著者
名久井 恒司 能村 貴宏 秋山 友宏
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.63-73, 2017-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

本研究では国家プロジェクト等で開発中の水素エネルギーシステムに用いられる水素キャリアをエクセルギーにより評価する方法を提示した.水素のエネルギーキャリアとしての効率を示すために,水素長距離輸送の代表的キャリア3種(有機ケミカルハイドライド,アンモニアおよび液体水素)にその評価方法を適用し,試算した.さらに日本国内で配送する段階での形態である圧縮水素のエクセルギー損失についても考察した.これらを基にキャリアごとに,プロセスでのエクセルギー損失を水素の燃料としての化学エクセルギーに対する比で表し,類型ごとに評価した.いずれの形態でも現状技術では変換および長距離輸送の過程で水素の化学エクセルギーの約40–50%に相当するエクセルギーが失われる.さらに配送・充填の段階での損失が約17%あるので,現状の技術ではシステム全体で約半分以上のエクセルギーが失われることが判明した.プロセスから放出される未利用のエクセルギーを回収・利用により10–30%超の効率改善の可能性があり,今後水素を主要なエネルギーキャリアとするためにはその方法を実現する技術の開発が必要である.