著者
清原 一暁 中山 実 木村 博茂 清水 英夫 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.117-126, 2003
参考文献数
11
被引用文献数
9

本研究では,印刷物による提示とコンピュータ画面の提示による文章理解の違いを調べ,わかりやすい文章提示の方法を検討した.文章の理解度を内容に関するテスト成績で調べた.その結果,表示メディアについては,提示方法によらず印刷物がディスプレイに比べて良いことが分かった.また,LCDがCRTよりも理解度において優れていることが分かった.さらに,すべての表示メディアにおいて,明朝体と比べてゴシック体の方が文章理解において成績が良い事を明らかにした.
著者
森田 健宏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.39-44, 1999-08-20
被引用文献数
4

幼児向け教育テレビ番組(NHK教育)をサンプルに, その中で用いられている映像技法2種(カット技法・ズーミング技法)の実態を明らかにした.その結果, カット技法については, 幼稚園教育要領の5領域のうち, 「表現」領域を主なねらいとした番組では, 同時カット技法が多く含まれ, 「環境」領域を主なねらいとした番組では, カット自体は少ないが継時カットの比率が高いことが明らかになった.また, ズーミング技法については, 「表現」領域の番組が最も多用されており, 秒間拡大率・縮小率も高い値を示していた.
著者
中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 1999-06-20
被引用文献数
12

近年の学習環境論において学習者自身が学習過程の再吟味を行うことの重要性が主張されている.本論文の目的は,学習過程を重要視する学習環境のデザインと,それが学習者にもたらす変容を明らかにすることである.研究方法としては,「エスノグラフィー(ethnography)」を採用する.より具体的には,ある学習環境における空間配置・学習材・ストラテジ- (strategy)の3つの学習活動を構成する「リソース(resource)」について考察を加える.それをふまえた上で,他者に対する学習過程の内省的認知活動である「語り(Narrative)」とそれらリソースとの関係を論じる.上記の認知活動は,研究対象の実践において特異に観察された.「語り」は,3つのリソースが「協調(coordination)」して構成される内省的な認知活動である.学習者にとっての「語り」の教育的効果は,学習そのものをどう定義するかという認識のレベル-「メタ学習観」の転換・変容に存在する.以上の議論をふまえ,学習活動支援の方法としての「語り」を概観し,「語り」を誘発する学習環境のデザインについて本稿からの示唆を述べる.
著者
山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.299-308, 2003-03-20
被引用文献数
13

本論文では,電子ネットワークで結ばれた専門家と学校の実践共同体に学習者がどのように参画するかについて,グラウンデッドセオリー・アプローチを参考にした質的な研究方法を用いて明らかにする研究を行った.その結果,学習者は電子ネットワークヘの親和性や科学観・学習観の相違,重なり領域の実践の特殊性などの要因によって,実践共同体へ多様な参加軌道を描くことが明らかになり,学習目標と実践共同体との対応・重なり領域の実践への援助・学習者の状況の把握という学習環境デザインヘの示唆が導出された.
著者
魚崎 祐子 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.165-170, 2000-08-20
被引用文献数
11

テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が文章理解に及ぼす影響を実験的に検討した.その際プロンプトという観点から, テキストによって予め与えられる下線強調と学習者自身がひく下線との効果の違いについて比較した.実験手順としては制限時間内のテキスト読解を行い, 直後と1週間後に再生テストを行った.その結果, 限られた時間の中で全体を把握するという点では下線をひくことの影響が見られず, テキストにつけられた下線は再生率を高めるがその効果は長く続くものではないということがわかった.また, 読解時間が長くなるにつれて下線部からの再生の割合が高くなっていくということが明らかになった.
著者
今栄 国晴 平田 賢一 清水 秀美 北岡 武 中津 楢男 西之園 晴夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.107-115, 1984-01-20

教育工学専門家に要求される能力(コンピテンス)を調べるために,日本科学教育学会など4学会の会員に,能力に関する質問90項目を主体とする調査票を郵送し,563名の有効回答を得た.因子分析の結果,5因子が抽出されたが,小・中・高の学校や教育センターに勤務する教育工学教師には,授業設計・授業研究能力因子とメディア制作・機器操作能力因子が重視され,大学・研究所勤務の専門家には,それらとともに,とくに研究能力が重視され,さらに,教育システム開発運営能力因子や教育に関する基礎知識因子も比較的重視されていることがわかった.このことは,教育工学専門家を養成する場合,その将来の勤務先によって養成すべき能力に大きな差があることを示唆している.なお,米国AECTのスペシャリストに要求される能力表との比較検討も行われた.
著者
魚崎 祐子 伊藤 秀子 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.349-359, 2003
参考文献数
14
被引用文献数
20

テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が文章理解に及ぼす影響について,文章の難易度と読解時間という2要因に着目し,テキストに予めつけておいた下線強調との比較という点から実験的に検討した.自分で下線をひくことのできるアンダーライン群,キーワードなどを下線で強調したテキストを与えられるプロンプト群,統制群の3群に被験者を分け,テキスト読解の後に自由記述形式の再生テストを行った.その結果,テキストの下線強調は文章の難易度や読解時間の長さに関わらず,強調部分の再生を高める効果を持つことが示された.一方,学習者の下線ひき行為が有効であるのは,難解なテキストの読解において十分な読解時間を与えられた時に限定された.また,テキストにつけられた下線,自分でひいた下線ともに下線部以外の再生は促進しないということ,下線の有無に関わらずテキスト中の重要な概念ほど再生されやすいということも明らかになった.
著者
野崎 浩成 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.121-132, 2000-09-20
被引用文献数
2

近年,新聞を活用した教育(NIE)が注目されており,新聞記事を学習教材として利用する機会が多くなった.しかし,新聞は成人読者を主な対象としており,日本人小中学生や外国人留学生にとっては,新聞に掲載されているすべての漢字を理解できるとは言い難い.そこで,本研究では,新聞記事1ヶ年分を対象に漢字の頻度特性を分析し,新聞を読むためには,どのような漢字を学習すべきなのかを検討した.その結果,(1)新聞紙面上での漢字の占める割合は,41.46%であり,平仮名で34.06%,片仮名で6.34%など,他の文字種と比べて,漢字の使用率が著しく高かったこと,(2)基本漢字500字および学年別漢字配当表を習得すれば,それぞれ70.41%, 89.84%の割合で,新聞に出現する漢字をカバーできること,(3)新聞での使用頻度が高い漢字であっても,学年別漢字配当表には掲載されていない漢字が数多く存在すること,などが示された.以上の結果から,本研究では,NIEのための漢字学習表を開発し,新聞を教材として利用する際に,学習者に教授すべき漢字は何かを明らかにした.
著者
清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.suppl, pp.13-16, 1998-08-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
5

初等中等教育における情報教育が, 新しい展開を迎えることになった.特に, 高等学校において, 新しい教科「情報」が設けられることになったことが大きい.また, 中学校における「情報基礎」が必修となり, 新たに発展的な選択領域が設けられる.そして, 小学校では, 新たに設けられる「総合的な学習の時間」等において, コンピュータやインターネット等の情報手段に慣れ親しむことから, 始められる.具体的な教育内容については, 教育課程審議会で検討されるが, 新しいカリキュラムは西暦2002年から実施される見込みである.そこで, ここでは, 従来の情報教育との比較から, 今後の情報教育の展開について述べる.
著者
中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 1999-06-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31
被引用文献数
4

近年の学習環境論において学習者自身が学習過程の再吟味を行うことの重要性が主張されている.本論文の目的は,学習過程を重要視する学習環境のデザインと,それが学習者にもたらす変容を明らかにすることである.研究方法としては,「エスノグラフィー(ethnography)」を採用する.より具体的には,ある学習環境における空間配置・学習材・ストラテジ- (strategy)の3つの学習活動を構成する「リソース(resource)」について考察を加える.それをふまえた上で,他者に対する学習過程の内省的認知活動である「語り(Narrative)」とそれらリソースとの関係を論じる.上記の認知活動は,研究対象の実践において特異に観察された.「語り」は,3つのリソースが「協調(coordination)」して構成される内省的な認知活動である.学習者にとっての「語り」の教育的効果は,学習そのものをどう定義するかという認識のレベル-「メタ学習観」の転換・変容に存在する.以上の議論をふまえ,学習活動支援の方法としての「語り」を概観し,「語り」を誘発する学習環境のデザインについて本稿からの示唆を述べる.
著者
滝田 亘 中山 実
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.suppl, pp.81-84, 2004-03-05 (Released:2017-10-20)
参考文献数
6

本研究では,文章を視覚と聴覚で提示した場合の記憶への影響を調べるために,課題文を視覚と聴覚で提示し,提示文章の内容について問題文により真偽判定する実験を行った.課題文に含まれる命題数が記憶に与える影響について,問題文での正答率と反応で検討した.その結果,3〜5命題課題において,視覚提示時の正答率は聴覚提示時の正答率より有意に高くなった.また聴覚提示について,2〜5命題課題においては,提示文章の命題数増加に伴い正答率は有意に低下した.問題文に対する判断の難易度を信号検出理論のd'を用いて検討した.その結果,視覚提示では命題数による低下は認められなかった.聴覚提示では,命題数増加に伴い,正誤の判断が有意に難しくなった.
著者
益川 弘如
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.89-98, 1999-09-20
被引用文献数
16

ノートやメモなど自分が書いたものを後から見直すとき,作成時に利用した資料がすぐに参照できると,書かれた内容をより発展的に利用できると考えられる.また,他人のノートについても同様のことができると,お互いに相手が何をどう考えてきたかが分かりやすくなり,協調的な学習支援につながるであろう.そのような相互参照の履歴を活用する「相互リンク機能」を備えた協調学習支援ノートシステム「ReCoNote」を製作,実際に大学の授業で使用し,評価した.あるグループでは話し合いなどを進める前に,各自がお互いのノートどうしにリンクを作成して関連付けを行っていた.その相互リンクをみんなで活用して,お互いに考えたことをグループで共有しながら話し合いが進められ,質の高い教え合いが起きていた. ReCoNoteの活用により全体としてさまざまなノートや資料にリンクが結ばれ,協調的な学習が進んだと考えられる.
著者
伊藤 崇達 神藤 貴昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.377-385, 2004-03-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究は,自己効力感,不安,自己調整学習方略,学習の持続性に関する因果モデルの検証を行うことを目的とした.自己効力感尺度,学習時の不安感尺度,認知的側面の自己調整学習方略尺度,自己動機づけ方略尺度,学習意欲検査(GAMI)の下位尺度である持続性の欠如が,中学生449名に対して,試験の1ヶ月前と1週間前の2回にわたり実施された.共分散構造分析によって検討を行った結果,以下のことが明らかとなった.(1)自己効力感が高いものほど,認知的側面の自己調整学習方略と内発的調整方略をよく用い,外発的調整方略は用いていなかった.(2)学習時の不安感が高いものほど,認知的側面の自己調整学習方略,内発的調整方略,外発的調整方略をよく用いていた.(3)内発的調整方略の使用は,学習の持続性の欠如と負の関連を示し,外発的調整方略の使用は,学習の持続性の欠如と正の関連を示していた.
著者
田中 敬志 小林 聡 中川 聖一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.273-282, 2003-12-20
参考文献数
18
被引用文献数
1

これまでに多くの語学学習教材が開発されてきているが,その製作においては多大な時間と労力がかけられている.また,これまでの語学学習教材では,そのコンテンツが限られているため,長時間飽きずに使用を継続することは困難であり,さらに学習者が興味のあるコンテンツを選択する余地はない.そこで本研究では,学習者に興味のあるTVニュース放送をパソコンに取り込み,そのニュース放送を素材とした学習教材を教師または学習者自身で手軽に作成することができるシステムを開発した.勿論,本システムは教師や学習者が自前で収録したビデオを語学学習教材化することもできる.本論文では特に,副音声と字幕の同期手法を取り入れた教材作成システムと教材プレイヤーによって実現される各機能とシステム全体の評価について述べる.教材プレイヤーを用いた被験者実験では学習効果が得られ,それらの評価アンケートでも教材について肯定的な意見が得られた.
著者
久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.163-173, 1997
参考文献数
28
被引用文献数
2

質的研究の重要性は教育工学分野においても,次第に認知されるようになってきた.しかし,まだ当学会内において質的研究に関する評価基準は十分に確立されているとは言えない.そこで本稿では,量的研究と質的研究のパラダイムの違いが,研究方法や評価基準の違いに関係してくることを明らかにする.研究方法論の違いは,単なる手法の違いではなく,パラダイムの基本前提に根ざしたものであり,量的研究の評価基準をそのまま質的研究に当てはめることはできない.そのため,質的研究の評価をするためには量的研究とは違った基準を設定する必要がある.また,質的研究には多様なアプローチがあり,厳密な基準を一元的に当てはめることも適切ではないことに言及し,これからの教育工学における質的研究の評価について展望する.
著者
向後 智子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.87-94, 1998
参考文献数
13
被引用文献数
6

本研究はマンガによる学習内容の提示が理解と保持に及ぼす影響について検討した.学習内容部分とストーリー部分を含むマンガを材料として,(1)マンガか文章かによる学習内容部分の表現方法の違い,および,(2)マンガによるストーリー部分の提示の有無の2つの要因が内容の理解と保持に及ぼす効果について実験した.各要因が理解の深さにどのように効いているのかを検討するために,解答に必要とされる理解の度合いが異なるようなテストを3種類用意し,読解直後と1週間後にテストを行った.その結果,解答にあまり深い理解を必要としない場合,マンガによる学習内容部分の提示が有効であるが,推論や新しい事態への知識の適用が必要とされるテストでは,マンガによるストーリー部分を提示することが成績を有意に高めることが明らかになった.また,実験後のアンケート結果から,関心度はストーリー部分を含む全体を提示することによって高まることがわかった.
著者
山本 朋弘 池田 幸彦 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.153-156, 2004-03-05
参考文献数
2
被引用文献数
2

体育の「跳び箱運動」で,教師がどの程度実技を提示できるかを調査し,高学年の種目において,動画コンテンツの有用性について検討した.また,動画コンテンツを活用した授業実践を進め,子どもの意識調査や習熟状況を分析し,動画コンテンツを活用した場合の学習効果について検討し,自ら課題を明確にさせる上で学習効果があることを明らかにした.また,動画コンテンツを用いた学習は早い段階でさせた方がいいことを示した.
著者
西之園 晴夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.183-190, 1998-03-20
被引用文献数
1
著者
松下 幸司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-32, 2001-08-20
被引用文献数
1

学習形態の異なる3つの小学校の『総合的な学習の時間』の試行的実践終了後, 実際に学習活動を行った児童に質問紙調査を行ったところ, 「またやりたい」と学習活動に対し前向きな学習意欲を示した児童らは, 「内容・方法の多様性」「知的欲求の充足」などを正評価の理由として挙げる傾向にあることが明らかになった.逆に, 学習活動の中に「おもしろかった」と認識しうる体験活動があったとしても, 「自らの活動スキルに対する不安」「教師との人間関係上の問題」「活動目的が見出せない」などが, 学習意欲を低減する要因として働く可能性があることが示唆された.