著者
君波 和雄 木下 生一 今岡 照喜
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.11, pp.578-596, 2009 (Released:2010-05-29)
参考文献数
116
被引用文献数
5 6

九州東部の南部秩父帯~四万十帯北縁部および山口県東部の丹波帯(玖珂層群)の砂岩について,火山岩岩片量や全岩化学組成を検討した.Zr/Nb-Ti/Nbダイアグラムから,ジュラ紀付加体砂岩は,高Ti型と高Zr型に区分できる.高Ti型の砂岩は,SiO2に乏しく,火山岩岩片やTiO2,MgO,Na2O,Vに富み,おもに火成弧から供給されたと推定される.高Zr型の砂岩は,SiO2に富み,火山岩岩片やTiO2,MgO,Na2O,Vに乏しく,おもに花崗岩類や大陸基盤から供給されたと推定される.ジュラ紀中世のある時期に高Ti型の砂岩から高Zr型の砂岩に変化した.供給源におけるこの変化は,大きな海台の沈み込みに起因するスラブの低角化とフラット・スラブの形成によって説明される.
著者
君波 和雄 今岡 照喜
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.107-121, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

四国西部,幡多半島東岸地域の後期漸新世~前期中新世の清水層・在岬層の混在相は,火山礫岩や火山性砂岩,含火山岩礫泥岩などの火砕岩を含む.火砕岩は,中期始新世の石灰岩を伴うことがある.火砕岩の多くは,土石流や乱泥流などの堆積物重力流に由来する.火砕岩中の火山岩は,アルカリ岩系の火山岩であり,アルカリ玄武岩,粗面安山岩,粗面岩およびコメンダイトからなる.アルカリ玄武岩や粗面安山岩には緑泥石や方解石で充填された発泡痕を有する.アルカリ玄武岩にはカンラン石仮像が含まれる.火山岩類はかなりの程度の変質作用を被っており,ほとんどの苦鉄質鉱物は,緑泥石などの粘土鉱物やFe-Ti酸化鉱物で置換されている.変質過程での移動が少ないと考えられる元素を使ったいくつかの判別図から,火山岩は海洋島起源のプレート内アルカリ岩と推定される.後期漸新世~前期中新世のある時期に四国西部の収束域で海山の衝突があったと考えられる.