著者
吉野 志保
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.237-246, 2003-12-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
8

本研究の目的は,言語音声学習に効果的な字幕の提示方法を提案することである.字幕は,利用が容易で聞き取り場面での効果も確認されているメディアであるが,その提示方法に関して,情報処理過程に基づく検討が行われたことはない.本研究では,字幕を言語文字情報と捉え,その処理過程に基づき,より学習効果の高い字幕の提示方法についての検討を行った.具体的には,字幕を音声に対して先行提示することにより,英語字幕では音声化の強化,日本語字幕では音声情報との適切な情報処理が可能となり,再生成績が上昇すると想定し実験を行った.その結果,日本語字幕については,再生成績に変化がなく,再検討の必要がある結果となったが,英語字幕は,音声よりも平均無音声時間分先行提示した場合に,再生成績が有意に高くなったことから,このような字幕提示方法によって,英語字幕を用いた教材の学習効果を高められる可能性が示唆された.
著者
吉野 志保 野嶋 栄一郎 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.29-32, 1997
参考文献数
4
被引用文献数
3

本論文では, 字幕の種類による理解の効果について述べている.英語音声付き映像を用いた英語の聞き取り場面を設定し, 字幕を付加した.その場合の字幕の種類により異なる効果が, 再生にどのような影響をもつのかについての認知的な実験を行った.その結果, 英語字幕が英語の再生に最も有利であった.英語字幕では, 2つのモダリティ(視覚・聴覚)による情報の入力が再生に有効に作用し, 単純に再生された英単語数が最も多いだけでなく, 意味的なまとまりとして理解されていることが示唆された.日本語字幕は, 聴覚からの入力情報(英語)と異なる視覚情報(日本語)を同時に与えるために, 英語の聞き取りや記憶を阻害すると考えられた.