著者
吉野 茂 中川 宏 島津 哲治 竹下 真大 迎 和男 大川 裕行
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.G0405-G0405, 2004

【はじめに】我々理学療法士(以下PT)は、患者を治療し診療報酬を得ている。しかし、PTの診療報酬、あるいは収益についてコストを考慮して言及した報告は少ない。そこで今回、PTに関わるコストを概算し、当院PTの現状と課題について検討したので以下に報告する。<BR>【コスト発生要因】患者を治療するに当たり発生するコストは固定費と変動費に分けられる。まず、固定費として、運動療法室、スタッフルームなど建物自体の減価償却費、その中にある備品の減価償却費がある。これらは、投資額を耐用年数で割れば概算は可能である。次に、変動費として、光熱費、人件費などが上げられる。以下に詳細を記載する。<BR>【変動費の詳細】当院入院患者を治療する際の流れに沿って考えると、まず医者が処方箋を記載する。それを看護師(以下Ns)または診療助手がリハビリテーション科(以下リハ科)まで持参する。リハ科受付が受理し、時間などを病棟に連絡しリハ開始となる。リハ開始となると、Nsや診療助手により患者が搬送され理学療法を施行する。理学療法終了後、リハ科受付が病棟に連絡し、Nsまたは診療助手が病棟へと搬送する。理学療法の内容により点数を決め、リハ科受付がパソコンに入力する。月末に医事課で取りまとめ請求業務を行う。ここまで、医者、Ns、診療助手、事務職員の人件費が掛かっている。更には光熱費、カルテ管理に関するコストも掛かっている。これらを概算すると170万円/月となる。<BR>【収益】PT5名、施設基準 IIの当院理学療法部門では概ね240万円/月のコストが発生している。このコストには、PTの人件費、学会出張費、会議費、研究費などは勘案されていない。当院の現在の収益は約350万円/月である。ここからコストを差し引くとPT一人あたりの純益は22万円であり、すべてを人件費と考えても、我々の給与は22万円が限度となる。平成14年の診療報酬改定前は総収入が550万円/月でありPT一人あたりの純益は62万円であった。現行の診療報酬体系に変わり、我々は自分の人件費も得られないような状況となっている。もちろん、収益を第一に患者を選択的に治療すれば、増収は可能であろうが、リハを必要とする多くの患者を見放すことはできない。このままでは理学療法部門は赤字部門となり、整理統合する病院が出てくることが予測される。我々PTは最低限コスト意識を持ち収益向上に努めることはもちろんであるが、患者に必要な理学療法を提供できない現状を早期に調べ、現状の体系見直しを訴えていくことが必要である。<BR>【まとめ】理学療法に関わるコストを明らかにすることで次のような結論を得た。(1)我々が治療する際にはコストが掛かる。(2)理学療法士はコスト意識をもつ必要がある。(3)現状の診療報酬ではPTの人件費を得ることさえ難しい。(4)収益向上を追及すれば、患者に必要なリハを提供できなくなる。