著者
今岡 照喜 永嶌 真理子
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.235-256, 2022-04-25 (Released:2022-05-13)
参考文献数
98
被引用文献数
3

The mineralogical characteristics of metasomatic Li-minerals in Iwagi Islet, sugilite, katayamalite, murakamiite, Li-rich pectolite, zektzerite, sogdianite and taeniolite are summarized. These Li-minerals occur in metasomatic albitite, which contains 500 ppm Li. Such a high-Li albitite content is unusual amongst metasomatic rocks in Setouchi Province of SW Japan. Albitite forms small bodies that are several tens of centimeters to tens of meters in size, and are disseminated in a host granite of Late Cretaceous age. It shows conspicuous strain-induced textures. Murakamiite and Li-rich pectolite form a solid solution with Li × 100/(Li + Na) atomic ratios ranging from 44.2 to 60.1, and Na line profiles show a zoning structure in which Na decreases from core to rim. Albitite-normalized element concentrations vary systematically with the ionic radius of the element; normalized concentrations of cations with the same valence roughly form a simple convex parabolic curve when plotted against the ionic radius. This indicates that the element partitioning of murakamiite and pectolite during metasomatism to form albitite took place under the strong control of a crystal structure, quasi-equilibrated with metasomatic fluids and coexisting minerals. The δ7Li values of murakamiite and Li-rich pectolite show a wide range from −9.1 to +0.4‰ (average −2.9‰), and no obvious correlation with Li content is observed. These δ7Li values should have resulted from hydrothermal fluid–rock interactions at temperatures of 300-600°C (hydrothermal stages). The very low δ7Li values down to −9.1‰ may have originated from intra-crystalline Li isotope diffusion, or involvement of deep-seated, Li–Na-enriched subduction-zone fluids with low δ7Li values. The occurrence of porous zircon, dalyite, and mantles of zektzerite and/or sogdianite on resorbed zircon in albitite suggests that those zirconium silicate minerals are the products of metasomatic mineral replacement reactions by dissolution–reprecipitation processes associated with Na-, K-, and Li-rich hydrothermal fluids.
著者
今岡 照喜 秋田 幸穂 永嶌 真理子
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.3, pp.369-378, 2021-06-25 (Released:2021-07-20)
参考文献数
34
被引用文献数
3

愛媛県岩城島の白亜紀エジリンアルビタイトより稀なK–Zr珪酸塩鉱物であるデーリー石とLi–Na–Zr珪酸塩鉱物であるゼッツェル石が見いだされた。デーリー石とゼッツェル石のEPMA分析結果からそれぞれ(K1.93Ba0.01)Σ1.94(Zr0.99Hf0.02)Σ1.01Si5.98O15およびNa1.03(Zr0.96Hf0.02Y0.01Sc0.01)Σ1.00Li1.02(Si5.95Al0.04)Σ5.99O15の実験式が得られる。多孔質ジルコン,デーリー石,および不安定なジルコンを被覆するゼッツェル石の産状から,このアルビタイトは熱水活動時期におけるNa,K,Liに富んだ流体によるジルコニウム鉱物の分解と沈殿による交代反応の記録をよく保存している。これは日本列島におけるデーリー石とゼッツェル石産出の最初の報告である。
著者
西田 和浩 山本 慎一 今岡 照喜 加納 隆 大和田 正明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-34, 2002-01-25

オリオン290A型デジタルイオンメータを用いた珪酸塩岩石のフッ素定量を,蒸留操作なしに行った.岩石試料の溶融は,試料と酸化亜鉛および炭酸ナトリウムを混合して,電気炉を900℃の一定温度に保ち,30分間試料の溶融を行った.白金るつぼに直接蒸留水を加えてホットプレート上で2時間加熱することによって,内容物は,白金るつぼから容易に剥離でき,岩石試料中のフッ素を完全に回収することができた.イオン強度調整剤として,0.2Mクエン酸ナトリウムー0.2M硝酸カリウム溶液を使用した.この方法を用いて,いくつかの岩石標準試料のフッ素定量を試みた.それらの分析値は,推奨値および既報値と良い一致を示し,好結果を得た.また,インドのアラバリベルト,イースタンガーツベルト,ケララコンダライトベルトおよび東南極のセルロンダーネ山地メフェール花崗岩コンプレックスのフッ素定量を行った.ケララコンダライトベルト中のインシピエントチャーノッカイトのF含有量およびGa/A1比は,同一露頭中の片麻岩の値よりも高い.
著者
君波 和雄 木下 生一 今岡 照喜
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.11, pp.578-596, 2009 (Released:2010-05-29)
参考文献数
116
被引用文献数
5 6

九州東部の南部秩父帯~四万十帯北縁部および山口県東部の丹波帯(玖珂層群)の砂岩について,火山岩岩片量や全岩化学組成を検討した.Zr/Nb-Ti/Nbダイアグラムから,ジュラ紀付加体砂岩は,高Ti型と高Zr型に区分できる.高Ti型の砂岩は,SiO2に乏しく,火山岩岩片やTiO2,MgO,Na2O,Vに富み,おもに火成弧から供給されたと推定される.高Zr型の砂岩は,SiO2に富み,火山岩岩片やTiO2,MgO,Na2O,Vに乏しく,おもに花崗岩類や大陸基盤から供給されたと推定される.ジュラ紀中世のある時期に高Ti型の砂岩から高Zr型の砂岩に変化した.供給源におけるこの変化は,大きな海台の沈み込みに起因するスラブの低角化とフラット・スラブの形成によって説明される.
著者
君波 和雄 今岡 照喜
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.107-121, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

四国西部,幡多半島東岸地域の後期漸新世~前期中新世の清水層・在岬層の混在相は,火山礫岩や火山性砂岩,含火山岩礫泥岩などの火砕岩を含む.火砕岩は,中期始新世の石灰岩を伴うことがある.火砕岩の多くは,土石流や乱泥流などの堆積物重力流に由来する.火砕岩中の火山岩は,アルカリ岩系の火山岩であり,アルカリ玄武岩,粗面安山岩,粗面岩およびコメンダイトからなる.アルカリ玄武岩や粗面安山岩には緑泥石や方解石で充填された発泡痕を有する.アルカリ玄武岩にはカンラン石仮像が含まれる.火山岩類はかなりの程度の変質作用を被っており,ほとんどの苦鉄質鉱物は,緑泥石などの粘土鉱物やFe-Ti酸化鉱物で置換されている.変質過程での移動が少ないと考えられる元素を使ったいくつかの判別図から,火山岩は海洋島起源のプレート内アルカリ岩と推定される.後期漸新世~前期中新世のある時期に四国西部の収束域で海山の衝突があったと考えられる.
著者
加納 隆 今岡 照喜 大和田 正明 大和田 正明 JAYANANDA M.
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

隠岐島後の基盤岩中に, 新たに典型的なS-type花崗岩を見出し, その産状と岩石学的性質を明らかにした. また飛騨片麻岩に伴うミグマタイト質花崗岩との性質を比較し, 産状は同じでも, 母岩の片麻岩の岩相構成と対応して両者に違いがあることを見出した. これにより, 従来飛騨-隠岐帯として一括されてきたが, 両者は異なる地質体に帰属する可能性が大きいことを示した. また併せて飛騨帯とダルワールクラトンの花崗岩類の温度構造や熱史について比較・検討した.