著者
大谷 吉生 江見 準 森 治朔
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.240-247, 1992-03-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

円形断面を持つ正負に分極したエレクトレット繊維からなる帯電フィルターの初期捕集効率推定式を, クーロン力, 誘起力, さえぎりが作用する場合について導出し, 実験結果との比較を行うことによりその式の妥当性を検証した.さらに, エレクトレットフィルターの捕集効率の経時変化を, 湿潤空気, 固体粒子, 液体粒子を流した場合について実測し, 集塵性能の安定性について実験的に検討した.その結果.エレクトレット繊維の電荷は湿潤雰囲気中でも安定であることがわかった.また.固体粒子を濾過した場合, 本実験で使用したような1μm程度の微細繊維からなるフィルターでは, 捕集された粒子による電荷の中和速度に比べてさえぎり効果の増加速度が大きいため, 捕集効率は時間とともに上昇することがわかった.しかし, 有機物質からなるミストの濾過にエレクトレットフィルターを用いると, 粒子が無帯電であっても液滴が繊維表面を被うため, 電荷の中和あるいは電界の遮蔽が起こり, 捕集効率は徐々に無帯電フィルターの捕集効率まで低下することが確かめられた.
著者
鵜飼 健司 中山 淳一 豊倉 賢
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.682-685, 1998-07-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
2
被引用文献数
1

塩化カルシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液との反応において, 反応初期に生成する非晶質炭酸カルシウム懸濁溶液中に塩化ナトリウム結晶を添加し, その添加時間を変えることにより生成するカルサイトの粒径分布に及ぼす影響を検討した.また, 操作温度が293Kから328Kの範囲において塩化ナトリウム結晶を添加することにより菱面体カルサイトが選択的に生成する事を明らかにした.
著者
松本 啓吾 武野 計二 大島 義人 小林 真
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.48-54, 2015-01-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

福島第一原子力発電所事故による放射性物質汚染地域の有効活用のため,草本系エネルギー作物であるエリアンサスを栽培し,ガス化発電するシステムを想定した基礎検討として,ガス化炉を模擬した管型試験炉を用いた基礎試験および平衡計算結果をもとに,放射性物質で最も危険性が憂慮されるCsの各機器への移行について評価した.エリアンサスを用いた管型試験炉による基礎試験の結果,電気炉後流の冷却過程におけるCs回収率は,ガス化時に近い熱分解条件では0.4%以下となり,燃焼条件(10%以上)に比べて非常に低いことが示された.この理由を平衡計算により考察した結果,燃焼条件では低温でも高分圧で存在するCsNO3が熱分解条件では生成しないためであることが示された.また,マスヒートバランス検討をもとに放射性物質の気相中への飛散や排水中への混合を極力低減したガス化システムを提案し,平坦農地を確保可能な福島県浪江町の居住制限区域を例としてケーススタディを実施した結果,ガス化プロセスが放射性物質汚染地域活用の有効な手段のひとつであることが示された.
著者
阿尻 雅文 佐藤 修 町田 勝彦 斎藤 功夫 新井 邦夫
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.505-511, 1997-07-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
55 67 32

本研究では, PETのケミカルリサイクルの可能性を明らかにすることを目的とし, 超臨界水中におけるPETの分解反応の特性を検討した.PETは超臨界水条件下 (温度673K, 圧力40MPa) では5分間で完全に加水分解し, 反応時間12.5分では純度97%のテレフタル酸が収率91%で回収できた.反応温度は, PETの分解速度, テレフタル酸の回収率に大きな影響を与え, 573K (40MPa) とすると, 90%以上のテレフタル酸回収に90分を要した.超臨界水中での実験で, 圧力が反応に与える影響を検討したところ, 高圧条件に保つことで, 熱分解の進行による変性残渣や二酸化炭素の生成, すなわちテレフタル酸からの脱炭酸が抑制されることが明らかになった.
著者
新井 親夫 若林 泰憲 水野 章 小松 一郎 佐納 良樹
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.241-244, 1983-05-10 (Released:2010-03-15)
参考文献数
5
被引用文献数
2

無機塩の飽和水溶液と平衡な気相の相対湿度が常温で50%以下になるような塩を使用し, 湿度を10~50℃の範囲で測定した. 低湿度が得られる場合には溶液と共存する塩の固相が結晶水をもち, かつ結晶水に転移の起こることが多い. 測定温度範囲に転移点のある塩について転移温度近傍における相対湿度の変化を示した. また, 塩が不純物を含む場合であっても純粋な塩を使用して得られる湿度との差は少なく, 調整のみが目的であれば粗製塩が使用できることを示した.
著者
高橋 幸司 高畑 保之 今井 敏彦 志斎 金一
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.479-482, 2011-11-20
被引用文献数
1

持続可能な開発が望まれている近年,バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルであるため環境負荷が少なく,注目を集めている.その中で最も実社会への普及が進んでいるのがBDF(バイオディーゼル燃料)であろう.BDFは植物油を原料として製造され,廃棄の面倒な廃食油からも製造可能である.加えて軽油に比べ硫黄酸化物の排出が少なく,環境に優しい.このようにさまざまなメリットを有することからも,より一層の利用の拡大が望まれている.日本では近年小型のBDF製造装置が開発され,企業だけではなく自治体や学校,福祉介護施設などで導入され,BDFがその団体のバスやトラック,公用車などに使用されている.しかしながら市販されている装置は液体混合に基づいた最適化が成されているとはいえず,操作性が悪いことに加え価格が高く,普及のための大きな障害となっている.<br>本研究ではBDF製造工程に配慮して装置を見直し,すでに市販されているものよりも高性能な装置の開発を目的に種々の検討を加えた.実験結果よりBDF製造においては円錐底円筒槽よりも四角錐底角型槽の方が撹拌状態において有効であることを明らかにし,このことにより操作時間の大幅な軽減と,装置の小型化に成功し,低価格の実現を可能とした.さらに,本研究成果に基づきBDF製造装置を開発し市販するに至った.
著者
堀 隆博 斎藤 恭一 古崎 新太郎 須郷 高信 岡本 次郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.795-800, 1987-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8

放射線グラフト重合法によってアミドオキシム型キレート樹脂を合成し, 海水中におけるウランと樹脂との吸着平衡関係を調べた.短時間で平衡に到達させるため, アミドオキシム基量を1kg基材あたり0.105 mol以下に制御した.アミドオキシム基量が0.064 mol/kg-BP以下の樹脂では, 海水中でのウラン吸着が飽和に達していた.グラフト鎖上で隣接した二個のアミドオキシム基が, ウラニルイオン一個を捕捉し, 単独のアミドオキシム基はウラン吸着に寄与しないと考えた.隣接アミドオキシム基とウラニルイオンの錯形成の反応式から, Langmuir型吸着平衡式を導き, 吸着平衡の実験結果を整理した.全アミドオキシム基量0.105 mol/kg-BPの樹脂について, 隣接アミドオキシム基量は, そのうち0.39%という結果を得た.
著者
千葉 繁生 大山 恭史 播磨 和幸 近藤 和夫 篠原 邦夫
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.412-415, 1996-03-10
参考文献数
4
被引用文献数
1 4

Agglomerates of 100250 μm consisting of Si<SUB>3</SUB>N<SUB>4</SUB> primary particles of 0.76 μm were made with a rotary vibrating sieve. Si<SUB>3</SUB>N<SUB>4</SUB> fine particles were coated with AlN by gas phase reaction with AlCl<SUB>3</SUB> and NH<SUB>3</SUB> in some fluidized beds of the agglomerates. The cross sectional distribution of AlN in the agglomerate was measured by EPMA analysis. As a result, uniform deposition of AlN was obtained at a relatively low reaction temperature and low gas velocity.
著者
花熊 克友 山本 順三 中西 英二
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.686-688, 1998-07-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
4

プロセス制御では, 雑音が重畳した信号のリアルタイム平滑化処理に移動平均法や指数平滑フィルタが使用される.しかし, 応答遅れが大きいプロセスの信号に適用した場合, 大きな位相時間遅れが生じ, 制御を難しくする.本論文では, 移動平均法を改良した, 位相時間遅れの少ない簡易設計法を提案する.本法を実プロセスの組成データに適用した結果, 有効であることがわかった.
著者
中山 政行 一寸木 修二 小山田 大和 関谷 庸 溝辺 薫 田隈 広紀 亀山 秀雄
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.173-177, 2015-03-20 (Released:2015-03-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

地域における再生可能エネルギーの普及・定着に向け,小田原市久野地域の久野川(準用河川)を対象に,マイクロ水力発電システムの導入実験を実施した.地域の要望であるエネルギーの地産地消を実現させるためには,住民レベルで実行可能な導入手順や機器の提示,方法論などが必要とされている.本稿では,具体的な導入手順や機器の提示,方法論を例証することを目的に,エネルギー利用プランの検討や電力量の試算,発電ポテンシャルの測定,適正技術の選定を実施し,マイクロ水力発電システムの導入実験を試みた.これらの活動を通して,地域におけるマイクロ水力発電システム導入に有効な一手順が例証されたため報告する.
著者
田中 真人 伊積 孝 吉村 浩喜
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.668-673, 1985

自由液表面からの気体の巻き込みと巻き込まれた気泡の定常分散が開始される攪拌速度が翼形状, 邪魔板枚数翼位置, 液深, 槽径, 表面張力のような因子を変化させることによって, また, ドラフトチューブを設置することによって測定された.検討されたすべての翼 (6枚羽根デスクタービン, 4枚羽根角度付ファンタービン, 3枚羽根プロペラ) に対して, 邪魔板の設置とその枚数の増加は気体巻き込み攪拌速度を増加した.4枚邪魔板条件に対して, 次のような実験式を得た.<BR><I>N</I><I><SUB>re</SUB></I><SUP>2</SUP><I>d<SUB>i</SUB></I>/<I>g</I>=<I>A</I> (σ/σ<SUB>0</SUB>) <SUP>3.6</SUP> (<I>d<SUB>i</SUB></I>/<I>D<SUB>T</SUB></I>) <SUP>-3.6</SUP> (<I>h<SUB>L</SUB></I>/<I>D<SUB>T</SUB></I>) <I><SUP>c</SUP></I> (<I>h<SUB>L</SUB></I>-<I>h<SUB>i</SUB></I>/<I>h<SUB>L</SUB></I>) <I><SUP>d</SUP></I><BR>ここで, <I>A, c, d</I>は翼形状に依存している.<BR>デスクタービンを除く翼に対して, ドラフトチューブの設置とその長さを長くすると気体巻き込み攪拌速度を増加した.さらに, 邪魔板とドラフトチューブを同時に設置するとすべての翼に対して気体巻き込み攪拌速度を増加することがわかった.
著者
米井 祥男 小針 正夫 横山 千昭 新井 邦夫
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.674-682, 1995-07-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

高圧CO2によりたばこ葉から高品質フレーバーを抽出するための最適操作条件の決定法の確立を目的として, 液体および超臨界CO2を溶剤とし, 半回分と回分抽出実験を行い, 操作条件とフレーバー品質との関係の体系化を行った.まず, フレーバー成分を化学的特性から水溶性フレーバー, 精油, 不揮発性フレーバーの3つの成分に分類する汎用的な方法を提案した.この方法に基づきたばこフレーバー成分を分類し, 各成分の主要成分としてニコチン, ネオフィタジエン, ソラネソールをそれぞれ選定した.次に, 操作条件と抽出物の主要成分組成ならびに品質との関係について検討した.その結果, 操作条件により抽出物の主要成分組成を広範囲に制御できることがわかり, 操作条件と主要成分組成との関係を表す操作マップを作成した.また, 官能検査から高品質なフレーバーの主要成分組成は特定の領域にあることが明らかとなり, 品質と主要成分組成との関係を組成マップとして表した.操作マップと組成マップの両者を用いることで, 目標品質のたばこフレーバーが得られる最適操作条件を決定することが可能となった.
著者
柴田 望洋 松山 久義
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.395-402, 1989
被引用文献数
3 7

符号付有向グラフを用いた異常診断法の精度を, 最大候補集合によって評価する方法を提案した.さらにこの方法を酢酸製造プロセスへ適用し, その有効性を明らかにし, 包絡候補集合を利用した評価法と比較した.測定点の最適配置問題, 異常時における対応措置決定システム等への応用が考えられる.
著者
峯 浩二 宇治田 吾朗 田谷 正仁
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.119-124, 2014

チューベローズ(<i>Polianthes tuberosa</i>)カルス培養液からの多糖類(TPS)の分離・回収に関し,工業化に向けたろ過装置運転における操作指針の検討を行った.ろ過助剤を用いた加圧型ろ過機によるデッドエンド定圧ろ過において,同一の透過流束下では,単位膜面積当たりのプレコートろ過助剤量の増大とともにろ液の光学的透過度は上昇した.プレコート層の流動抵抗は,0.48から2.7 kg/m<sup>2</sup>の範囲のプレコートろ過助剤量に対し直線的に上昇した.ケーク層の平均ろ過比抵抗は,ろ過原料中のカルス濃度に対するろ過助剤濃度の比が,60から89の間でほぼ一定の値であった.加圧型ろ過機によって得たデータより,フィルタープレスでのカルス培養液のろ液処理量は,膜面積1 m<sup>2</sup>当たり0.22 m<sup>3</sup>と計算され,デッドエンド定速ろ過において,ほぼ100%のTPS回収率を伴って,光学的透過度が95%以上の清澄なろ液が安定して得られた.
著者
峯 浩二 宇治田 吾朗 田谷 正仁
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.363-367, 2013-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
1

<i>Polianthes tuberosa</i>(チューベローズ)カルスが産生する細胞外酸性多糖(TPS)について,沈殿分離方法を検討した.無機塩存在下において,培養液と相溶する有機溶媒(エタノール,アセトン,2-プロパノール)の添加がTPSの沈殿形成に有効であった.2%NaCl存在下では,有機溶媒の種類によらず,比誘電率が50近傍でほぼ100%の沈殿生成率が得られた.一方,50 vol%エタノールを添加した溶液において,TPS分子中のグルクロン酸基に対する無機塩中のカチオン(Na<sup>+</sup>, Ca<sup>2+</sup>)のモル比率と沈殿生成率には正の相関が得られた.同様の傾向は,グルクロン酸基を含有する酸性多糖のキサンタンガムでも見られた.本研究で得られた沈殿分離条件により,TPSの構造を維持しながら,主な夾雑物の濃度を許容濃度に低減できることが示された.
著者
伊與田 浩志 小西 洋太郎 井上 保 吉田 香梨 西村 伸也
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.167-172, 2006-03-20
参考文献数
15
被引用文献数
1

アマランスの種子は栄養価が高く,また適切な条件下で加熱すると急激な水分蒸発と共に膨化(ポッピング)する性質を有しており,膨化は消化性が改善されるなど有用な加工法の一つである.本研究では,膨化に大きな影響を与える種子含水率に注目し,その調整と測定方法,ならびに機械的強度に与える影響について検討した.さらに,種子の初期含水率と気流温度が膨化による体積増加ならびに膨化後の性状に与える影響について,熱風として高温空気と過熱水蒸気を用いて流動床型の膨化装置により調べた.その結果,種子の初期含水率が約0.15,気流温度が約260°Cの高温空気中で,体積増加率は約8.7倍と最も大きくなった.また,気流温度が高いほど種子の変色が激しいことがわかった.一方,過熱水蒸気中では,体積増加率が最大となる初期含水率は,空気の場合よりもわずかに低くなる傾向がみられ,最大の体積増加率も空気中に比べてやや小さくなった.その原因は水蒸気の初期凝縮により,アマランス種皮の機械的強度が低下したためと考えられる.また,アマランス種子の水分吸着等温線より,体積増加率が最大となる含水率は,相対湿度の増加に対して,平衡含水率が急増し始める直前の含水率付近であり,それ以上の含水率では,体積増加率が減少するとともに,弾性率低下が顕著となることがわかった.また,これらの結果から最適な含水率に調整するための指針を示した.
著者
岡本 裕行 内橋 康充 ルォン ゴォク カーン 宮原 照夫 川面 克行 西山 孝 藤井 隆夫 古川 憲治
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.318-327, 2009-07-20
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

anammox処理を応用してビール工場排水の窒素量を効率良く削減することを目指し,アサヒビールの工場において実際の排水を用いて,anammox処理に適用させるための前処理実験を実施した.供試排水のTOC値の18.5%は酢酸とプロピオン酸から成り曝気処理で容易に分解した.有機物分解後にアンモニア態窒素酸化が起こる事象が確認され,前処理工程としてはアクリル繊維担体で微生物を固定化した曝気槽(有効容積360 L)で有機物の除去(活性汚泥処理)を行った後,同型の曝気槽にて部分亜硝酸化処理を行うプロセスが構築できた.<br>半年間の連続実証運転において,有機物除去能力1.5–2.4[kg-TOC/m<sup>3</sup>/d]程度,部分亜硝酸化処理能力は1.5–2.5[kg-NH<sub>4</sub>/m<sup>3</sup>/d]程度であった.供試排水への急激な高濃度排水あるいは浮遊性懸濁物質(Suspended Solid : SS)の流入や運転ミスがない限りは,有機物を80%除去した上,亜硝酸化率が50%付近で維持できる前処理が可能であることを連続1ヶ月間確認することができた.
著者
古水 雄志 朝長 由夏 田上 修 上岡 龍一
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.168-172, 2007-03-20
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

現在,日本の化粧品市場における美白のニーズは高く,女性のシミやクスミの解消に対する関心は大変高いのが現状である.一方,筆者らや他の研究者は,焼酎蒸留粕の海洋投棄が2007年に全面禁止となるため,廃棄物を有効な物質(例えば医薬品や化粧品)に転換する試みをしている.今回は,B16-F0メラノーマ細胞を用いた美白化粧品開発のための基礎研究を行った.その結果,安全な低濃度条件(10 &mu;g/mL)で,麦焼酎粕パウダーが(1)目視確認にて細胞を美白化し,(2)メラニン産生抑制効果が顕著であり,(3)チロシナーゼ活性抑制効果を大きくすることを初めて明らかにした.これらのことから,将来,麦焼酎粕パウダーの美白剤としての応用の可能性が高くなった.
著者
稲垣 照美 志賀 寛史 遠藤 広樹
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.472-479, 2009-11-20

本研究では,都市温暖化防止技術の一つとして,建築構造物表面に入射する太陽光を高反射することで内部への蓄熱を抑制できる遮熱塗料に着目した.ここでは,建築構造物の高機能化を目指すとともに,実計測により近赤外域,遠赤外域,そして太陽光における遮熱塗料の遮熱効果を検証した.<br>太陽光による実験では,日射の強い時間帯の太陽光に含まれる近赤外光に対する遮熱塗料の遮熱効果は大きく,日の出前・日没後の遮熱効果は小さいことを確認した.近赤外光による実験では,一般塗料(白)と遮熱塗料(白)を比較した場合,遮熱塗料の方が塗布物内部へ通過する熱流束が抑制でき,塗装面温度も低減した.遠赤外光による実験でも,ある程度の遮熱効果が存在した.すなわち,塗装面へ入射する熱流束が同等の場合,その効果は遠赤外光よりも近赤外光の方が大きいことが明らかとなった.なお,この傾向は,近赤外光・遠赤外光ともに,表面へ入射する熱放射の増大に伴い顕著になった.