著者
萩原 潤治 村田 ひろ子 吉藤 昌代 広川 裕
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.24-47, 2018-07-20

世論調査の有効率の低下が課題となるなか、WEBを利用した新しい調査方式が注目されている。そこで、NHK放送文化研究所では、住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手に対し、郵送で調査への協力を依頼し、WEBで回答してもらうという「郵送依頼WEB回答方式」(以下、「WEB式」とする)の可能性を探ることにした。2016年と2017年の計2回、このWEB式の実験調査を、回答方法を「WEB回答」に限定せず、一部、補完的に「郵送回答」も受け付ける、WEB先行のミックスモードで行った。この結果から得られた主な知見は、以下のとおりである。住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手でも、適切な調査設計と調査材料を作成すれば、WEB式調査は可能であるWEB式調査の有効率は、30代以上では、比較用の郵送調査と差がない水準にまで高めることができたが、現時点で、若年層の有効率の向上には効果が見られなかった WEB式調査の有効者のサンプル構成比は、住民基本台帳から大きく乖離していない なお、WEB式調査と比較用郵送調査について、回答方法の違いにより、回答差が生じるのかどうか、もし差が生じるとしたらその要因は何なのかも検証するが、この結果については、稿を改めて報告する予定である。
著者
吉藤 昌代 渡辺 洋子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.26-45, 2020

「メディア利用の生活時間調査」の2回目の報告である本稿では、特に若年層(16~29歳)のスマートフォン利用に焦点をあて、スマートフォン利用の詳細を描くとともに、具体的な利用内容と利用の際の意識との関連を探った。まず日記式調査の結果をみると、男16~29歳はスマートフォンでSNS、動画、ゲーム、音楽などを利用している。女16~29歳はSNSをメインに動画の利用も多いが、SNS・動画以外はそれほど多くなかった。 また付帯質問の結果をみると、従来パソコンなどで行っていたメールやWEB検索などの行動をそのままスマートフォンに置き換えて利用している中年層とは異なり、若年層は「SNS」や「動画」など比較的新しいサービスを活用し、複数のSNSを「検索・情報収集」「動画視聴」「ニュースをみる」などの多様な目的で使い分けていることが明らかになった。さらにスマートフォン利用時に「時間を忘れて、夢中になってしまった」り、「使ったあと、時間をむだにしてしまった」と思ったりする気持ちの有無別に利用の特徴をみると、そのような気持ちが「ある」と答える人の割合はスマートフォンを活発に利用する若年層で高く、中高年層で低い。スマートフォン利用の多寡が意識の有無に関連しているように思われる部分が多かったが、一概にそうとは言い切れない部分もあり、意識と利用状況を単純には関連付けられないことが示された。