著者
伊藤 徹 青山 太郎 平芳 幸浩 呂 佳蓉 藤田 尚志 廖 勇超 若林 雅哉 張 文薫

テクノロジーの高度な発展は、その母体となった近代の枠組みを掘り崩し、従来の文化や社会のカテゴリーを無効にしつつある。膨大な情報をしかも瞬時に複製する情報技術が、近代文化の属性である「オリジナリティー」や「個性」を揺るがせていることは、その一例だ。近代化とアジアをテーマに持続的に研究会をもってきた日本と台湾の学際的研究グループによる本シンポジウムは、ACG(アニメ・漫画・ゲーム)、あるいは映画などを手がかりに、「発信地としての日本」という「神話」を始め、創作の原点としての「主体性」や「土着性」、作品の「真正性」について考え直すことに目的を置き、以下の報告を行ない、参加者による総合討論をもった。1.青山太郎(名古屋文理大学)「ドキュメンタリー映画における主体性の成立について:小森はるか+瀬尾夏美作品からの考察」 2.平芳幸浩(京都工芸繊維大学)「東山彰良における台湾と日本―文化の内在化と異化」 3.呂佳蓉(台湾大学)「ACG文化の力:若者言葉とその意味変化」 4. 藤田尚志(九州産業大学)「家族の時間―是枝裕和の最近作における分人主義的モチーフ」 5.廖勇超(台湾大学)「日本SFアニメ・漫画のなかの怪物性と暴力」6.若林雅哉「《自主規制》という商業戦略―アニメーションにおける《黒い》血液」 7.張文薫(台湾大学)「日本大衆文化における漢字の記号性」。国際シンポジウム「ネット文化のなかの台湾と日本――オリジナリティー再考」、会場:京都工芸繊維大学60周年記念会館、開催日:2017年7月23日