著者
鶴見 介登 平松 保造 林 元英 山口 東 呉 晃一郎 藤村 一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.261-283, 1974
被引用文献数
1

新規化合物K-308およびその側鎖の酢酸をプロピオン酸に代えたK-309について,抗炎症作用ならびに鎮痛作用をibufenac(IF),ibuprofen(IP)等と比較検討した.1)血管透過性充進ならびに浮腫などの急性炎症反応に対して,K-308はK-309と同等の抑制作用を示し,IFおよびIPと同程度の効力が認められた.2)紫外線紅斑に対してK-308はIFと同程度の抑制作用を示し,K-309はそれらよりわずかに弱かった.3)持続性浮腫および肉芽増殖などの亜急性炎症反応に対して,K-308は明らかな抑制作用を示しIFとほぼ同等の効力が認められた.K-309はそれらよりやや強い効力を示した.4)Adjuvant炎症における予防的ならびに治療的投与法において,K-308はいずれに対しても有意な抑制作用を示したが,K-309の方がやや強力であった.K-309はIPと同等の効力を示したが,Phenylbutazoneよりわずかに弱かった.5)胃粘膜障害作用はK-308とK-309は同等でIFやIPより弱く,胃腸障害は比較的弱いものと考えられた.6)鎮痛作用はK-308がAminopyrineよりわずかに弱い効力を示し,K-309はK-308より弱くIPと同程度であった.特に炎症性落痛Yom..対して有効のようであった.7)PSP排泄に対してK-308とK-309は同程度の抑制作用を示し,軽度な尿酸排泄促進作用が推測された.以上の成績からK-308およびK-309は,急性慢性の炎症性疾患に対してIFおよびIPと同等の効果が期待され,しかもそれらより胃腸障害は少なく,鎮痛抗炎症薬として臨床上価値のあるものと思われる.