著者
春木 和久 細木 高志 名古 洋治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.352-359, 1998-05-15
参考文献数
24
被引用文献数
6 10

ユリの種間交雑系統・品種を用いてPCR-RFLP分析を行い, 交配親推定の可能性を検討した.6種のユリ, サクユリ(L. auratum var. platyphyllum), ササユリ(L. japonicum), カノコユリ(L. speciosum), タモトユリ(L. nobilissimum), ヤマユリ(L. auratum)およびヒメサユリ(L. rubellum)を4組のプライマーと22種の制限酵素を用いて分析し, 16本のPCR-RFLPマーカーを検出した.PCR-RFLPマーカーが遺伝することを確認するために, シンテッポウユリ, カノコユリおよびその交雑個体を比較検討した.母親の葉緑体遺伝子にみられたPCR-RFLPマーカーは全ての交雑個体にみられ, 交雑個体の核のrRNA遺伝子にあるマーカーは, 母親と花粉親のバンドパターンを合わせたものになった.従って, PCR-RFLP分析は, 交雑品種の親の推定に利用できるものと考えられた.PCR-RFLP分析をオリエンタルハイブリッドと呼ばれるユリの6品種, 'スターゲザー', 'ル・レーブ', 'カサブランカ', 'サマードレス', 'ピンクパール'および'マルコポーロ'を用いて行い, その交配親を推定した.その結果, 'カサブランカ', 'サマードレス'および'ピンクパール'の細胞質はカノコユリ由来であり, 'スターゲザー', 'ル・レーブ'および'マルコポーロ'の細胞質はサクユリあるいはササユリからきているものと考えられた.一方, これらの品種の花粉親が交雑種の場合には交配時にマーカーが分離する可能性を考慮する必要があるので, 花粉親の特定は困難であった.