著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.80-103, 2021 (Released:2021-07-20)

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループISSPが、2020年に実施した調査「環境」の結果から、日本人が環境問題とどう向き合い、どう行動しているのかについて報告する。 「気候変動による世界的な気温の上昇」が危険だと思っている人は75%に上る。また、「原発」が危険だと思う人は、前回の2010年調査の36%から59%へと大きく増えた。 環境問題に関する政策への態度では、気候変動についての日本の取り組みが「進んでいない」と回答した人は62%で、「進んでいる」の37%よりかなり多い。 レジでレジ袋をもらっている人は、有料化前の94%から、有料化後は50%に減少した。レジ袋の有料化がプラスチックごみの削減に「つながる」と考える人は70%で、「つながらない」の28%を大きく上回った。 環境保護への姿勢や負担意向についてみると、「私だけが環境のために何かをしても、他の人も同じことをしなければ意味がないと思う」人は6割近くに上り、特に30代までの若い年代では7割前後を占める。この割合は、日本が36か国中3番目に多かった2010年調査と変わらず、「個人の取り組みだけでは限界がある」という考えを持つ人が日本では多い。また、環境を守るためでも今の生活水準を「落としたくない」人は44%で、「落とすつもりがある」人の32%を上回っている。「落としたくない」人は、30代以下では過半数を占め、若い年代ほど多くなっている。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.64-75, 2023-06-01 (Released:2023-06-20)

NHKが2022年夏に実施した「中学生・高校生の生活と意識調査」の2回目となる今回の報告では、中高生と父母のジェンダーをめぐる意識に焦点を当てる。 大学まで進学を希望する女子は54%で、40年間で初めて男子(48%)を上回った。父母の結果をみても、10年前は、「大学まで」進学させたい親は、女子よりも男子の父母で多かったのに対し、2022年はこうした差はみられなくなった。 進学意向では男女差が解消されつつある一方で、家庭内に目を向けると、親による子への接し方は、子の性別によって異なる傾向がある。男子に対しては、「勉強が遅れている」「意思が弱い」と考える父母が多い。また、「男らしく、女らしく育てる」という考え方に賛成なのは、男子の父親で7割に上る。 それでも、中高生の多くは、伝統的な男女の役割分担にとらわれることなく、多様性に対しても寛容である。仲のよい友だちから「からだの性とこころの性が一致しない」と打ち明けられたら『理解できる』と回答したのは中学生で7割近く、高校生で8割に上る。父母の子育ての分担は、10年前から変わらず『母親主導』が多いが、中高生が思い描く将来の夫婦の子育て分担は、「父親も母親も同じくらいする」が多く、10年前の5割から7割へ大きく増えている。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.36-48, 2020 (Released:2021-04-16)

NHK放送文化研究所が加盟している国際比較調査グループISSP(International Social Survey Programme)の調査の概要について,担当者からみた意義や課題とあわせて報告する。 ISSPは1984年に発足し、約40の国と地域の調査機関が毎年,共通の質問で世論調査を実施している。日本からは,1993年にNHK放送文化研究所が加盟し,「政府の役割」「社会的不平等」「家庭と男女の役割」など多岐に渡るテーマで調査を行ってきた。同じテーマの調査を10年ごとに実施するのが特長で,国どうしの比較とともに,10年前、20年前の結果と比較して時系列の変化を捉えることができ,世界の研究者からも高く評価されている。 調査票は加盟国の活発な議論を経て,3年がかりで作成される。筆者も2016年の「政府の役割」調査の設計をスウェーデンやフランスなどのメンバーと担当し、「政府による個人情報収集の是非」や「男女平等の推進は政府の責任か」などを問う新たな質問を提案して採用された。 ISSPは,アジアやアフリカ、中東地域の加盟国が少ないことや調査予算の確保が難しいことなど課題に直面している。イギリス英語の調査票を母国語に翻訳して調査を行う難しさも抱えている。様々な課題はあるものの、各国の国民を代表するサンプルを用いた精度の高い調査データは,今後も世界の研究などに寄与していくであろう。2021年に実施する調査に新型コロナウイルス関連の質問を盛り込むことも決まり、ISSP調査に対する期待と価値は一層高まると思われる。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.78-94, 2018 (Released:2018-07-20)

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループISSPが、2017年に実施した調査「社会的ネットワークと社会的資源」の日本の結果から、他者との接触や友人づきあい、人間関係と生活満足度との関連について報告する。SNSの利用頻度と他者との接触の関係をみると、SNSを頻繁に利用している人のほうが、親しい友人との接触も多い。高齢層についても、SNSの利用者で18歳以上の子との接触が多い。50代以上の中高年男性では、友人づきあいが希薄な傾向がみられる。例えば、「悩みごとを相談できるような友人がいない」という人は、全体で2割なのに対し、男性50・60代でいずれも3割台、70歳以上では半数を超える。また、「落ち込んだときの話し相手」や「家庭の問題についてアドバイスをもらう相手」として「親しい友人」を挙げるのは、全体で4割なのに対し、男性50代以上の各年層で2割から3割程度にとどまる。生活満足度との関連では、他者との接触や友人数が多いほど、生活に満足している割合が高い。特に40、50代の中年男性では、悩みごとの相談相手の人数によって、生活満足度が大きく異なる。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.20-40, 2022-09-01 (Released:2022-10-20)

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループISSPが、2021年に実施した調査「健康・医療」の日本の結果から、医療や健康に対する人々の意識や態度について報告する。▼心身の健康状態が『よくない』と回答した人は約3割で、「自分に自信がなくなった」(自信喪失)など精神的な自覚症状がある人は4割前後いた。そうした心身の自覚症状を抱える人は、女性で多く、精神的な症状については、特に若い女性で多かった。▼「人々は、医療を必要以上に利用している」と思う人は約5割で、そうは思わない人の約2割を大きく上回るなど、日本では医療サービスが過剰に提供されていると認識している人が多い。▼一方、医師や医療制度を信頼する人が増えて、新型コロナウイルスの感染拡大への対応が医療制度に対する信頼を『高めた』という人が4割いた。ただし、新しい感染症の治療体制については、6割を超える人が『整っていない』と思っている。▼日本には必要な医療を受けられない人が『いる』と回答した人が8割を超えた。所得や国籍の違いによって、医療の受けやすさが異なると思っている人も7割以上に上る。しかし、所得の高い人が低い人より、質の高い医療を受けられることを「不公平」だと思わない人が増えている。
著者
萩原 潤治 村田 ひろ子 吉藤 昌代 広川 裕
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.24-47, 2018-07-20

世論調査の有効率の低下が課題となるなか、WEBを利用した新しい調査方式が注目されている。そこで、NHK放送文化研究所では、住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手に対し、郵送で調査への協力を依頼し、WEBで回答してもらうという「郵送依頼WEB回答方式」(以下、「WEB式」とする)の可能性を探ることにした。2016年と2017年の計2回、このWEB式の実験調査を、回答方法を「WEB回答」に限定せず、一部、補完的に「郵送回答」も受け付ける、WEB先行のミックスモードで行った。この結果から得られた主な知見は、以下のとおりである。住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手でも、適切な調査設計と調査材料を作成すれば、WEB式調査は可能であるWEB式調査の有効率は、30代以上では、比較用の郵送調査と差がない水準にまで高めることができたが、現時点で、若年層の有効率の向上には効果が見られなかった WEB式調査の有効者のサンプル構成比は、住民基本台帳から大きく乖離していない なお、WEB式調査と比較用郵送調査について、回答方法の違いにより、回答差が生じるのかどうか、もし差が生じるとしたらその要因は何なのかも検証するが、この結果については、稿を改めて報告する予定である。
著者
荒牧 央 村田 ひろ子 吉澤 千和子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.62-82, 2019 (Released:2019-07-20)

NHKが1973 年から5 年ごとに行っている「日本人の意識」調査の最新の調査結果から、政治、ナショナリズム、日常生活、基本的価値観などを紹介する。主な結果は次のとおりである。・選挙やデモ、世論などの国民の行動・意見が、国の政治に影響を及ぼしていると感じる人が、調査開始以降、長期的に減少している。・天皇に対して「尊敬の念をもっている」という人は2008年以降増加しており、今回は41%で「好感をもっている」や「特に何とも感じていない」を上回り、45年間で最多となった。・在留外国人の増加を背景に、外国人との接触も増加傾向にある。ただ、外国との交流意欲は低下している。・仕事と余暇のどちらを優先するかについては、70年代には《仕事優先》が最も多かったが、80年代から90年代前半にかけ《仕事・余暇両立》が増加し最多になった。・職場、親せき、近隣の3つの人間関係において、密着した関係を望む人が長期的に減少している。・生活全体の満足度は長期的に増加している。今回は「満足している」が39%で、「どちらかといえば、満足している」を含めると92%の人が満足している。全体を通してみると、この45年間で、どの質問領域でも意識が変化しているが、特に家庭・男女関係で変化が大きい。一方、「年上の人には敬語を使うのは当然だ」「日本に生まれてよかった」などは多くの人に共有されている意識であり、割合もほとんど変化していない。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.90-101, 2019

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループ、ISSPが2016年に実施した調査「政府の役割」の結果から、35の国・地域を比較し、日本人の政府への期待が、世界各国との比較においてどのように位置づけられるのかを報告する。「政府の責任」だと考えられている施策については、「失業者がそれなりの生活水準を維持できるようにすること」と回答した日本人が53%、「収入の少ない家庭の大学生に経済的な援助を与えること」と回答した日本人が67%で、いずれも各国の中で低い水準である。一方、「物価の安定」については9割近くに上り、各国の中では上位3分の1くらいに位置している。日本では各国と比べて、政府に対して経済面での期待が他の分野よりも大きい傾向がある。政府の支出に対する意識については、高齢者の年金を「今より増やすべき」と答えた日本人は46%となっていて、各国と比べて少ない。「防衛・軍事」については、日本を含む多くの国で「今より増やすべき」が増加していた。社会の安全を揺るがすテロ事件が世界各国で頻発するなか、テロ行為が起こる可能性がある場合に、警察が電話の会話を盗聴することの許容度についても尋ねた。日本で盗聴が「許される」という人は、2006年調査の47%から59%へ増えたほか、イスラム過激派によるテロが相次いだフランスでは77%から91%に増えていた。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.90-101, 2019 (Released:2019-08-20)

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループ、ISSPが2016年に実施した調査「政府の役割」の結果から、35の国・地域を比較し、日本人の政府への期待が、世界各国との比較においてどのように位置づけられるのかを報告する。「政府の責任」だと考えられている施策については、「失業者がそれなりの生活水準を維持できるようにすること」と回答した日本人が53%、「収入の少ない家庭の大学生に経済的な援助を与えること」と回答した日本人が67%で、いずれも各国の中で低い水準である。一方、「物価の安定」については9割近くに上り、各国の中では上位3分の1くらいに位置している。日本では各国と比べて、政府に対して経済面での期待が他の分野よりも大きい傾向がある。 政府の支出に対する意識については、高齢者の年金を「今より増やすべき」と答えた日本人は46%となっていて、各国と比べて少ない。「防衛・軍事」については、日本を含む多くの国で「今より増やすべき」が増加していた。社会の安全を揺るがすテロ事件が世界各国で頻発するなか、テロ行為が起こる可能性がある場合に、警察が電話の会話を盗聴することの許容度についても尋ねた。日本で盗聴が「許される」という人は、2006年調査の47%から59%へ増えたほか、イスラム過激派によるテロが相次いだフランスでは77%から91%に増えていた。
著者
村田 ひろ子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.78-94, 2018

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループISSPが、2017年に実施した調査「社会的ネットワークと社会的資源」の日本の結果から、他者との接触や友人づきあい、人間関係と生活満足度との関連について報告する。SNSの利用頻度と他者との接触の関係をみると、SNSを頻繁に利用している人のほうが、親しい友人との接触も多い。高齢層についても、SNSの利用者で18歳以上の子との接触が多い。50代以上の中高年男性では、友人づきあいが希薄な傾向がみられる。例えば、「悩みごとを相談できるような友人がいない」という人は、全体で2割なのに対し、男性50・60代でいずれも3割台、70歳以上では半数を超える。また、「落ち込んだときの話し相手」や「家庭の問題についてアドバイスをもらう相手」として「親しい友人」を挙げるのは、全体で4割なのに対し、男性50代以上の各年層で2割から3割程度にとどまる。生活満足度との関連では、他者との接触や友人数が多いほど、生活に満足している割合が高い。特に40、50代の中年男性では、悩みごとの相談相手の人数によって、生活満足度が大きく異なる。