- 著者
-
細木 高志
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
日本のサクラ原種や品種は300以上を越え,奈良時代以後,多くの品種が生まれた。しかし,これらの相互関係は不明な点が多く,交配親が知られているのは数十にすぎない。そこで,本研究では形態および遺伝子解析を行った。原種では形態から,ヤマザクラ系とマメ・エドヒガン系に分かれ,外国種のシナミザクラ,カンヒザクラが混在し区別が難しかった。しかしRAPD分析では外国種は外群として分かれた。また日本原種の親とされるヤマザクラは他の国内産原種と共通点があり,ヤマザクラがもっとも古く,他の原種を生んだと考えられる。つぎに,ある程度両親のわかっている品種のPCR-RAPD分析を行うと,ヤマ系,オオヤマ系,チョウジ系・シナミとの雑種系,オオシマザクラ×エドヒガン系,エドヒガン系,マメ系に分かれ,両親親と雑種の関係がおおむね正しいことがわかった。また泰山府君はシナミザクラ×ヤマザクラとされているが,RAPDではヤマ群に属し,シナミザクラの特徴である気根も生えてこないことから,この品種はヤマザクラの1種と考える方が正しいと思われた。またソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの中間に位置し,ソメイヨシノがこれらの交雑で生まれたことが推測できた。これらの結果は,形態による分類とおおむね一致した。しかしシナミザクラやカンヒザクラが国内種と混合し,外国種と区別できなかったが,PCR-RAPD分析では区別が可能となったことから遺伝子分析の方が正しい結果を反映していると思われた。さらに,外群のユスラウメやウワミズザクラは大きく異なり,これらの亜節や属が,サクラ属やサクラ節と違うことがわかった。