入貢のことを記してある。ここに筆者は, 「宋寧宗時」と「崇寧」との錯簡を想定する次第である。なお, 諸書を参照すれば, ビルマが中國で緬甸として表わされるに至ったのは, 明代以後であらねばならない。而してその正確な年代は, 宣徳二年以後であると考えられる。次に緬甸の稱呼の起源または語源については, これまで數人の學者により「緬」のみについて, それが梵語の Brahma または Pali 語の Mram-ma に由來することが言われているが,「甸」については, 張誠孫氏が, 〓之誠氏の言う所をひいて, ビルマで部落が「甸」といわれていたことを述べているばかりである。なお, 顧炎武, 毛奇齡は, ビルマが中國から道里が遠かったから「緬」と呼ばれたという (A) 中國語語起原説を述べ, これは張氏によってもとられている。これに對し Sir Scott はビルマの作詩家, 劇作家が, その國を Myantaing と書いたのが, 緬甸に當るという (B) ビルマ語起原説を提唱している。筆者はこの (A), (B) 兩説を檢討し,「甸」なる文字が, 『元史』地理志の雲南の記事の中に特異の存在として用いられていることを論じ, 甸が雲南諸蠻部の居住單位の一つとして用いられていたことに及ぶ。その字義については, 曹樹翹の『〓南雜誌』に「叢曰甸, 曰〓, 曰瞼」と見えるところより, 張氏のいうように甸に村落の意があることを知る。しかしそれは雲南地方における「甸」の字義であり, それを直ちに緬甸の「甸」と同一視することはできないと思う。そこでビルマ語の町や村を示す語を調べてみたが, そのいずれも甸 (tien) に似た發音をもつものがなかった。ただ toun (tain と發音する) という語が「國」または「州」の意味をもっていることがわかったので, 「甸」の語源をこれに求めた。英人は tain と登音されるビルマ語を taing と表字しているようである。さらに Shan 族の語が, ビルマ語でどのように發音されているかをも, 逆に類推し, Myan-ma-tain→Myan-tain (英語式では Myantaing)→Mien-tien (緬甸) への變化の可能性を結論する。
著者
伊東 隆夫
出版者
京都大学木質科学研究所
雑誌
木材研究・資料 (ISSN:02857049)
巻号頁・発行日
no.32, pp.66-176, 1996-12
被引用文献数
1
著者
伊東 隆夫
出版者
京都大学木質科学研究所
雑誌
木材研究・資料 (ISSN:02857049)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-175, 1999-12-20
著者
吉良 健司 伊東 隆夫 近澤 美紀
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.225-228, 2001-07-31
被引用文献数
6

本研究の目的は, 理学療法士による訪問リハビリテーション活動の業務分析を行いつつ, 高齢障害者の日常生活活動(ADL, Activities of Daily Living)自立度に及ぼす影響を調査分析し, その専門性を明らかにすることである。対象は, 当診療所及び併設の訪問看護ステーションより, 理学療法士2名体制で継続して訪問リハビリテーションを受けていた51名(男性23名, 女性28名, 平均年齢79±9.5歳)とした。結果, 訪問業務は, 平均滞在時間が43.8分±16.7分であり, このうち運動療法が全体の61.3%, さらに移動動作練習が26.0%を占めていた。次に訪問リハビリテーション開始初期時と最終時における個々のBarthel Index(BI)の変化をみると, 改善67%, 維持25%, 低下8%であった。また, BIの平均値を統計的に見ると, 初期時45.8±31.3点に対し, 最終時が54.0±34.3点で有意差が認められた。さらに, BIを項目別にみると, 移乗・歩行・階段昇降・トイレ動作・入浴など, 立位歩行に影響されるものに有意差が見られた。このような結果から, 在宅の高齢障害者に理学療法士が定期的に移動面に関するアプローチを中心に関わることで, ADL能力の改善や維持に影響を及ぼしていることが推測された。