著者
渡辺 彰 名村 正伸 金谷 法忍 大家 他喜雄 林 守源
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1409-1413, 1987

症例は26才男性で,急性左心不全で入院した.心電図は心室内伝導傷害と前側壁心筋梗塞の所見を示した. CPKは最高10470IUに上昇し, LDHは6620IUに上昇した.入院第51病日に心臓カテーテル検査を施行した.左室造影では心筋収縮能はび漫性に低下していた.選択的冠動脈造影では左冠動脈主幹部に長さ1.6cmの辺縁が平滑な50%の狭窄を認めた.また,前下行枝に長さ2.8cmにわたり冠動脈内陰影欠損を認めた.血中ウイルス学的検査でムンプスウイルス抗体価が有意に変動した.発症1年後の右室心内膜心筋生検から心筋炎と診断した.以上より,冠動脈病変を呈したムンプスウイルス心筋炎と診断し,冠動脈病変の病因として冠動脈炎が考えられた.