著者
向坂 保雄
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、超徹泣子の計測に静電分級器(DMA)と凝縮核計数器(CNC)もしくはエレクトロメータ(EM)を用いて、ナノメータサイズのエアロゾル粒子およびイオンクラスターの動力学的挙動について研究を行い、次の成果を得た。初年度では、DMAによって超微粒子を分級するときにおこる電気移動度のシフトについて理論的・実験的検討を行い、(1)異なる粒子径をもつ粒子のブラウン拡散による混合効果、および(2)帯電泣子によって発生する空間電界の存在によってシフトが生じることを明らかにした。またその結果、(1)平均粒径よりも小さい粒子は真の粒子径よりも小さく測定される、(2)平均粒径よりも大きい粒子は真の粒径より大きく測定される、(3)粒子個数濃度が高い方が電気移動度のシフトは大きくなる、(4)低い個数濃度の場合でもブラウン拡散の影響によって電気移動度のシフトはおこる、(S)電気移動度のシフトは一段目のDMAについてのみ重要で、二段目のDMAでは無視できることを指摘した。次年度では、初年度の研究成果に基づき、タンデムDMAシステムを用いてモビリティシフトを考慮した正確な粒子径を求めることにより、ナノメータサイズ粒子のワイヤスクリーンと層流円管内の透過特性について検討を行い、(1)粒子の電荷は透過特性に影響を及ぼさない、(2)Cheng-YehとGormley-Kennedyの既存の理論はStokesーEinsteinの式で粒径換算した2nmまで良く一致する、(3)金属表面での跳ね返りはなく、金属表面に衝突した粒子はすべて沈着することを明らかにした。さらに、両極拡散荷電効率について実験的検討を行い、粒径が3nm以上では、イオンの電気移動度については実測値、質量については既往の文献値を用いることによりFuchsの理論とよく一致するが、3nm以下では理論より小さい値になることを明らかにした。