- 著者
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吉野敏行
- 出版者
- 人間環境大学
- 雑誌
- 人間と環境 (ISSN:21858365)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.57-73, 2016-12-31
A(I 人工知能)の急速な発展が今後の経済社会にどのような影響を及ぼすか、特に資本主義社会への影響とポスト資本主義社会への展望について考察した。資本主義社会は本来的に資産家と労働者との所得格差を拡大する仕組み(ピケティのr > g)をもっているが、先進諸国では、すでに利子率と経済成長率がゼロ水準となり、利潤率も2%以下に低下しつつある。さらにAI が人間の知能を凌駕する「シンギュラリティ」までに、労働力人口の5 割から最大9 割がAI と労働代替すると予測され、資本主義社会はすでに末期状態にある。ポスト資本主義社会は「20 世紀の社会主義社会」とは異なる「理想の社会主義社会」である。基本的人権が保障され、ベーシックインカムが所得原則となり、AI による最適な計画経済が実現される経済成長率ゼロの「定常世界」である。AI は資本主義の終焉と真正社会主義社会を実現する物質的・技術的基盤である。