著者
吉野 和寿
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)はミトコンドリアマトリックスに局在する短寿命タンパク質として知られている。ALASはヘム生合成系の律速酵素であることから、酵素量の調節はポルフィリン症と密接に関係している可能性がある。本研究ではALAS量の調節に関し、ラット肝臓ミトコンドリアにおけるALAS分解とその制御について検討した。これまでに初代培養ラット肝細胞及びミトコンドリアにおいて、ヘム生合成阻害剤存在下でALAS分解が抑制され、さらにhemin添加によりその抑制が解除されることを見出している。このことは、ヘムによる律速酵素分解速度調節を介したヘム生合成制御機構の存在を示唆するものである。昨年度、ALAS分解制御について解析した結果、ミトコンドリアにおけるALAS分解を促進する因子として、ヘムの他にcysteine (Cys)とascorbic acid (ASA)を同定した。今年度、これらの因子により促進されたALAS分解について解析を行い、以下に示す結果が得られた。ヘム生合成阻害剤投与ラット肝臓ミトコンドリアにおけるALAS分解について、プロテアーゼ阻害剤の影響を検討したところ、(1)Cysにより促進されるAbAS分解は、システインプロテアーゼ阻害剤であるleupeptinやE-64dにより阻害された。(2)heminやASAにより促進されるALAS分解は、leupeptin、E-64d、PMSF、o-phenanthoroline、epoxomicinにより阻害されず、効果的なALAS分解の阻害剤を見出すことが出来なかった。しかしながら、このALAS分解はラジカルスカベンジャーであるMCI-186により阻害された。これらの結果から、ミトコンドリアにおけるALAS分解は、システインプロテアーゼによるものとラジカルが関与するものの少なくとも2通りの分解様式があることが示めされた。